多分、これが一番早いと思います。

主船路1040

第1話多分、、これが一番早いと思います

目を覚ませばそこは見知らぬ草原だった。


「うっ……ここは!?」


なんだここ?……それにここどこだ?一面見渡す限りの野原じゃねぇか。俺はなにをしてたんだ?


「目を覚ましましたね。」\ぺカッー/


「あんたは!?……」


声に反応して前を向くと、そこに立っていたのは、この世の中の美を体現したように美しく、それはまるで神々しささえ感じる麗しき女性がいた。な、なんて美しさだー!!



「私は女神です……そしてあなたをここに呼び出したのも私です」\ぺカッー/



「そんなの信じられるわけないだろ!!家に帰してくれ!」



女神だが、詐欺師だがなんだかしらねぇが、これは明かに誘拐立派な犯罪だ!刑務所に打ち込まれてろ!俺は昔、検察官だったんだ!今から自白させてやるぜ!てかどうやって照明機能つけてるの?


「魔王を倒すのです……」


こいつなんて言った?魔王?

はっ?


「はっ?」


「それがあなたが唯一元の世界に帰れる方法です」


「なんだよ、それ……」


急にも程がある。昔のゲームだってもっとゲーム説明してくれるぜ?


「期待しています……」\ぺカッー……/



そう言い残すと女は光の粒子に包まれる。


「おいっ!待ってくれ!」ーー!


「き、消えた……!?」


自称女神を触ろうとするも、透けるように通り抜け、振り返った時には既に消えていた。


「どういう事なんだ!?俺はなんでこんな事になってんだ!?学校から帰ってきて寝てたら急に変な所を連れられ、変な格好の女に魔王を倒せと言われる。これが、余裕がある時なら異世界に来たって喜べる。だが、生憎明日はテストなんだ!!家に帰って勉強しなくちゃいけねぇ!あぁ!家帰っても勉強しねぇ俺でも今の状況がヤベェってことぐらいはわかるぜ!」


大きく深呼吸する


「……くそっ、いいぜ!その魔王とやら俺が倒してやる!待っていろ自称女神!!」


と空に向かって吠える様に叫ぶ。あぁ、こんなチュートリアルもないクソゲーなんか速攻でクリアして帰らせてもらうぜ!





それから、俺はギルドと呼ばれる所で僧侶と魔法使いと武闘家を味方につけ、「魔王」を討伐する旅にでた。

 ある時は、聖剣を手に入れるために竜に酒を飲まして酔わせた隙に聖剣で竜の首を落とした。(ちなみに7つ首で同時に7つ切らないと倒せません)



ある日は、魔法を覚えるためにダンジョンに潜って、スケルトンキングを相手に聖水(炭酸水)をぶっかけて溶かしたりもした。(ちなみにスケルトンキングは魔法攻撃しか効かず、物理無効です)



 そうやって旅を続けるに連れ、俺たちは「勇者一行」と呼ぶ様になり、特に俺は「勇者」と呼ばれる様になった。リアルで勇者と呼ばれるのは恥ずかしかった。(調子に乗ってカッコつけてもモテはやされていて心が痛くなった)



 まぁ、色々あったが、俺たちはとうとう、魔王がいる根城へと足を踏み入れる……!!


\\\\ゴゴゴ!!魔王城!!ゴゴゴ////



「ここが魔王のいる……!!」ゴクリッ……


「へへっ……魔王!……一体、どんなやつなんだウズウズしてたまんねぇぜ!」


「……でかい」


いつも自由だなお前ら!!


「みんな行こう!……」


仲間たちの反応は三者三様で


緊張を隠せないでいる僧侶と闘いが楽しみとばかりにうずうずしている武闘家、城の大きさに関心している魔法使い。


それら三人を連れて城の中に足を踏み入れた。




しばらく歩いて、大きな扉を開けると大広間にでた。赤いカーペットの先には玉座と美しい女性がいた。女の頭部には二つの角が生えており、赤をイメージさせる服装をしている。

