第58話 ずっと気を張って頑張っていたのに、最後の最後でやられた。
『…何してんだよっ!!』『佐野さん…』
佐野さんが良介をあたしから引き離し、あたしを抱き抱えた。
見て欲しくなかった光景。
見られたくなかった場面。
…余計に涙が溢れる。
『千葉!!これは犯罪だぞっ!!』『違いますよ。美桜と俺の未来の為です。』『お前…狂ってる。』
佐野さんは山積みにされてあった利用者様用のバスタオルをあたしに掛けてくれ、「待ってろ」と言葉を残し…
良介の胸ぐらを掴み、大きく振りかぶった拳を良介の顔に振り落とした。
良介は勢いでぶっ飛び、倒れ込んだがあたしと行為を済ませた満足感からか、ずっと笑っている。
『何がおかしい?』『佐野さんがいくら俺を殴っても、美桜は俺のものですよ?』『例え阿部が妊娠したとしても…俺が責任を取る。』『え?』『阿部の事は俺が守るんだよっ!!』
良介が佐野さんに掴みかかるが、佐野さんは意図も簡単に良介の手を握り潰す。
『阿部に近付くな。』『嫌だ。小久保さんがせっかくアドバイスしてくれたのに。』『…小久保?』
その時だった。
「何してるっ!!」
見回りをしていた介護長が姿を現した。
『佐野?千葉も…どういう事だ!?』『千葉が、阿部を無理矢理犯したんです。』『え!?』『俺は阿部を連れて帰ります。介護長は千葉と小久保からちゃんと話を聞いて下さい。』『美桜っ、待って!!』『千葉、話を聞く!!付いて来い!!』
あたしは佐野さんに抱き抱えられたまま、車の後部座席へと静かに寝かされた。
『佐野さん…車、汚れちゃいますよ。』『少し休め。』
佐野さんの車はマンションに到着。部屋に入ると美香さんがいた。
『煌太!?阿部さんどうしたっ…』『阿部、歩けるか?』『…はい。』『シャワー浴びてこい。着替え用意しておく。』『…ごめんなさい』『お前は何も悪くない。いいからゆっくり浴びてこい。』
心配そうにあたしを見つめる美香さん。
申し訳ないけど、カツオがいなくて良かった。
あたしは脱衣所で服を脱ぎ、鏡で身体を見る。
汚されてしまった身体…とても汚い。
きっと、あそこまで良介を追い詰めてしまったあたしが悪い。
あたしがもっと早く、良介にハッキリと気持ちを伝えていればこんな事にはならなかったのかもしれない。
『シャワー浴びよ…』
浴室へと繋がるドアを開けた瞬間…
「そいつ」は湯船に浸かっていた。
『いやっ!美桜!きゃぁぁぁぁぁぁっ!!』
『カ、カツ…オ…』
あたしはついに意識を失い、目を覚ました時。
佐野さんが隣で眠っていた。
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