花の都に散りぬるを

飴野セロエ

公開用設定資料集

・王国…花の都と称される美しい国。小さな国家だが、豊かな自然に独自に発達した技術を持っており周辺諸国の中でも随一の国力を誇る。「月の雫滴る夜に、茉莉花まつりかの元に赤子が宿る」が、何故か生まれるのは女だけ。


・女王(花様はなさま)…国を治める女王。国民からは親しみをこめて、花盛りの国の「花様」と呼ばれる。口元まで何重ものヴェールでしっかりと覆い隠すため素顔はよく見えない。千年前から受け継がれてきたとされる茉莉花のモチーフに宝石がふんだんにあしらわれた美しいティアラを被り、薄紅色の着物に真っ白な絹の上衣を羽織るのが正装。


・現女王…まろやかな美声で、音楽を愛する人。偶にヴェールから覗える唇は真紅の薔薇のようであり、頬は白くふくよか。


・月の従女(月殿:つきどの)

・陽の従女(陽殿:ようどの)

・水の従女(水女スイメ)

・木の従女(木女モクメ)

…女王に付き従う4つの側近の役職で、それぞれ一人ずつ。

特に月の従女と陽の従女は、女王を頂点とした行政組織の権力ピラミッドにおいて女王の真下に位置する特別な役職であり、国内では「月殿」「陽殿」と呼ばれて女王に次いで崇拝される。月の従女は小さな鉱石や月のモチーフの付いた薄いヴェールで顔を覆っているが、陽の従女はヴェールをつけず額まで曝け出す髪の結い方をしており、その額と耳には眩いダイヤモンドの飾りをつけている。二人は常に行動を共にし、儀式を執り行ったり教育の指揮を担ったりする。

水の従女と木の従女は公の場に出ないため国民も詳しいことはわからないが、これも宮殿内の重要な役職とされる。


・花の娘…王国民のこと。


🌸王国内の生活

花の娘たちは次のいずれかに分類される"才"を持って生まれ、その才の集団に属す。才によってそれぞれ特性があり役割が固定されているものの、交友など社会生活においては特に才ごとの集団で分かれることはない。また、余裕のある範囲でパン屋などの職業を持つ者も多い。


🌸才について

(※作者注:この虚構世界において、中世の「職が遺伝する」とでもいうべき社会階層の固定構造をよりファンタジックにしたにすぎず、実在する人物や団体等とは一切関係ありません。また一切の差別的・政治的・宗教的意図を含みません。)


・蝶族…"魔女"であり、王国の兵士である。森の精霊が祖先とされる。蝶族には生来の治癒能力があり(魔女と呼ばれる所以)、それを活かすのに必要な薬学や医学を学ぶ。また優れた運動神経や判断力などにより戦闘に適した者が多く、蝶族の娘は学校に通いながら兵士として訓練を受けることになる。

蝶族内で特に能力の高い数名は元老として直接国政に関わる。また、その中から一人選ばれる蝶族の長は「蝶凜ちょうりん」と呼ばれ、一族を率いる責任を担う。


・仮面族…湖の妖精が祖先とされる。その名の通り、皆個性豊かで美しい仮面で顔を隠している。芸能にきわだって秀で、王国独自の歌や舞踏を継承する存在。

王国の形式的な外交は古くからこの一族が担ってきた。特に能力の高い数名は元老として直接国政に関わるが、一族に明確な長はいない。


・記録官…王国と世界の事象に関する様々な記録を生業とする集団で、蝶族、仮面族の才と比べると生まれてくる比率が低い。主に図書館で研究に従事するほか、宮殿で書記をしたり、「あまみ」(占い)を担ったりする。非常に言語能力が高い。古代に天と契約を交わした人々の子孫とされ、古くから宮廷と距離が近く、記録官の才を持つ子は生後すぐに王立アカデミアで集団生活を送る。


🌸

咲種サキダネ…王位継承者のこと。才とは別に"タネ"を持って生まれた子が次の女王になる。これまで千年以上もの間、女王逝去の直前に誕生してきたと言われている。


タネ…普通の国民は普段意識することもないが、"タネ"を持つ赤子は然るべき時に生まれ、然るべき立場によって直ちに保護されるという。




「月の雫滴る夜に、茉莉花まつりかの元に赤子が宿る」

…花の娘(国民)の誕生にまつわる言い伝え。大人になった花の娘は、感情に関係なく不意に瞬間的に凝固する涙を流すことがある。凝固した涙は宝石のように美しく、希少価値が高い。この涙のことを「」といい、「実」を流す生理現象のことを「実を吐く」と言う(実際に口から吐くわけではないのに)。多くの場合「実」は脆く、24時間以内に揮発してしまう。しかし、生涯に数回、純度が高く丈夫な「実」を吐けることがあり、更にその時が「月の雫滴る夜」に近ければ、茉莉花畑に「実」を埋めて育てるとそこに赤子が宿ることがある。

赤子とそのもとになった「実」を吐いた花の娘は親子関係となるが、娘が母親と異なる才を持つことも珍しくはない。



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