女はゆっくりと目を開け、警戒心を示す俺たちも見ると薄ら笑いを浮かべる。

「……」


女性は玉座から立ち上がり、足元まであるマントを脱ぎ捨て、俺たちに対して闘争心を隠そうともしなかった。つまり……


「よくぞ来た!勇者よ!待っていたぞ!」


「お前が……お前が魔王か!」


「いかにも!我こそが貴様の敵にして、世界の破滅に導くものだ!」


そして魔王は、己の魔剣を宝石で彩られた指輪をつける右手で空間から引き抜く。その剣は魔剣に相応しく威圧感を与える。


「よくも……!俺がお前に引導を渡してやる!」


鞘から光り輝く聖剣を抜き魔王と対峙する。他の三人も臨戦態勢にはいる。


「いいぞ!貴様のその目!心してくるがいい!」


そして、魔王も禍々しい魔力を放ち、


「「勝負!!!!」」


二つの大きな光は我を通さんと一直線に走り出し、光と熱を発生させ今、ぶつかる!




「  」


男は始まりの理由は特殊であろうと、旅をするにつれて勇者は、勇者である自覚を持ち人々の平和を守るため闘い始めた。そして魔王も、魔王の娘で振る舞うために生まれ、そして父が亡き今、己が魔物の長として威厳を保ち、魔族が富める暮らしを求めようと勇者と戦っていた。そこには嘘偽りもない真実しかない。そしてどちらの真実も間違ってはいない。


「ねぇ!起きてよ、勇者!嘘だと言って!!」


僧侶は目を閉じたままの勇者を揺さぶる。傷は確かに塞いだ。それなのに目を覚さない。


「……良き闘いであった……貴様が敵でなければ……良きライバルだったのかもな……」


酷くボロボロの姿になった魔王はゆっくりと勇者の元に歩みを進める。


「勇者!!起きろ!お前の仕事はまだ終わってねぇ!」


武闘家は必死に勇者に呼びかける。勇者と武闘家は男同士で酒を交わした仲で、武闘家は勇者をライバルだと思っていた。そしていつの日か、必ずこの男は魔王を倒して見せると信じて彼についてきたのだ。

 ”俺に勝った男がこんな所でのびてんじゃねぇ!!“


「……」


それでも勇者は彼の声に反応する事は無かった。


「クソっ、オラァッッ!!」


そんな中、歩みを止めない魔王にヤケクソの拳を飛ばす。その一撃は並の魔物であれば一撃で即死か瀕死の重体へとさせる攻撃のはずなのだ。だが、そんなもの当たるはずもなく躱され、カウンターにボディーに重い一発を与え、武闘家は壁へと吹っ飛ばされる。


「がぁっっ!!!?」


それを見ていた僧侶は、絶望、恐怖、諦観……そんなものもう捨てた。彼女にあるのは覚悟だ。


「邪魔だ、どけ女。我に女をいたぶる趣味はない」


「いいえ、退かないわ!たとえ死ぬ事になったとしても!勇者はきっと、生きているから!彼ならまた助けてくれるから!」


勇者は必ず助けてくれる。勇者を信じて僧侶は魔王に立ち向かう覚悟を持っていた。

自分の事なんて信じられない……私は臆病者だし、ビビリよ……でも!勇者の事を一番長く共にいた私だから分かるし、信じられる!だから、早く私を助けてよ!この寝坊勇者!!!!

いつもみたいに言ってよ!!


