027 第8話 1897年 日本住血吸虫症 を投稿しました。

 本エッセイは拙著「はじめさんが はじめから はじめる! ~タイムスリップ歴女コスプレイヤーはじめさん~」の最新話のネタバレを多分に含みます。エッセイの題もしくはエッセイ冒頭の表記話数をまずご確認いただき、ご自身の読書進捗度と照らし合わせて読み進めるか止めるかを予めご判断ください。

 では、以下から新規部分です。どうぞ。




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 はじめさんがはじめからはじめる、第8話 日本住血吸虫症。いかがでしたでしょうか?


 この第8話はこの処女作の良心です。

 エンターテインメント性に著しく欠くこの話を削除するのは、この作品を殺すも同義でした。それでも今年1月には放置、2月にはメスを握りまでしましたが、どうにか踏み止まり3月の完成を迎えました。

 しかしそのままでは国語の教科書にでも載りそうな代物です。わっせわっせエンタメ調味料を添加しましたが力及ばず、あのような内容に帰結しました。

 第11話に追いやった旧第3話と同様です。語りたい史実ほどエンターテインメントとはかけ離れています。それゆえに埋もれているとも言えますが、それを真に生かしきれないのは私の力量不足もあるでしょう。




 2020年現在、私達は新たに自然発生した世界的な疫病によって生命を脅かされ続けています。それはなにも今に始まったことではなく、遠い昔から繰り返されてきた疫病との闘いのひとつに過ぎません。


 この第8話で過去の日本に実在したひとつの疫病を示します。今のように高度な医療もない時代に人々がどうやってその疫病と闘ったのか、その記録を読み解き、簡単に紹介したいと思います。


 日本住血吸虫症。恐らくは聞いたこともない人の方が多いのではないでしょうか。2019年までは私もそのひとりでした。

 その病気とは、明治時代に日本の各所で問題となっていた寄生虫による被害です。川の水に手足を入れるだけで体内に侵入して来るその強力な寄生虫は、肝臓へ重度の障害を与え、罹患した人は例外なく本来よりも短い生涯を終えました。

 その未知の病気に対し立ち向かったのは医師のみならず、患者やその地域に住む一般人でした。それら人々が一丸となって病気の原因を特定し、予防し、原因を絶ち、治療法を確立しました。これは誇るべき一般の人々の壮絶な歴史です。


 私は基本、処女作の小説には他からの引用は全て異なる名詞に変更してあります。しかしこれだけは他の病気と事情が異なるので、年代や病名を一切変更せずに、実際のそのままの名前を劇中で用いました。さすがに人名は変えましたが。


 なぜ実名を用いたかと言いますと、この病気は現代の日本では完全に根絶されているからです。第二次世界大戦までという歴史の定義にも抵触しません。

 風邪は毎年発病する人が出ていますが、この病気には過去40年以上に亘って1人も発症しておらず。現在の日本には存在しない病気なのです。この根絶した事実には胸を張るべきと、それはきっと2020年を生きる私達を精神的に励ましてくれるはずと考えました。

 遺族の方や既往歴のある方はご存命とは思いますが、戦争教育などと同様に、その凄惨な病気との闘いをもっと広く知ってもらうべきと考え、今般小説に起こしました。


 しかし、やはりこれは私が考えたフィクションの物語。実際の史実と比べると見劣りが著しい私の物語です。これを機会に興味を持たれた方は是非、史実の方にこそ触れていただきたいです。私では十分に表現し尽くす事はできませんでした。真実の歴史の方にこそ、真実ゆえのより素晴らしい人間模様があります。


 私の処女作は終始史実に押されっぱなしでした。完封負けです。

 ただし成功したこともあります。ここをお読みいただいていることがその証。

 今の時点で、このエッセイでふんわりとした情報を、処女作の方では史実の概要をおよそ知っていただきました。さらにそのうち何割かの方々がこの後で添付したwikipediaを見て下さることでしょう。


 この令和の世において、そこまでできれば十分です。それこそがこの処女作の隠された真の目的。色々と枝葉を付け足しましたが、それも全てはこの第8話に耳目を集めるため。そんな歴史が比較的近い時代にあったのだと、知ってもらえるだけで十分です。

 もちろん小説を読んで楽しんでもらいたいとは思いました。しかしそれと同じくらい、この史実を知ってもらいたいとも思いました。

 これを読んで何か行動を起こしてもらわなくても構いません。ですが、もし宜しければ誰かにそんなものがあると伝えてさえいただければ。友達でも、親子でも。

 もはや知る人ぞ知るくらいにまで知名度は低下しています。人々が忘れずに伝えていくのがまず第一と考えます。


 以下が地方病 (日本住血吸虫症)のwikipediaのアドレスです。直接飛べるサイトはクリック、飛べないサイトはコピペして使ってください。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E7%97%85_(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BD%8F%E8%A1%80%E5%90%B8%E8%99%AB%E7%97%87)


 そこにその疾病の全てが記されてあります。

 お一人で編纂されたのでしょう、全編を通してすごく滑らかな文章で、あたかも短編小説のよう。エッセイ好きな方はもちろん、小説好きな方ならひとつのノンフィクション作品として読めると思います。


 検索の場合は必ず「地方病」を語句に用いてください。「日本住血吸虫症」での検索は、原因となった寄生虫の方に行ってしまいますのでご注意を。そちらでは医学的見地からの記載になっていまして、私の論旨とは異なります。




