第59話 阿部VS小久保の最期の戦い。フューチャリング佐野。
『あれ、佐野さん?』『昨夜は悪い。魚が浸かってるとは思わなかった。』『美香さん達は?』『昨日の内に帰ったよ。ただ、美香が凄く心配してたから、美香だけには話した。』『そうですか…』『ごめんな。』『いえ、いいんです。』
一夜開け、あたしの身体は全身が筋肉痛の様にギスギスとして痛い。そして、心もどこかポッカリ穴が空いたように隙間風が吹いていて…寒い。
『佐野さん!今日仕事じゃぁ…』『有給使った。死ぬ程あるからな。』『ごめんなさい、あたしのせいで。』『何言ってんだよ!!』『うわぁっ!!』
ベッドの中で脇腹をくすぐられ、あたしは笑いながらも涙が出て来てしまう。
佐野さんの優しさが、今は苦しい…。
『阿部、午後から施設に行けそうか?上司3人がお前と話したいって。』『…良介も、ですか?』『あいつは昨日付けで退社になったよ。小久保の事で聞きたい事があるらしい。』『…分かりました。』『俺も一緒にいるから。』『はい。』
午前中はまったり佐野さんのマンションで過ごし、そして午後。
あたしと佐野さんは施設へと向かった。
会議室へ呼ばれ、そこには事務長、介護長、看護師長が揃ってお出迎え。
『阿部さん、佐野さんケアマネージャー、座って下さい。』事務長に言われ、あたし達は広い会議室の中、対面式で向かい合いながら座った。
「失礼します」
ドアの外から声が聞こえ、視線を移すとそこには小久保(さん)の姿。あたしは昨夜の事がフラッシュバックし、身体が強ばった。
『大丈夫だ。』隣で佐野さんが手を握っていてくれる。
それをみた小久保(さん)があたしを睨み付けながら指定された席に腰を下ろした。
『阿部さん。』介護長があたしに話し掛けた。 『はい。』『少しは落ち着きましたか?』『あ…いえ…』『あんな事あったのに、落ち着く訳ねーだろ。』佐野さんが繋いでいた手を机の上にバンッと出し、介護長に言った。
『…あ、すまない。そうだよな。』続いて、事務長があたし達にこう言った。『千葉良介は、昨日の時点で退職になった。尚、被害届を出すかどうかは阿部次第になるが、どうする?』『被害届…』『あの、話の途中で申し訳ありませんが、宜しいですか?』
小久保(さん)が話を遮り、ツンとした態度で上司に食らい付いた。
『介護長、私、何かしました?』『千葉が言うには、小久保に昨日の知恵を貰ったと言っていた。』『証拠はそれだけですか!?』『それだけで充分だろ。』『あたしはアドバイスはしましたが、それを実行しろとは言っていません。』
どんな言い訳だよ。
ここまで来ても自分は無害だと突っぱねるか。
…こいつだけは許せない。
『小久保さん。あの…』『阿部さんも、どうにかして逃げれなかったんですか?それなりの気持ちがあったから受け入れたんじゃないんですか?』
「2回も(笑)」
何で回数まで知ってるの…?
まさかこの人…昨日何処かで見てた?
『おい、小久保。』佐野さんが立ち上がり、小久保さんの席に近寄った。
『何ですか?』『お前もされてみろよ。レイプ。』『え?』『まぁ、対して顔も可愛くねーし、性格も歪んでるみてーだし。相手にもされねーか(笑)』『失礼じゃないですか?』『分かってねーみてーだな。』『きゃっ…!!』『佐野さんっ!?』
佐野さんは、小久保(さん)の胸ぐらをを突然掴み、そして小久保(さん)は宙に浮いた。
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