第14話 女子と一緒にダンジョン攻略するとかなんか照れるな

「危ないところだったな御嬢さん、俺が来たからには無事にここを脱出させてやるからな」


 決まった~~~!! う~ん一度言ってみたかったセリフだよな~。

 遡ること2時間ほどのこと、俺はこのダンジョンに突入していた。

 そして適当にモンスターを倒しつつ、生存者を探していた。

 1階層で5分ほどの時間で駆け抜けていった。

 そう言えば俺は既に時速70キロほどのスピードで走っておけば長距離走並の感じと言える。

 全力だと150キロくらいだせるけどスタミナが余り続かない。

 まあそれでもたぶん1時間ほどはそのスピードで走れると思うが、まだ試してないが。

 そんな出鱈目な人間とは思えない速さで俺はダンジョンを駆け抜けていたのだ。

 アグニスを腰のベルトに挟んでおきながらな。

 

 人の気配を感じたのは24階層のぐらいだった。

 俺の気配察知Lv.5がビンビンに感知していた。

 遠くの領域で人の呼吸音が聞こえる。

 聴覚も既に異常なまでに発達していた俺は、歩を急いだ。

 そして27階層の袋小路で追いかけているブラックトロールを見つけたのだ。

 すぐ後ろには人の気配がしていた。

 

 俺は迷わずに元凶であるモンスターを斬り伏せた。

 そして今、かっこつけて女子の前で立ち伏せていた。


 相手の女子が放心しているように地べたに座っている。

 何も反応はない。

 俺はどうしたのかと思い、少し近づく。

 すると気付いたのか、相手の女の子は立ち上がった。

 そして俺に近づいて抱き着いてきた。


「こわかった……こわかったよ~、ありがとうお兄さん」


 その女子は涙目で俺にすりすりと胸にヘッドショットを決めてくる。


「いいんだよ。それより君は何でこんなところに……」


「蒼威……俺の名前。ここには腕試しで入った」


「蒼威ちゃんは腕試しで入ったのか……ダメだぞそんな危ない真似は」


「誰だって自分のうっぷんとか吐き出したいものはあると思うんですよ……えっと……」


「拓朗、増宮拓朗(ましみやたくろう)って言うんだ」


「拓朗さん……俺はもっと自分を高めたい強くなりたいからこのダンジョンに挑戦したんだ? わかってくれるよね?」


「それはおおいにわかるけどまあそんな装備でだといつか死ぬよ? 本当にね、だからせめてこのくらいのものはつけておかないと、おっとその前に」


 俺は蒼威ちゃんが怪我していることに気付いて、回復魔法を施す。


「ヒーリング」


 淡い光が蒼威ちゃんを包み込む。

 これで蒼威ちゃんの怪我は治るだろう。


 蒼威ちゃんは驚いた顔をするが、直ぐに冷静になる。

 そして笑顔で俺にお礼を言う。


「ありがとう拓朗さん」


「どういたしまして、それより装備を整えたほうが良いよ」


 俺は魔甲羅の鎧に魔銀の兜、ワイルドスネークソードを出す。

 魔甲羅の鎧は魔蟹の甲羅を使った鎧だ、軽いうえに丈夫な鎧でそこそこの防御力だ。

 魔銀の兜は頭を守れるという装備、俺は視界を確保したいからつけてないけどな。

 ワイルドスネークソードは曲刀の片手剣だ。

 これは俺が光爆剣のほうが強いと思い使ってなかった。

 

 俺はアグニスに人化するように言う。

 アグニスが人化する。

 蒼威ちゃんはまたしても驚いた。

 そりゃ確かに驚くよね、剣が女性になったらね。

 でも俺がこの魔剣の能力だよと説明したら、納得してくれた。


 そして俺は装備を着ていく蒼威ちゃんに問う。


「本当にこのダンジョンを攻略するのかい?」


「拓朗さんがいるなら、大丈夫だと思う」


「そうかもしれないね……じゃあ行くか」


「はい!」


 そうして一人の小さい同行者を連れて俺達はダンジョンを攻略するのであった。


 ●●●●●●●


「たあっ!! てやぁ!! はぁーーー!!!」


「そうそう結構筋がいいと思うよ蒼威ちゃん」


 現在36階層で俺達は骸骨剣士に向かって剣劇を繰り広げていた。

 蒼威ちゃんの指導をしながら俺達は戦う。

 アグニスにも直ぐに手を出せるようにして貰っているが、杞憂だと思う。

 蒼威ちゃんはなかなか筋が良かった。

 俺も別に剣術の達人とかそう言うのじゃないが、でも自分なりに上手いと思っている。

 アグニスにも褒められた。

 拓朗は素人とは思えないと言っていた。

 まあ昔剣道してたからっていうのもあるが。

 といっても剣道は中学の部活の時で3年しかやってないが。

 その時の癖が残っているのかもしれない。


 それより蒼威ちゃんが骸骨剣士に剣で一方的とは言えないがそこそこの技量で圧倒している。

 気迫が違う。

 なんというか熱気が違うのだ、蒼威ちゃんの眼が笑っている。

 喜んでいるように見える。

 そう言えばこっそり鑑定してみたら狂戦士とかの職業持っているようだし。

 なんか物騒なスキルばかり覚えているし、なんだろうボーイッシュで俺っ娘なのに、いや俺っ娘だからか、俺的には俺っ娘はポイント高いな凄く。


 と一人心で思っていた時決着がついた。

 骸骨剣士は崩れ落ちた。

 そのまま灰になる。

 アンデット系のモンスターは倒した場合原型を保てない場合が多い。

 

