029 第9話 1545年 青の洞門 完結です。
本エッセイは拙著「はじめさんが はじめから はじめる! ~タイムスリップ歴女コスプレイヤーはじめさん~」の最新話のネタバレを多分に含みます。エッセイの題もしくはエッセイ冒頭の表記話数をまずご確認いただき、ご自身の読書進捗度と照らし合わせて読み進めるか止めるかを予めご判断ください。
では、以下から新規部分です。どうぞ。
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はじめさんがはじめからはじめる、第9話 青の洞門 いかがでしたでしょうか?
この第9話で舞台となった青の洞門は、大分県に同名の名所があるんです。そこは禅海というお坊さんが一人で|(途中からは藩の援助を受けて)ノミと槌による手彫りで開通させたというとんでもない、青の洞門という名前のトンネルが実際にあるんです。
その工期たるや29年だそう! その期間をずっと手だけで掘り進めました。劇中と違って何人もの人出で当たってはいましたが、それでも手掘りを毎日続けるのは相当なご苦労があったろうと思います。
その青の洞門を題材に、すでに有名な「恩讐の彼方に」という物語があります。その劇中ではトンネル掘削に当たったお坊さんの過去に犯罪歴がある設定になっているのですが、史実では禅海上人はそのような境遇にはなく、さらに輪をかけて立派な方なのです。
そのため本作では、史実そのままの人物として描こうと決めて筆を執ったのですが、以下の紆余曲折を経て、またも史実とはかけ離れた人物へと変わってしまったのでした。
この話は、当初すごく長距離を行脚する全く違う話だったのです。円空上人と全国各地を回りながら、木彫を民草に施して徐々に悟りの境地に至る内容でした。
ところが、後で北米横断を思いついてそちらを読者さんの食いつきを考えて冒頭に持って行ったがために、長距離行脚が二番煎じになってしまいます。先に存在したこの話の方が割りを食う側となってしまいました。
それで最初はいっそ丸ごと削ろうかとも考えました。しかし北米が忍耐と助け合いの話なら、円空上人との旅は孤独と内面との対峙がテーマになっています。徒歩移動は一緒なんですが、得られる教訓がまるで違います。どうにか残したいと思いました。
さらに言えば、トンネルを掘るお坊さんの話が別にあり、それともお坊さん繋がりのネタ被りがありました。実はこれら以外にもさらにもう1つお坊さん話があるんです。お坊さん話が3つ。お坊さん好き過ぎかと。
たかだか20話程度で3つは多過ぎです。読者さんからの「またお坊さん?」の声が聞こえて来そうでした。
よってどんどんこの話の居場所がなくなって来ます。長距離行脚とトンネル掘り、それともう1つ。どれを削るかは明らかでした。
とにかくこの国ではお坊さんのエピソードには事欠きません。渡来した当時や隆盛を極めた時代、あるいは戦国武将と渡り合っていた時代。そのままではおれごん未来はお坊さん祭りを開催せねばならなくなります。
それどころか題名にも変更の圧力が。お坊さんがはじめからはじめる。主人公も敢えなく交代です。
そもそも円空上人との全国行脚ですが、北米大陸横断を成し遂げた主人公にはそれほど辛い旅にはならないと考えるようになりました。しかしこれが他の3作で先んじて書き上げていたものですから、削除するのが躊躇われて。今なら躊躇なく削りますが、結局そのまま3作とも書き上げてしまいました。
その後通しで読んで俯瞰したのです。やはりまた歩き回るのは無理があると。
熟考の結果、まだ発表していないもう1つの話をそのまま残し、長距離行脚とトンネル掘りを1つにまとめることにしました。
さらに石川県にかつて存在した、紙谷用水という商人の方が私財を投げ打って灌漑したエピソードとの被りも気になります。用水路作りとトンネル掘り、似てると言えば似ています。最終的にはこれも統合してこの第9話が生まれました。
そのため、第9話で出てくる禅海上人は、その商人と円空上人、そして禅海上人の3人が混ざった人物になっています。ややこしいですね。
よって最終的にお坊さん話は、3つの話を合体させたものと、後で出てくるものの合わせて2つ。全28話中の10%以下に抑えられましたから、まだ読者さんの理解は得られそうです。
できることならオリジナルそのままに書き綴りたかったですが。それだと小説の意味をなさないので、いい感じに薬味を追加できたかなあと考えています。
興味を持たれた方は是非、史実の方にこそ触れていただきたいと思います。題材にしたいずれもが大変好い話なので。禅海上人、円空上人。それと穴掘り繋がりで削除せざるを得なかった紙谷用水。いずれも素晴らしい、普通の一般人の歴史です。
この作品ではそう言った一般の人になるべくスポットを当ててゆきます。
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