第16話 余りにも偶然過ぎてモニタリングかと思った。
翌朝。間違えた、翌昼。
あたしは、泣きすぎて開かない目をバッチンバッチン叩きながら、とりあえず携帯を手にした。
『あれ、良介から着信がある・・・。』あたしは寝起きのガッサガサの声で良介に電話を掛けた。
『あ、あたしだ。』『美桜?今起きたの?』『んだ。』『ごめんね。昨日、大丈夫だったかなぁと思って。』
大丈夫じゃないと言えば大丈夫じゃない。色々含めて。
あの後、首を絞められたあたしはようやく佐野さんから離れ、『早く帰れ』と脅されたので帰る事にした。
だがしかしっ!!
『またな。』と最後の最後に『頭ポンポン』を佐野さんからされたあたしは鼻血を出してしまい、佐野さんに気持ち悪がられ、サヨナラした。
頭ポンポンはいいよなぁー・・・。ほえぇーってなる。クズの汚女子でも清らかになったのではと錯覚してしまう。
・・・まぁ、あくまでも錯覚だけど。
『あれ?美桜?』『え?あぁ、聞いてるよ。』『ちゃんと、お見送り出来た?』『うん、出来た。』『そっか。それだけの電話だったんだ。ごめんね、休みの日に仕事の話して。』『大丈夫だよ。良介今日夜勤でしょ?頑張ってね!』『ありがとう、美桜。明日の朝、会おうね!』
安定の癒しキャラ、良介。素でいられるというか、素過ぎてこれでいいのか・・・。
『せっかく早起きしたし、春服でも買いに行こっかな。』
昼に起きといて『早起き』と言える時点で終わってる。まぁ、でも一日はまだこれから。シャワーを浴び・・・。あ、勿論頭は洗ってねぇです。洗ったら頭ポンポン威力が下がってしまうので。話を戻してメイクをして・・・、危うく瞼に目を書こうかと思うくらい腫れが引いていない目をあらゆる手で通常に戻し、着替えたあたしは車で約30程の距離にある大型ショッピングセンターへとやってきた。
『女子力上げる為にスタバ行くか』まずは、腹ごしらえ。上手いコーヒーと甘いデザートを、脚を組みながら優雅に頂く・・・。
『混んでる。やめよう。』
結局、あたしはリーズナブルですぐに出てくる釜玉うどんを食し、久々のウインドーショッビングを開始する事にした。
『あ、この服かわいい・・・あ、これもいいなぁ。』手に取る服全てが可愛く思えてしまう。その位、買い物は久々だった。介護職に就いてから、慣れるまでが本当に毎日がクタクタで。休みの日に何処かへ出掛けようなんて思う気力すら沸かなかった。
そんなあたしが、何故今日動けたか・・・。
『佐野さんの私服って、どんな服なんだろう?』
昨夜の抱き締め効果と、頭ポンポン治療が大いにあたしの無気力状態を打破してくれていた。
『決めたっ!!この服と、あとデニムを・・・』『煌太、この服可愛くない!?どお!?似合ってる!?』
カップル万歳、ご馳走さまです。似合ってるかどうかだって?似合ってんじゃないのおぉぉ!?知らんけどおぉぉ!!
彼氏いるのに腐女子炸裂。
このひん曲がった性格、早めに対処しとかないと本当に灰となり、海にばら蒔かれてしまう。
『似合ってんじゃねーの?俺、男だしよくわかんねーよ。』
あれあれ。この声・・・、聞いた事あるある。そして、女が言った『煌太』。
・・・まさか!?
『げっ!!佐野さんっ!?』『・・・安部!?』『佐野さん、今日休みなんですか?』『そうだけど・・・、お前その目・・・(笑)』『煌太、誰?知り合い!?』
邪魔すんな。あ、違うか、あたしが邪魔なのか?
とにかく、佐野さんという事は認識した。
・・・はて?隣のおなごは誰ぞや?
『あぁ、安部は俺の職場の介護士。』『へぇー。初めまて、安部さん?ていうの!?いつも煌太がお世話になってます。』『佐野さん、あの・・・妹さんですか?』
んな訳ない。でも、彼女と認めたくないが為に出てしまった『妹疑惑』。細くてスタイル良くて、おまけに顔も・・・認めたくないがまぁまぁ可愛いんじゃないの!?知るかボケー。
『こいつは俺の彼女だよ。』
俺の彼女だよ。俺の彼女だよ。俺の彼女だよ・・・(山びこ風に)
いたたたた・・・。心臓痛い。
やはりあたしにはインドアが向いてるらしい。
もう帰ろう、うん。そうしよう。
『あ、お邪魔しましたぁー。』
・・・運転出来るかな。気ぃ狂いそうで事故りそう。
あたしの休日は、最低最悪の緊急事態で幕を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます