03 Love,

「あれ。僕」


「動かないでね?」


「ここ。どこ?」


「わたしの背中の上。おんぶしてます」


「雨が」


「いいのいいの。雨ぐらい。帰ってお風呂入れば大丈夫」


「ごめんね。僕」


「なんで謝るの?」


「僕。勇気が。ないんだ。君と一線を越える、勇気が。本当は僕が君をリードする、べきなのに」


「そっか」


「うまくいかなくて。仕事に逃げて。そして、玄関に倒れて。だめだね。僕は。君がいなくなってしまったと思って、焦って飛び出して。そしたら端末に君の位置情報と、雨の予報が」


「そっかそっか」


「傘。コンビニで買ったんだ」


「使う必要なくなっちゃったね」


「ごめんね。ごめん。こんな僕で」


「わたしも。同じこと思ってたの」


「同じこと?」


「わたしが部屋に戻ったら。あなたは愛想をつかしていなくなってるって。思ってた」


「そっか。似た者同士だね?」


「うん」


「君の背中。暖かい」


「帰ったら、お風呂入ろっか」


 雨に濡れて。


 泣いてる、ふたり。

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