054 第26話 1185年 壇之浦の戦い 完結です。

 本エッセイは拙著「はじめさんが はじめから はじめる! ~タイムスリップ歴女コスプレイヤーはじめさん~」の最新話のネタバレを多分に含みます。エッセイの題もしくはエッセイ冒頭の表記話数をまずご確認いただき、ご自身の読書進捗度と照らし合わせて読み進めるか止めるかを予めご判断ください。

 では、以下から新規部分です。どうぞ。




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 はじめさんがはじめからはじめる、第26話 1185年 壇之浦の戦い。いかがでしたでしょうか?




 テレパス以外の特殊能力を頑なに封じてきたおれごんが、最後に仕掛けてきた大一番! お楽しみいただけましたでしょうか。


 これは先に八艘飛びありきで描いたのではありません。偶然後で思いつきました。最初はただ単純に電車に戻る時に意外な格好をさせたかったのです。普通に世紀末救世主マントでも良かったのですが、もっとインパクトのあるものにしたいと思いました。その時は花魁も新撰組も話がまだ構想に無かったものですから、その時に一番派手な衣装として鎧を。


 最初は戦国武将の鎧を考えていて、一向一揆の一揆側に居ながら何らかの紆余曲折があって変装か何かで武将の鎧に身を包み、そして現代に帰って来る流れでした。ですがその紆余曲折をうんうん唸っても都合よく設定できません。一揆側ですからね。何か、協力してくれた人を置き去りにして戻って来るような話になりそうでした。


 そうこうしているうちに源平合戦の頃の鎧の方が肩とかカッコイイよね、とか思い始めて、最終的に今の話に帰着しました。

 いつか一向一揆題材で一話どこかに挿入したいと思うのですけどね。どんな話にしたらこの物語に相応しいものになるかはまだ考えついていません。




 源義経の活躍の場を奪うような主人公の活躍でしたが、そもそもの八艘跳びが眉唾過ぎて、どう描いたものかと正直困惑していました。普通の人間だったら描きにくいのです。

 そこで思いつきました。普通の人間でなければいいのです。どうもあの義経という人物、行動や暗躍の仕方が近年鼻を突くように感じていましたし、伝記通りの好人物ではなかったのかなあと。


 それで容赦なく活躍の場を奪い、その役目を主人公にとって変わらせました。これも禁じ手としていた項目です。ですが、そもそも八艘飛びはカッコ良くはありません。平氏の猛将平教経に襲われて逃げ回っているだけなのですから。これをどうしたらカッコ良くなるでしょう?

 このように色々と難癖をつけて、義経からムリヤリ主人公に道を譲ってもらったのでした。


 劇中では平家物語の作者が色々と都合に合わせて脚色して描いたとし、謎の武士の活躍を義経に与えて物語に取り込んだことにしました。それで扇の矢を壇之浦に持って来たのを主人公が閃く布石としたんですね。


 そうして最初から八艘飛びは義経ではなく主人公が使う予定にはしていました。しかしそれはもっと地味で、そもそもジャンプ力のない主人公は舳先の復元する時の力を利用して少し遠くに届く程度のものでした。1回目のジャンプの時の描写にその名残があります。


 しかしそれを8回とも? 同じ内容で毎回?

 敵陣に入ってからは味方の援護もないのに?

 まだ50万字手前でフィーナが存在しない段階の話です。

 演出面での課題は抱えたままでした。


 主人公が人智を超えた能力を使うのは極力全編を通して避けました。地道に努力して窮地を切り抜けるのが骨子でしたから。ただそれだけですとどうにもこの作品が地味で。話の方で盛り上げるにしても限界がありました。


 そこで、出自の説明の容易さからよく出現時に目撃される事の多かった主人公が、逆にその時代を去る時の現象も舞台装置として使えないかと思い立ちました。それが第20話傾城屋の最後の場面に繋がっています。人智を越えた能力はずっと第1話から持っていたんです。時空を越えているんですから。


 さらに、第2話には体が軽くなる描写があります。これを使って飛ぶようにジャンプができるなと。それを使えそうな話を探して、結果艘飛びに繋がりました。


 これで一気にこの話が豪華になりました。私がずっと自ら禁じ手としていた超常現象を用いた点を含めて、主人公の出し得る能力の全てを出し切った話になったと感じています。

 これで興ざめになる人が出ないことを祈ります。これはあくまでエンタメ作品。その最大の盛り上がりで持ちうる能力を最大限に主人公も作者も活かしました。




 今話では、様々な先祖の助け舟が再び生じます。第21話で走馬灯のように現れ、主人公を突き動かしたあの不思議現象です。それがこの第26話でも再び生じました。

 しかし主人公はその申し出を断ります。


 生きている人の力を借りるのはいいのです。自立と依存は別ですから、この場合のような困難な局面でどうしてもとなればむしろ借りるべき。しかしそこで亡くなった人の助けは拒否する必要がありました。それはオカルトのパワーです。それを借りてしまうのは、人間賛歌のテーマから外れるのです。


 考えた結果、第21話では敢えて助けてもらうことにしました。その当時まだ主人公が未熟でしたから。それでも最後にフィーナを加えたことでどうにか生きている人限定の体裁を保ったと考えています。

 今話は違います。彼女は自分の意志でその申し出を退け、生きている者のみで試練に挑みました。




 あと2日。あと2話で終わります!

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