(二)-3

 その奥様方が、大きな声で「昼間からお酒なんか飲んで」「きっとアルコール中毒なのではないかしら」「いずれにしてもロクな人間ではないでしょうね」などと話をしているのが聞こえてきたのだ。

 ランチタイムの店内を見回してみたものの、酒を飲んでいるのは辰巳たち二人だけだった。

 千川は「なんなんですかね」と一言ボヤいた。対して辰巳は「気にするな」と一言だけ答えた。

 その後二人は黙ったまま、皿の上の残り物を片付け、グラスを空けた。

 そして「じゃあ、帰るか」と辰巳は言い、「橋見水産」の文字が右胸に入ったウインドブレーカーに袖を通しながら席を立ち、伝票を掴んでレジに向かった。


(続く)

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