 最初に小説を書こうと考えたあの時、私は史実の内容をそのままにノンフィクションでエッセイとするのは何かが違うと思いました。当時は漠然とした考えでしたが、今にして思えばたぶん読者さんの注目度を考慮したのです。知れ渡ってこそ情報と言えます。調べた内容から起こしたエッセイでは弱いと、ドキュメンタリーよりも物語の方がより耳目を引きつけると思いました。

 この話はあくまで史実を知ってもらうためのきっかけと私は定義しています。興味を持たれた方は是非真実の史実に触れていただきたいです。


 これがそのまま今の疾病にミートするとは考えていません。全く違う種類の病気ですから。ですので、ここで学んでいただきたいのは考え方や姿勢です。その部分には現代を生きる私達も見習うべき部分があると思います。






 これより下は、並行して投稿中の処女作の方をお読みいただいた方向けの内容になっています。






 この第8話終了をもって、あらすじへの書き込み分は全て消化しました。意図して目に入らないように努力されていた方、大変お疲れ様でした。もうあらすじを見ていただいても大丈夫です。これ以降は一切どこにも情報開示がありませんので、本編と本エッセイで毎話更新をお待ちいただければと思います。|(あ、まだお試し読書で置いてある第14話の件がありました。それにももうすぐ追いつきます)




 最初期この話は、主人公と成人したお菊の二人にのみスポットライトが当たる構成でした。しかし春ごろにひとりの登場人物を足します。それは2020年を暗黒に陥れたあの疾病に、必死で食らいつく医療従事者の奮闘を報道番組で見て影響されたからでした。

 実際に日本住血吸虫症の史実でも、ほとんどの部分を医療従事者の献身で問題解決をして行きます。それを素人である主人公と、死して献体となったお菊の二人だけで立ち向かっては、物語に明らかな強引さが見て取れました。

 そこに医師を加えることによって、その過程においてはアカデミックな見知からも意見を出してもらい、またある程度史実にも沿った結末に導くなど多少の軌道修正もできました。


 ラストで急に医師が出てきてその人に後始末をお願いでは、主人公は匙を投げただけの存在になってしまいます。力及ばず撤退の歯がゆさを医師と共有するところに物語の一応の回答を示しました。


 私があの状況に入って行ったならどんな行動を取りえたのか。その答えのひとつを作中で述べました。そうした思考実験を経て、タイムトラベラーひとりではあの状況下で抜本的な改善をするのが不可能なのを思い知り、その当時の対策に当たられていた方々をよりリスペクトする結果になりました。




 カリフォルニア開拓団参加者と日本住血吸虫症とは、実は史実では何の繋がりもありません。ただ単に年代が近いだけです。それだけを理由に、それぞれ別の登場人物を宛がえば良かったのに、わざわざ同じ人物・お菊を立てる謎采配をします。それは後々に亘って私を苦しめました。


 開拓団に参加した少女は、史実ではカリフォルニアで亡くなります。この少女を生かすのが第7話最初の目的ではありました。

 そうやってまで生かした少女を、そのまま次話で日本住血吸虫症と闘わせたのは少し心残りがあります。架空のキャラクターとは言え、実在の人物をベースにした少女に数奇な人生を歩ませてしまいました。どうせ運命を変えてあげるなら、良い方向に変えてあげられれば良かったと今になって後悔しています。

 しかしこれら話に共通して出て来た少女の存在が、後にとある人物と主人公を繋ぎます。彼女の存在失くしてその人物との繋がりは十分に機能しなかったかもしれません。

 カリフォルニアで亡くなった少女のお墓と、日本住血吸虫症で亡くなり検体となった女性のお墓に、いつか手を合わせに行きたいものです。




 主人公達は天然ゴムと合成ゴムを勘違いしていました。それは無理もありません。片やそれらを見たことも聞いたこともない人達、片や製品は知っているものの原料を見たことのない一般人では。

 まだ天然ゴムですら一般にはそれほど普及していない時代です。世界初の合成樹脂もない時代。世界初の合成ゴムも研究の途上でした。

 天然ゴムですらそれを得るには多数の工程を必要とします。合成ゴムに至ってはさらに工程数は増えます。


 正直な話、劇中のようなやり方では一生かかっても何も得られません。それほどに複雑で難しいものなのです。専門の研究者による、それも様々やり尽くすほどの過程で偶然発見されるほどには難産でした。

 むしろそんな科学者にこそスポットを当てて物語を作りたいほどです。しかしそれは採用しません。第14話後書きでも言及しましたが、主人公が活躍するにはその科学者の功績を横取りするしか思いつかないので、本作品には採用したくてもできません。


 樹脂あるいはゴムを得る実験において、それまで何の成果もなかったのに奇跡的な混合比だけで道が拓くなど、少なくとも現実には存在しません。たぶん蒸留や適切な触媒、適切な工程、適切な条件などがない限りには実現不可能でしょう。あれは容器に付着していた何らかの物質が触媒として作用したものと捉えています。それを加味してもあの完成度。いかに当時の化学者が苦労されたかが偲ばれます。ですので、再現実験には恐らく……。


 ただ、奇跡は実際に起こりました。少なくともあの物語の次元では。その部分では、恐らく何の希望も持てずに失意の中で亡くなって行ったであろうモデルとなった人物が、劇中では少しでも晴れやかな気分で逝ってくれたのは私にとって救いとなりました。




 私は私の戦場へ。

 このセリフの場面は、寄〇獣で新一が母親の仇を討つべく旅立つ場面をイメージしていましたら、本作主人公の横顔から自然と出て来ました。それほどの決心が主人公に宿ったシーンと考えています。しかし彼ほどには主人公は強くありません。この話は彼女にとってとても辛い試練となりました。

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