第65話 幸せの前に待っている残酷な出来事。

『阿部!!早番だろ!?起きる時間だぞ!!』『えー…眠い。』佐野さんがあたしにキスをする。『おはようございます。』『わかりやすいんだよ(笑)』


破天荒!!4人同棲生活が始まってはや半年。

美香さんも臨月にはいり、季節は秋に入ろうとしていた。


『美桜、おはよっ!!』『美香さん、おはようございます。』『朝御飯、作っておいたから食べて!!』『いつもすんません。』


焼きたてのパンの香り。そして、目玉焼きにカリカリのベーコン。

欧米かっ!!


『コーヒーでいい!?』『はい。あれ、カツオは?』『カツオは、もう行ったよ。』『え!?早くない!?』『なんか、心配な利用者様がいるだとかで…。』


カツオは、みるみる介護士としての力を付け、なんと…ゆき主任の座を奪還。みごと「主任」として現在はバリバリに働いている。

ゆきさんからのカツオへのいじめは壮絶だったが、そこはカツオ。屁でもない。むしろ気付いていない。

諦めたゆきさんは、今年いっぱいでこの施設を辞めるそうな。


『美香さん、もう少しで産まれますね!!』『うん!女の子だから、名前考えてるの!!』『候補は!?』『まだ内緒!』


この同棲も、子供が産まれたら解消。

カツオと美香さんは、美香さんが住んでいたメゾネットのアパートへと戻る。

そして、あたしと佐野さんも…


『阿部!時間だぞ。』『はい。行って来ます!!』『また後でな。』『はいっ!!』

おでこにキス。なんだかくすぐったい。

そして、あたしは佐野さんにギューっと抱きついた。


『どうした?』『大好きです。』『…俺も。結婚式が楽しみだ。』


来年の4月。あたし達は結婚式をする。

美香さんの出産も無事終わり、同棲も解消し。カツオもこんなに立派な大人に育ってくれた。


正式なプロポーズはまだされていない。でも、当初あれだけ鉄仮面でドSだった佐野さんが、あたしの前だけでは甘えてくれる。

それだけで充分。


『行ってきます!!』『あぁ、行ってらっしゃい!!』

あたしは職場に向かう為に車を走らせた。

今日は天気がいい。紅葉も綺麗。


『よーし!今日も仕事頑張るぞ!!』

職員専用駐車場に到着し、あたしは車を降りる。

背伸びをして、大きく深呼吸をして…「いざ、職場へ」その時、突然背中に強い痛みが走った。


『いたっ…』『やっと会えた。』『…え?』


「美桜。」


…良介?

あたしに何をしたの?

あたしは…何をされたの!?

誰か…

助けて。


『え?美桜っ!?』『背中が…痛…』『美桜っ!?誰かっ!!誰か救急車っ…!!』


意識が遠のく中で、あたしを抱き抱えるカツオの姿だけがうっすらと見えた。

やるじゃん…カツオ。


そして、目を覚ましたあたしは病院のベッドの上で、2日が経過していた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る