第48話 人間って本当に人の事をとやかく言うのが好きな生き物。
そして、ついに翌朝。
『阿部、起きろっ!!』『2回戦は無理ですってば・・・』『ちげーよっ!俺が仕事なのっ!!起きろっ!!』『はっ!!そうだ!!』
あたしは佐野さんに叩き起こされ、ベッドから飛び起きた。
『あと15分で出るぞ。』『あっ、はい。』『バタバタさせて悪いな。』
昨日の事に一回触れず。
やはり一夜限りのランデブーだったのか。
あたしな何気なしに昨夜の出来事を匂わせてみた。
『んーっ!!昨日は気持ち良かった!!』
そう、ダイレクト過ぎるのである。
『阿部、昨日は悪かったな。』
出た出た。懺悔の言葉。「悪かったな」=「良く覚えてない」。
まぁ、あたしは久々に通関式出来たし、別に・・・。
『次はゆっくり来いよ。ホラ。』
「カシャン」とあたし目掛けて放り投げられたもの。
『これ、鍵・・・?』『いつでも来い。』『ポストのですか!?』『家のだよっ!!』
「昨日はありがとな。」
寝癖頭をクシャクシャと乱され、あたしは人生初の合鍵をゲットし・・・、そしてカツオに感謝の意を込め、天井に向かって一礼した。
『行くぞ!!』『はいっ!!』あたしは佐野さんの車に乗り、職場へと向かう。
朝の職員駐車場は、早番の職員で混雑する。
つまり、あたしの「朝帰り」を皆の衆に見せびらかす事になるのだ。
(あれって、佐野さんと阿部さんじゃない!?)
(うわっ、佐野さん浮気かよ。)
(ドSだから、バシバシされたのかな。)
『バシバシなんてされとらんわいっ!!』『阿部、ほっとけ。』『でもっ、阿部さんが調教師になってますよ!?』『噂なんかに惑わされてたら仕事なんか勤まんねーよ。』
確かに。佐野さんの言う通りだ。相手にしてたら・・・
『いやぁー、マジで足ガクガク!!夜勤出きるかなぁーーー!』
『阿部・・・。』『はい。そうですね、すみません。』
だって、昨夜の佐野さんはとても優しくて、ドSがどこかにぶっ飛んで行っていて・・・、逆にあたしが癒されてしまっていた。
『じゃ、夜勤頑張れよ。』『はい。佐野さんも仕事頑張って下さい。』
車から降りたあたしは、ここで佐野さんとお別れ。
みんなの視線を感じながらも「お前ら、実は羨ましいんだろ?」根性で自分の車に乗り移り、一旦自宅へと戻った。
そして、少しの仮眠を取りあっという間に夜勤出勤時間。
あたしはシャワーを(浴びたくないけど)浴び、再び職場へと向かった。
『お疲れ様です。』『阿部さん!』
やって来ましたゆき主任。でも、どことなく表情が優しく感じる。
『介護長が仕事前に来てくれって。』『分かりました。』
すっかり忘れてた。『今月いっぱいで辞めたい』と駄々をこねたあたし。きっと、その話だろう・・・。
あたしはフロアを離れ、介護長室へと向かった。
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