 蒼威ちゃんがやりきった顔をしている。


「お疲れ。リバイバルスタミナ」


 俺はスタミナ回復の魔法を唱える。

 蒼威ちゃんは一瞬で気力が戻る。


「なんでもできるんだな拓朗さんは」


「なんたって俺は賢者だからな」


「それは凄そうですね」


「だろ?」


「はい」


 そうして俺達は先を目指す。


 


 43階層まで来た。


 40階層のボスは殺人ピエロだった。

 ピエロと言っても体長4メートルはあろう巨人だったが。

 蒼威と一緒に連携攻撃で倒した。

 詳しく言うと俺が炎魔法を使用している隙に蒼威が後方からソードスキルのソニックカッターを使用してダメージを与えた。

 そして止めは俺の雷魔法でと。

 正直俺が一人でやってもよかったのだが、蒼威を成長させるためだからな。


 43階層はハウンドドックの群れが出てきた。

 全部で7体もいる。


 蒼威はソニックカッターを使用する。

 ハウンドドックが真っ二つになる。

 俺も風魔法を使用する。


「ウィンドカッター」


 もちろん真っ二つ。

 そして苦も無く突破した。


【レベルが上がりました】


 おっレベル上がったのか。

 蒼威もレベルが上がったと報告してきた。

 

「よかったな蒼威ちゃん」


「はい拓朗さんのお蔭で大分感が掴めるようになりました」


「もっと強くなってもらいたいな俺からすると」


「はい頑張ります!」


 そして先を目指す俺達。



 そしてついに50階層までやって来た。


 ここまでなのか……まだ続くのか。

 俺の家の蔵のダンジョンみたいに終わりが見えないのかな……それだと大変だな。

 途中で引き返そうとしたほうがいいのか。

 一応10階層ごとに転移の祭壇はあるし。

 なんとかなるかな。


 そしてボス部屋に入る。

 出てきたモンスターは獰猛な太い丸太のような腕に、張りのある筋肉質の足、体長4メートルはあろうである大きさ、牛の顔を持つ異形の怪物。


 ミノタウロスであった。

 鑑定によるとBランクのモンスターらしい。

 俺の鑑定Lv.5によるとモンスターにはランクがあるようだ。


 上からSS、S、A、B、C、D、E、F、Gまである。

 俺は今までAランクまでしか見たことが無い。

 そのAランクは100階層のベヒモスだ。

 だがBランクとしてもかなりの強敵だ。

 もし俺がいなかったら蒼威ちゃんこいつにまず間違いなくやられているだろう。


 俺達は連携を取ることを忘れない。

 蒼威ちゃんは後ろから水魔法を使用する。

 どうやら水魔法を覚えているようだ。

 だがMPがそこをついたからあの時ブラックトロールに追い詰められていたようだ。


「アクアボール!!」


 水の弾が発射される。

 そのままミノタウロスに当たる。

 だが、あまり効いていない。

 ミノタウロスはふんっと鼻で笑った。


 ならこれはどうだ?


「アクアボム!!」


 ミノタウロスに多少のダメージが入る。

 これは俺が教えた水の爆弾だ。

 かなりの威力強化が行えると言うことで教えた。

 物の数分でマスターした。

 やはり蒼威ちゃんは筋がいい。


 そしてミノタウロスが蒼威ちゃん目掛けて突撃してきた。

 おっとやらせるかよ。


「大雷(ギガサンダー)!」


 ミノタウロスはそのまま崩れ落ちた。

 そして光の粒子となって消滅した。

 ドロップ品は角に皮に肉だった。

 そして宝箱も。

 さらに世界の声が木霊する。


【ダンジョン攻略特典を取得できます。次の内どれか習得できます。どれにしますか?】


 なんと特典を習得できるようだスキルかな?

 こんなことなかったぞ。

 そして選べるようで目の前にウィンドウが現れた。


 1.MP自動回復量UP

 2.収納空間収納量UP

 3.スキル『瞬間移動』習得

 4.スキル『隠蔽』習得


 これは……なおお互い同じ項目が出た。

 これはどれにするか迷うな~この中で一番便利そうなのは瞬間移動だが、どうなんだろう? 俺の場合時空魔法を使えば同じことが出来そうだし取らないほうが良いかも。

 なら俺の場合は隠蔽だな。

 俺の場合強くなりすぎたから鑑定持ちに見られたらヤバいからな。

 政府の奴らに鑑定持ちがいたらばれるのも時間の問題だ。

 なら隠蔽しかないな。


 蒼威ちゃんは俺に聞いてくる。


「これは拓朗さんは隠蔽を取って、俺の場合は瞬間移動を取ったほうがいいですよね?」


「まあそうなるな」


「じゃあそうします」


 そうして、俺は隠蔽を蒼威ちゃんは瞬間移動のスキルを取った。


【選択完了を確認。ダンジョン攻略特典を付与。これにより初級(・・)ダンジョンの攻略が終了しました。おめでとうございます。続きの中級(・・)ダンジョンの攻略も頑張って下さい。これよりダンジョンの消去を行います】


 そう世界の声が言った瞬間俺達は真っ白い空間に飛ばされたと思ったら直ぐに外に脱出していた。


「外か……それより初級ダンジョンとか言ってたな、俺はともかく……あんなの蒼威ちゃん一人では無理だよな?」


「そうですねいくらなんでも初級なんてレベルじゃないですね」


 そんなことを言ってるが町の被害は大きかった。

 人の気配がする。


 今は夜の10時くらいか、今すぐここを離れないと。


 俺は蒼威ちゃんをお姫様抱っこして跳んだ。


「ちょちょちょっと!? 拓朗さん!? 何を……」


「人の気配がするんだ。たぶんマスコミや警察、自衛隊だろう。ここを離れるよ」


 俺達は俺の家の刈宮市の自宅に戻るのであった。 

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