珈琲としろっぷ。
Ai_ne
1杯目 モカハラーとしろっぷ。
私は伊豆木凛。喫茶店を経営している。
「今日はどんな珈琲を淹れてくれるのかな?」
そう言って笑顔で聞いてきてくれる人は私の彼氏のはやとくん。彼は私と出会ってからお酒をやめて珈琲を飲むほどハマってくれている。
「今日はモカですっ」
「モカって言うとカフェモカとかが有名な……」
「違います!! 私と付き合ってる上でその間違いだけはぜっったいに許しません!」
「あはは、僕が無知だったよ。じゃあまずそこの違いから教えてもらおうかな」
彼は笑ってそう答える。
「モカとカフェモカは別物どころか全て違います。まずモカはイエメン若しくはエチオピア産の珈琲豆でよく使われる名称の事で、カフェモカはエスプレッソ、チョコ、ミルクの3つを合わせたコーヒー飲料の名称です」
「ふむふむ……つまり、『モカ』は珈琲豆で『カフェモカ』は完成された1つの飲料って事だね」
「そうです!カフェモカはモカを使ってなくてもカフェモカなのです」
「ふむふむ。勉強になるなぁ……じゃあ今回はモカなんだね」
「そういうこと! ちなみにモカにも種類がいっぱいあってね、今回使うのはエチオピア産の珈琲豆でも最高級品と言われるロングベリーの『モカハラー』です」
「もしかしてハラールジュゴルの?」
「はらーる、じゅごる?」
「ハラールにある世界遺産の事なんだけど」
「まずい、私の方が無知だったかもしれない……でも確かにハラールで採れる豆だよ!」
「なるほどね、ちなみにどんな感じなんだい?」
「独特な香りと芳醇な苦味が特徴なの! ちょっとまっててね」
私はキャニスターから中煎りのモカハラーを10g取り出して、豆を粉に変えるコーヒーミルという道具に入れる。ちなみにオススメは8〜12g。
豆の量が多ければ濃くなるし少なくなれば薄くなる。
珈琲ミルで豆を挽き終える時、そのコーヒーの個性とも言える香りが部屋を包む。
「おぉ、すごい芳醇な香りだね」
「でしょ!」
私は手際よくコーヒーフィルターをセットしてその中に粉を入れる。そこにお湯を3回に分けて注ぐ。
時間は3〜4分。これ以上の時間は取らない。
ちなみにハンドドリップは同じ豆でも淹れる人間によって味が変わる。簡単故に奥深い淹れ方だ。
カップにそれを注いでシロップとミルクを添えて彼の前に出す。
「どうぞ。モカハラーです」
「ありがとう。いただきます」
彼はそう言って珈琲を口に運ぶ。
珈琲を飲む時にカップに触れる彼の唇と閉じた瞼がとても綺麗で魅入ってしまう。
彼は目を開いて笑顔でこっちを見る。
「うん、おいしい! 太陽を感じさせる爽やかな香りと花の蜜のような甘み、そして最後にくるスッと口に入る酸味が素晴らしいね 」
毎回彼の口からは綺麗な感想が出てくるので作っている私も嬉しくなる。
「でしょ! ロングベリーのモカハラーはその蜜のような甘さと酸味から『珈琲の貴婦人』って呼ばれたりするの!」
「いつも美味しい珈琲をありがとう。凛ちゃん」
「急にどしたの? 改まって」
「感謝は何時伝えてもいいでしょ? 」
私は彼のそういう所が大好きだ。
「ねーね。はやとくん」
「うん?」
大好き。なんて恥ずかしくて言えなかった。
「また明日も美味しいの淹れてあげるね! 」
私は笑顔でそう言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜今日の珈琲〜
・モカハラーロングベリー(中煎り)
苦味 ☆
酸味 ☆☆☆
甘味 ☆☆☆
コク ☆☆
香り ✩✩✩✩
・有名な『モカ』の一種類で高級品。
・インスタントコーヒーから王宮貴族の1杯…と 値段はピンキリ。
・花々の蜜のような味を感じさせると言われている。 (でも表現なだけでちゃんと珈琲なので注意)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます