第89話 大幹部イルミナの力

 大幹部イルミナは魔神人の女性だ。狐のような耳が生えており、尻尾も狐のようだ。モフモフしたいような見た目をしている。惜しい、敵じゃなかったら従魔にしたいな。いや一応モンスターじゃないんだよな。そんな邪推なことを考えるなよ。そんな魔神人のイルミナさんが高笑いを出している。


「お前らみたいな雑種に我らのような崇高なお方のために任務を遂行しないといけないのじゃ! だからね、あんたたちなんか童が一人いればよわよわなんじゃ!」


 そこにはイルミナを相手していたのは戦士のような男と魔導士の男性、回復術士の女性に格闘家の女性の四人パーティに刀剣使いの女性に大盾使いの男性に治癒士の女性の三人パーティーにソロの剣士に魔法使いのソロに大剣士のおっさんが一人いた。


 渋谷スクランブル交差点前は大勢の人だかりができていた。


 魔神人の敵はイルミナを含めて7人いた。


 対するこちらは10人の探索者。周りには人だかりができており合計で100人はいた。


 だがみんな距離を取り、前に出ようとしない。


 イルミナも一般人の野次馬には攻撃を仕掛けておらず、前に出るもの挑戦するものにだけ魔術を行使している。


 不思議なことに殺傷能力のある武器で魔神人たちは攻撃しておらず、すべて魔術による攻撃だった。いや魔術でダメージを与えているが殺すまでしていないと見て取れた。


 魔術の術式を解析した結果、物理的損害もとい物理的攻撃ダメージを精神的攻撃ダメージに変換する術式が組み込まれていた。


 あまりにも完璧な術式だった。俺じゃなきゃ見逃してしまうだろう。


 そういうことか魔神人たちも意外にも破壊による支配は望みではないのか家畜は生かして支配する。そんな頭のいい人類である時点でそうなのだと感じた。


 実際今魔術の攻撃を受けた大盾使いの男性が風の魔術を喰らい吹っ飛んだが、擦り傷だけで気絶した。


 動かない大盾使いの男性にパーティの治癒士の女性が何度も回復をかけるが目を覚まさない。


「なんで目が覚めないの!? 目覚めの魔法をかけているのに……」


「どうしたもう終わりか前に出て我らたちを止めようとする強き者は現れるのか!!」


 大幹部らしきモフモフなイルミナが威張るように高く言い放つ。


 笑い顔が可愛いやつだなこいつ……ますます仲間に欲しいぞ。


 よし、いっちょそろそろ出るか。


 拓郎が稲荷仮面の姿でそこに最初からいたはずだがまるでいなかったのように突如気配が漏れ出たように稲荷の仮面をつけたヒーローがいた。


「貴様!? いつからそこにいた!!」


「最初から? だと思うわ……」


 なに簡単なことだ。気配を極限まで殺して隠蔽のスキルを限界まで引き上げておいただけで姿があるのにそこには何もいないかのように錯覚するんだそれだけだ。


 普通じゃないことをやってのけた稲荷仮面が最初に発言したことは意外な言葉だった。


「俺と勝負しろ。俺が負けたらこの国をお前ら魔神人に差し出そう」


 どよめきが起こる雑踏から度々に。たまたま来ていたテレビ局のカメラマンがカメラを向けていたことからそれを見ていた全国のお茶の間でもそれを聞いた市民から何を言っているんだこの男はと……いう疑問も出た。


 稲荷仮面の存在はもちろん知る人の知るではなく超有名なヒーローだったのでこの人物は本物なのかという疑念が出た。


 一瞬の静寂から渋谷スクランブル交差点の野次馬から何言ってんだ稲荷仮面ーーー!! とか本物なのかという声も出た。


 稲荷仮面は一言発言する。


「本物だよ」


 そして一呼吸おいてもう一言言う。


「ただしお前たちが負けたら…………イルミナをこちらに渡してもとい俺の仲間になってもらいこの世界から撤退してもらう」


 この発言をした後ネットの実況チャンネルで祭りは加速した。


『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』


『稲荷仮面モフモフ狐娘のイルミナちゃんをお持ちかえりもとい下僕宣言!?』


『稲荷仮面変態かwww』


『稲荷仮面に賛同する』


『イルミナちゃんマジ悪魔的天使』


『イルミナちゃん実は優しいからな魔術で人を殺してないぞよく見たら』


『イルミナ様に踏まれたい』


 とまあそんな感じで祭りは加速していた。


 これをかき消したのはイルミナの驚愕の声だった。


「なんじゃとーーーーーー!? わらわが欲しいだと……!? そんなこの国をくれるのはいいのだが、わらわが負けたらわらわはお前の物になるのか…………それは困る!」


「なんだ俺が負けたらお前たちの国になるんだぞこの国が?」


 雑踏からお前が勝手に決めるなという声がするが稲荷仮面が無視する。


 稲荷仮面の問いにイルミナが答える。


「よし、いいのじゃたぶんわらわが負けることはないからながっはははついにこの国がてにはいるのか。やっとミルム様の悲願が達成されるぞ……」


 ミルム?……魔神人の親玉的な奴なのか…………


 稲荷仮面は小さな情報すら聞き逃さない。


 親玉の名前を得たのは大きい。


 稲荷仮面は動き出す。


 雑魚を速攻で左手だけで気絶させて、イルミナの前に出る。この間3秒弱。


「さて終わったら飯でも食べて、どうしようかなこの国の美味いものでも食べさせてもらおうかな…………………………はれっ?? 皆の者が寝ておるぞ……どうなっておるのじゃあーーーーー!??」


 この瞬間のあとに高速でキーボートを叩いた実況民の声がこちら。


『見えたかお前ら?』


『見えなかった』


『俺は昔卓球してたから若干見えた』


『見えないお』


『何が起きたんだ!?』


『稲荷仮面やっぱり化け物だわ』


『これが最高位ランカーの実力なのか』


『稲荷仮面って何者なんだよ本当に』


 とまあそんな声があった。


 

 ●●●




 超小型蚊型カメラによる視点にて観測者がいた。


「流石たく兄……私の高速カメラでも追いきれないほどの速さ……本当にすごいよ」


 部屋は驚くほどきれいにされているが、PCモニタの数が異常だ。15台はある。


 それらからかなり鮮明に映し出される稲荷仮面とイルミナ。


「これなら私の操作も必要ないか……魔刀さんには悪いことしたかな。今誤報であるというネットニュースを流したからたぶん大丈夫だと思うけど」



「本当にただの悪戯だったのに……たく兄にはバレてるんだろうなぁ……」


 今回のある意味黒幕の小さな黒髪の少女が一つの楽園にいた。


 でもつまんなそう。少女は私も出るかとついに楽園から出る決意をする。

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