2 朝の訪問者は……
ピンポーン
朝の日課を終えてシャワーを浴び終えるとチャイムが鳴る。
最近の通販履歴を思い出すが、購入した覚えはないので宅配はない。
ピンポーン
俺の知り合いが来ないわけではないけれど、その手の人間は合鍵を使って入ってくる。
つまりチャイムを鳴らすわけがない。
うん、居留守決定。
今日の予定を考えながら、流れでテレビを点けると緊急ニュースが流れていた。
最近っていうとアレ関係だと思うけれど、緊急ニュースするような事あったっけ?
自衛隊がなんとかしてくれていたはずだけど。
ピンポーン ピンポーン
ドンドン ドンドン
「和田さ~~~~ん!! いますよね~!?」
妙にしつこい訪問者だけど、なんか確信を持たれているな……
仕方なくインターホンのカメラを確認すると20代半ば程の女性だった。
若い女性……在宅確認済み……
宗教勧誘か!?
宗教勧誘なら面倒なだけなので、居留守継続を決めて再度意識を自分に向ける。
『え~先日、日本各地に発生したダンジョンですが……』
テレビでは予想通りダンジョンの話だった。
一ヶ月も前に「日本にダンジョンできたんだぜ!」とでも言おうものならば、「寝言は寝て言え!」と反応が返ってくるのが一般的だっただろう。
しかし、現実に一週間ほど前にダンジョンが発生してしまった。
(これは日本各地で起こったと当時思われたのだが、翌日には世界各地だったという事が分かった)
更に中からはゲームで見るようなモンスターが出てきた。
(と言ってもドラ〇エのスライムのように可愛らしくはないらしい)
急遽自衛隊が防衛に駆り出された。
当初はファンタジーに現実の武器が効くのか?という疑問があった。
しかし心配を他所に、既存の兵器が幸いにも有効だと判明した為、連日自衛隊がダンジョン付近でキャンプを張っている。
その結果、ダンジョンの外に出てきたモンスターを随時討伐して被害が地域に発生しないように防いでくれている。
ガンッッ!! ガンッッ!!
「和田さ~~~~~ん!! 私は市役所の人間なんで出てもらえないと困るんですよ! そうじゃないと…………出費かさみますよ~?」
身元は先に言え!!
というか、さっきの音ドア潰しにかかってるだろ……
直ぐに一声あげてドアへの暴行を阻止しつつ、適当な服を身に付ける。
役所の人間と言っていたけれど、行動からは本当か疑わしい。
服を着終わると、念の為にスマートフォンを手に取って玄関に向かう。
「おはようございま~す。 市役所の探索サポート課の職員、西原茜で~す」
挨拶しながらIDカードを提示してくるが、イマナンテ?
探索サポート課??
ははぁ、新手の宗教勧誘か。
そう判断すると、俺はドアを閉めようと
「ちょっとまった!!!!!!」
したが、その前に体をドアの間に滑り込ませていた。
近くを新聞や保険の勧誘の人が通っていたなら賞賛の拍手が送られただろう。
しかし、俺は勧誘される側。
賞賛どころかドアの外にこの女性を押し出さねばならない。
「いや、俺仏教に入っているので大丈夫です!!」
「仏教~!? いや私、宗教勧誘じゃないです~!!」
「じゃあ、保険ですか? 壺ですか? どんなのでも買う気ないのでお引き取りを」
「だから~市役所の職員ですって~!!」
「そんな課あるわけないだろ!!!!!!!!!!」
探索サポート課
そこらの子どもに訪ねたら、どこぞのゲームの話として聞いてくれるかもしれない。
しかし、現実の役所の課として尋ねたら一笑される事間違いなし。
あるわけねぇだろ!
「いや、お気持ちは~とても分かるんですど~、実際今は~存在しちゃってるんですよ~…… あ~、今ケータイ持ってるじゃないですか~」
どうやら俺が手にしていたスマートフォンに目を付けたようだ
「コレ~私のIDなので~、市役所に確認してもらえません~? 新設の課ですけど~、私が今何言っても~信じてもらえないでしょうし~……」
そういって目元に涙を浮かべながら、IDカードを突き出してくる。
嘘くさい感じしかないのだけれど、市役所に確認を取ることにした。
必死そうな所もインセンティブ目当てであれば、おかしくもない。
涙なんかで心を許してはいけない。
ちなみにさっきからドアに挟まれて痛いと言っている。
涙も課の存在を信じて欲しいのか、体の痛みを訴えているのか微妙な所だ。
念の為に、検索して出てきた市役所の番号にかける
『はい、H市役所です』
「私、和田と申しますが、そちらに……」
……
…………
………………
対応してくれた職員との会話を終え電話を切る。
通話中ずっと不安そうな顔をしていた女性に視線を戻す。
「えっと~、信じてもらえました~?」
俺は現実の話として受け入れにくく、呆然としたまま頷く。
取りあえず身元確認はできたし、これ以上玄関で騒ぐと近隣住民の噂になりかねない(ドアの事を考えると手遅れかもしれないが)ので中に入れる事にした。
普通男の一人暮らしの部屋に入れられるとなると、女性は躊躇するものではないかと思ったが、精神的に疲れてるのか特に何も言わずにリビングまで付いてきた。
それにしても、探索サポート課か。
役所は何を血迷ったんだ。
リビングにつくまでの間に探索サポート課の業務を思案したが、何も浮かばなかった。
そもそもダンジョン発生から一週間で新しい課発足とか、足腰が重い役所にはありえない速度だ。
しかも、役所の人間がわざわざ家まで来たのだ。
ロクな用事ではないだろう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます