序章


大気の鼓動に合わせて、この地に花の風が吹く。


数多の種を孕んだそれは、時の彼方へ歌を運んだ。


月と太陽が幾多も巡り、やがてこの地に生命が芽吹く。


そこに栄える者たちがあるだろう。







花の都と呼ばれる王国をご存知ですか。

女しかいないその国は、質量を伴う物体も精神世界も人間も何もかもすべてが大層美しく、神秘の力に溢れた夢のようなところなのだそうです。

国を治める美と叡智の花の女王に、月と陽と水と木の従女。

彼女らの下、"花の娘たち"はみなそれぞれ王国の為、日々まめまめしく働きます。

彼女たちは皆幸福に満ち足りており、それに比例して王国は華々しい栄華を極めているのです。


――不思議な話ですね。行ってみたいですか?


花々の魔力はとても強大です。どうぞ、お気を付けて。


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