瀬戸美月(24)がんばる!! ~日本ワインに酔いしれて スピンオフ
三枝 優
第1話 瀬戸美月 料理教室に通う①
「ごめんなさい、うちではあなたのことはもう面倒見切れないわ」
瀬戸さくらは、自分の長女に告げる。
「見捨てないで、お母さん・・」
娘の瀬戸美月は涙を流しながら、母親に言う。
「もう、無理よ・・あなたが・・あなたが、こんな娘だったなんて・・」
母親は突き放すように言う。
「お母さん・・助けて・・」
ボロボロと涙を流す娘。
「美月、あなた・・・もう、あきらめて・・・」
「初心者向けの、料理教室を探して通いなさい」
キッチンのまな板の上には、みじん切りにしようとして失敗した玉ねぎ。
みじん切り? にしては1センチ角くらいでバラバラの大きさ。
まな板からこぼれ落ちて、床にまで玉ねぎが散乱している。
そもそも、包丁を持つ手も危なっかしい。
というか、いつケガしてもおかしくない。
玉ねぎが目に染みて涙を流す娘に、母親は冷たく言った。
「美月、あなた学校で家庭科の授業何してたの?」
「家庭科の授業? あはは・・」
美月にとって、思い出したくない黒歴史である。
中学生の時、美月はボッチだったのでみんなが作るのを眺めているだけだった。
高校の時は、親友のミキがなんでもやってくれた。
瀬戸さくらはため息をついた。
「完全に、子育てを失敗したわね」
「そ・・そんなこと言わないでよ・・」
「料理は、初心者向けの料理教室に通って教えてもらいなさい。
家では、掃除・洗濯とかをやってもらうから。」
「はい・・・」
「ところで、美月。洗濯ってできるの?」
「いやだなぁ、お母さん。全自動洗濯機だよ。できないはずないじゃない」
嘘である。
美月が以前洗濯したのは小学生の時。その時は洗剤を入れすぎて大変なことになった。
「ならいいけど・・・明日、洗濯やってもっらうからね。」
「・・・」
「返事は?」
「・・・はあい」
「今日は、まず料理教室を探しましょう。」
「・・・」
「返事は?」
「お・・・怒られたりしない?」
はぁ・・・
瀬戸さくらは、盛大な・・今日すでに何十回目かのため息をついた。
うちの長女は、24歳にもなってようやく彼氏ができたとのこと。
だが、うちの長女はポンコツ娘。このチャンスを逃すと二度と結婚できないのではないだろうか。
瀬戸さくらは、心から思った。
”彼氏、早いところこの娘もらってくれないかしら”
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