019 第4話 1795年 北米大陸横断 を投稿し終えました。
本エッセイは拙著「はじめさんが はじめから はじめる! ~タイムスリップ歴女コスプレイヤーはじめさん~」の最新話のネタバレを多分に含みます。エッセイの題もしくはエッセイ冒頭の表記話数をまずご確認いただき、ご自身の読書進捗度と照らし合わせて読み進めるか止めるかを予めご判断ください。
では、以下から新規部分です。どうぞ。
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はじめさんがはじめからはじめる!第4話、北米大陸横断。いかがだったでしょうか?
日本国内の内乱はある程度自由に描いてもいい土壌が育っていると思うのですが、外国の民族衝突に触れても良いものかという葛藤がありました。それが最初に頭の中にあったので、ずいぶんとやんわりとした表現で描きました。それで直接対決なんかはついぞ出てきません。
書き上げた今となっては、主軸の逃避行がぶれず、この時の主人公に大規模戦闘はまだ酷な面もあったので、結果的にこれで良かったように感じています。
この話は、アメリカ先住民が住みかを追われて千キロ以上を強制移住させられた史実をモデルにしています。少し距離を盛り過ぎた感はありますが、この長大な距離と、様々な地域特有の要素を入れ込みたくて完全な北米大陸横断となりました。
そこまで配慮しても発表すべきかは悩んでいました。この国の
しかし世の中は急速に変わります。この世紀の疫病が蔓延する中で人種差別が浮き彫りとなり、それを過去に遡って訴求するような運動が巻き起こりました。かつて英雄とされた人物が、その銅像を引き倒される事態に至ったのです。アメリカの民意がキング牧師が存命だった当時にまで立ち返った瞬間でした。
今ならこの話を発表できる土壌がある。そう思いました。
昔のアメリカ先住民の方って、彼らの言葉で「雄々しい牛」とかをそのまま人名として付けていたみたいです。だから作中であんな中二病みたいなふりがなを打ってあるんですが、最初はノリノリで始めたものの、後で見返したら気恥ずかしくてですね。かと言って手直しするにも彼らの伝統を軽んじるようで。結局そのままに残しました。
意味合いも読みも私考案のものです。始めは実在の名前を調べて記載していたのですが、他民族の敷地に土足で入るような居心地の悪さを覚えました。それで人名から氏族名まで徹底して架空の集団としました。
せっかく架空の集団になったので、特徴を持たせるために突拍子もない設定をつけ足しました。それがバッファローと共に生活している設定です。たぶんバッファローを飼育して従えていた氏族なんて実在しないと思います。でもそのおかげで生き物の命に対する葛藤が主人公に生じました。結果オーライ、いいえ、結果グッジョブだと今では捉えています。
この話は意外と後の方で考案されたものです。
現代は、例えば学生でスポーツや趣味の取り組みをしていない人が居たとして、その人が達成感を得るのは難しい世の中だと思います。それでも百点を取るだとか、難関校に合格するだとか、ラジオ体操を皆勤するとかで、チャレンジはどこにでも十分転がっています。しかしながら、それをせずに漫然と過ごす人の方が多数ではないでしょうか。かく言う私自身もその多数から漏れません。
そんな私が生み出した本作の主人公も正にそんな中の一人で、彼女にはこの時空の旅を通して成功体験をさせたいと思いました。ですから、それを未体験のうちは主人公が事件に翻弄されながらグズグズ文句とか言い訳とかをします。それが当初はなんと8話くらいまで続く予定でした。これが実に読んでいくと鬱陶しく感じられまして。きっと読者さんだって離れていく一方です。
これはもっと早い話数で何らかの成長をお見せせねば。そう思い至った私は、この北米を旅する話を捻り出し、冒頭に挿入しました。
ゆえに、これ以降の話では多少なりとも成長した主人公を描かねばなりません。その後の話はそれよりも、もっと。この手直しは膨大な量に上りました。話の雰囲気や結末がガラッと変わってしまったものもあります。改訂をおよそ終えた今となっては良い思い出です。
3月末に書いた話ではありますが、体力面で苦労している主人公の描写に、アラフォー設定で描いていた執筆初期の名残がまだ見られます。意識がいまだに引っ張られていたんですね。しかしそれらは敢えて残しました。25歳運動苦手民ならこれくらいは苦労すると思います。それでも回復と言うか順応して行きましたでしょう? この辺りが早いのは若さだと思うのです。
それがアラフォー設定だと、慣れるどころか物語中ずっとそのままになるので、そのままでは冗長になると感じました。それはそれで描きようはありましたし面白いかもとも思うのですが、それは別の世界線の私に譲ります。
この話はロードムービー調です。意外と気に入っている話のひとつであり、悩みの種のひとつでもあります。地味な話なのに非常に長いのです。これは読者さんにとっても作品にとっても受難になります。それでバッサリ、15000字ほど削りました。およそ10日分、15時間くらいに相当します。決定稿はそれです。これを書いた今年3月の私となぐりあいの上で決めました。後悔はしていません。
そうまでしても50000字超も残りました。ダラダラ8話までを切り上げて促成栽培とした分、主人公にはこの話でしっかりと苦労してもらう必要があったからです。それにロードムービーなのにあまり削り過ぎては、出発したのにもう真ん中、それを過ぎたらもう到着となってしまいます。それでは旅の苦労も何もありません。
今でも削り過ぎたと思っていますが、ここは読者さんに寄り添うべく泣く泣く削りました。
この話でようやく下準備が整いました。物語はここからです。ここから動き始めます。
記録がきちんと残っていない歴史って、もっと自由に捉えていいと私は思うのです。なぜなら、それを知る人はもう生きていないんですから。歴史家が想像のままに、こうだったらいいなって妄想を全開でぶち上げたら宜しかろうと思うのです。
そして記録がきちんと残っている歴史でも、もしかしたら正しい内容が書かれていない可能性もあります。全くの捏造だったり、語りべの主観が入っていたり、不確かな誰かの又聞きの記録だったり。
勝てば官軍ですもの。負けた側はたいそうに負の印象操作をされたことでしょう。第三者の証言だけを集めた歴史書なるものがあればぜひ読んでみたいものです。
何が真実かは、写真や動画として残っている以降の歴史くらいしか信用できないと言ってしまっても過言でないのかもしれません。それすらも今のCG技術なら……。
もしそうであるなら、後世の私達はもっともっと歴史に対し自由に考えを巡らせても良いと思うのです。
それは暗殺されたはずが密かに大陸に渡り、他国の英雄に取って代わるなどの噴飯ものの妄言ではなくて。
生き延びてひっそりと暮らすでも、未開の地を開墾してその土地の名前として残ったでも、何でもいいと思います。希望こそ歴史を語るのに用いていいのではないかと。もちろん客観的な全ての証拠を含んだ上でですが。
何の証拠もないのに他国の尊厳に土足で踏み入ってはなりません。
私がこの物語で貫いているのは正にそれです。そうした考えに基づいて、そこには最大限配慮しつつ、物語として極端な味付けを施して読者さんに提供いたします。
これ以降も様々な時代の様々な出来事に介入……と言うほどには十分に活動できていないですね。出来事に触れて振り回されます。そんな川上はじめを末永く応援していただければ幸いです。
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