「そうか、なら逝け」


「っ!!…………?」


僧侶は、魔王の一撃がいつまで経ってもこない事を不思議にゆっくりと目を開けるとそこには僧侶の脇から伸びる剣が喉に刺さり、苦しむ魔王の姿があった。


「あがっ……!き、きさ、ま……!」


「あぁ……そうだな僧侶。俺が何度でも助けてやる。大勢の人々が助けを求めている……なら俺はそれら全てを助ける」



「あ……あぁ…!」

「待たせた」





「貴様生きていたのか!?」

「あぁっ、天国からお前を殺すために戻ってきたぜ?」


勇者は酷く青い顔をさせながらグリグリと聖剣を押し込んでいく。聖剣はかつての輝きは無くし、魔王から見ても死に体だった。

だが、仲間達からはその折れた聖剣の輝きは彼の命を思わせるような強き光を放っていた


「死に損ないが!!大人しく死んでいればいいものを」

「今だ、魔法使い!!」




魔法使いは、僧侶と武闘家を掴み、呪文を唱える。するとさっきまでいたはずの三人はそこから忽然と消えてしまった。


「……!」

「なっ!?テレポートだと!」


魔王は圧倒的なほどの魔力量を保持していた。対して魔法使いには魔王にはない技術を持っていた。きっと魔王にとっては予想外だったに違いない。


「さぁ、最終ラウンドだ!!」


「生き返ったからなんだというのだ!ボロボロの貴様に!剣の折れた貴様に何が出来るというのだ!!」



全くもってその通りだ。


「あぁ、だがよ魔王勘違いすんなよ」

「俺の覚悟は……これぽっちも折れちゃいねぇ!!」

「き、貴様!?な、なにを!?」


聖剣を中心とし、光は光度を増していく。光はさらに強く、熱く増していく。それは次第に聖剣をもってしてもその器に収まり切らずヒビをつくる。


「こ、この光は!まさかっ!貴様!」


ある悪の組織の研究所のこれはある実験結果なのだが、魔力と生命力の関係性というものがある。それは魔力を空っぽにしても死なない。なら人間の持つ生命力を持ってすればそのエネルギーは莫大なエネルギーを放出するのではないかというもの。


 この実験のせいで多くの人が犠牲になっていった。しかも、この得られるエネルギーはどんなに多くなく、大半は空気にばら撒かれてそんな効率は良くなかったという。


「一人じゃ寂しいぜ?どうせなら一緒に行こうぜ」


これは、一般論だ。だがそれにも例外がある。それは『俺』だ。勇者の生命力は膨大だ。人々の生きたいという願望や助けてほしいという思いが形になって俺という『勇者』はできてる。


「ふ、ふざけ……!」


直後、光は世界を包み込む。音は消え、光だけしかない。その内、光は俺すらも飲み込み……


「久しぶりですね?」

「あんたか……久しぶりだな」


そこにはかつての女神がいた。

「約束通り、元の世界に……」

「いや、いい」

「?どうしてですか?」コテッ?


不思議といった表情で問う。



「二つほど頼みがある」

と二本、指を立てる。

「一つはあの後世界はどうなったんだ?」

「あの後勇者と魔王が相討ちになったという事で人類と魔族は和平を結び、世界は平和になりました。それもこれもあなた様のおかげです」


と事務的に淡々と告げる。そこからは女神の感情は読み取れない


「そうか……あともう一つだが、魔王はどうなったんだ?」

「魔王は神の反逆者ということで、ここよりも深い場所に永遠に拘束される事になります」

「なら、俺は魔王と旅にでたい」


と即答する。女神は柄にも無く表情を崩し、気でも狂ったのかとでも言いたげな表情だ。


「……どうしてですか?」


「あいつは悪ではあったが、根本は多分、魔族の平和を願っていたんだ。そして、俺はあいつとこいつと仲間だったら楽しいんだろうなって思った。」


本当にそうなのかは知らんしこれは勘だ。


「……」

「英雄特典としてあいつを出すことはできないか?」

「……本当はダメなんですが、世界を救ったあなた様の願いです。あなたの意見を尊重をします」

「おっ、話のわかる……」


と言おうとすると、ただしと後に付け足して


「条件があります」

「?」


「あなたの救った世界は数ある世界の中の一つに過ぎません。だから、あなた様には遅延している他の世界も救って頂きます」


女神がため息を吐き出しながら、手をかざすとたくさんの星が映し出される。そこにはもう滅んでるんじゃないかといってもいいほど荒廃した世界に恒星のない常に真っ暗な星だったりと数多く存在していた。

「うえぇっ?まだ働かなくちゃいけないの〜?」

「本当はダメなところを私が個人的にやるんです。私のために働いてくださいね」


女神は「これで手のつかなかった仕事がやっと終わる」と言いたげな上機嫌さだった。


「はいはい、わかりましたよっと」

「あっそうだ!そういえば」



「?どうしたんですか?」


少し考えるももういいかと諦める


「いや、なんでもねぇや」

「ふふっ、あっちの仲間のことですか?皆さん元気に暮らしていますよ」

「っ!そうか……」


それだけ聴ければ十分だ。


「それじゃぁ、行ってくるわ」


もういかなくちゃなんねぇ!!


「お気をつけて。あなた様に御神の加護があらんことを」


そうして今度はほのかに暖かい光が俺を包み込み、俺は前に踏み出す。


俺の勇者人生はこれからだ!!!

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