VOL.6

 俺達四人は車を駐車場に入れ、参道を歩いてゆく。

”臨済宗・華蔵寺”山門のすぐ脇に、大きな石柱が立ってあり、そこに太い文字で寺の名が記してあった。


『如何ですか?ここが華蔵寺です』

 俺は車から降りた左近氏・・・・いや、吉良義央公に声を掛けたが、彼はしばらく黙ってその場に立ち尽くしていた。

『拙者が最後にここにやってきたのは、すぐる元禄十三年のことであったが・・・・随分変わったものだな』

 やっとそれだけ漏らすと、

『いや、それはどうでもよい。早く寺に入らねば』


 その時である。背後で人の気配がした。

 振り返るとそこには三人の黒づくめの男達がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


 全員、手に何やら妙な武器を持っている。

 拳銃ではない。そういう形をしてはいるが、黒光りする流線型をしていた。

『お待ちしていました。吉良上野介義央公』

 一人が帽子を脱ぎ、低い、無機質な声でそう言った。

『しまった。先回りされたてたか・・・・まずったな』ジョージが小声でいうと、

別の一人が、同じような無機質な声で告げた。

『先回りしていた訳ではない。あれを見たまえ』

 彼らの後ろには、あの黒塗りのセダンが停まっているのが見えた。

『貴様ら、一体何者だ?』

 俺の言葉に、彼らはまったくの無反応だった。

『我々は君らの及ばない力を持っているのだよ』


 先頭の一人が銃のようなものを構えたまま、また声を立て、何かを取り出してこちらに向かって突き出した。

『T・P-時空警察・・・・またの名を時空調整官ともいいます。吉良殿、悪いことは申しません。懐にある書状を黙ってこちらにお渡しください。』

『断る、といったら?』俺達三人は左近氏を庇い、前に立ちふさがる。当然俺はM1917を引き抜き、銃口を向けた。

『残念ながら、君らにも消えてもらうことになる』

『上等だ。だがここは由緒ある寺の門前だぜ。撃ちあいなんぞをして血で汚すようなことをしたら、幾ら無神論者の俺だって寝覚めが悪い。君らだって同じだろう?』

 だが、彼らは一向に表情を変えない。

『寝覚めが悪い?そう言った感情は我々にはない。渡すか渡さないか、どっちだね』

『同じことを何度も言わせるな。断る』

 先頭の一人が俺に狙いを定め、引き金を絞った。

 青白い光線のようなものが光る。

 だが、それより俺の銃の方が早かった。

 俺の弾丸は確実に奴の眉間を貫く。

手ごたえがあった。

 膝をつき、まるでマリオネットが倒れるように、ゆっくりと石畳の上に倒れ、そしてそいつは緑色の光と共に消えてしまった。

 後の二人が同じように銃のようなものを構え、こちらに向け、光を放つ。

『野郎!』ジョージがいつものスリングを出して、一人の眉間を狙ってパチンコ玉を叩き込むが、少しそれ、銃を持っていた側の肩の付け根に当たった。

 俺は別の一人の、やはり肩を撃つ。 


 すると、二人の腕が見事にもげ、石畳に落ちると、青白い光とともに消えてしまった。

 俺は拳銃を、ジョージはスリングを構えたまま、二人に近づいた。

『お前たち、人間じゃないな?』

『私たちはアンドロイド・・・・26世紀からやってきた・・・・』

 俺が撃った方が、雑音の入った声で答える。

『答えろ。何が目的だ?』

 



 

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