005 自宅待機の4月

 この4月から昨今の社会情勢に伴って自宅時間が増え、自ずと執筆時間も増えました。




 異世界ものを期待してここまで読まれていた方には、この場をお借りして謝罪いたします。現在執筆中の長編小説は歴史ものです。


 本当は作中で人の死を扱いたくはありませんでした。当初は匂わす程度か枠の外で亡くなるように配慮していたんですが、早々にそれでは物語が立ち行かなくなりました。

 歴史は、人々の生と死の記録です。一度歴史年表を読み上げながら推定される死亡者数をカウントしてみたら分かるかと思います。何それの乱でおよそ何千人、この地名の戦いでは何万、この時の政変で……。


 何か歴史上の出来事を描写しようとした際に、人の死を避けては通れませんでした。そもそも避けようとしたのは、物語の裾野を低年齢層まで広げたいと思ったからでした。できればR15指定を取り去りたいと。本当は中学生くらいにこそ読んで欲しい物語なのです。そのため可能な限りフリガナも頑張りました。


 しかし、それは叶わぬ願いでした。なぜなら、こんなにも人類の歴史は血で塗り固められています。これは争えない事実です。それをただ覆い隠す、あるいは描写のテクニックで躱すのは、本来の私のメッセージと違うと思い至りました。

 ゆえに理解の上で読んでもらえるR15を指定し、可能な限り殺し殺される時にお互いの立ち位置を鮮明にするのを心がけました。


 一方で、先の言及とは真逆になってしまいますが、人類の歴史は血の歴史、そう言い切ってしまうのは乱暴が過ぎます。暴力的なのは人間のほんの一面だけで、全てがそうとは言えません。人類は己が持つ野生の本能そのままに振る舞うのを良しとせず、その本能に抗って来たのだと思います。その成果が法律であり、それが裁判であると私は捉えています。


 ですから、昔の人が今よりも凶暴だったとは思いません。穏やかに、和やかに、朗らかに暮らしてもいたと思うのです。ただ今よりも生活に余裕がなくて、社会の仕組みが今ほどは発達していなかっただけではないかと。

 これは私が性善説を信じているからに他なりません。でも、そうとでも考えなければ、今の社会は成立しないのです。それが能わないのであれば、有史以来いまだに信用社会は成立せず、火を使うのも躊躇うくらいの生活を今もしていたと、もっともらしい説を唱えます。




 6月時点で全24話ありますが、こうやってたくさんの話数を見渡しますと、これとこれは入れ替えた方が良さそうという場面に何度も出くわすようになりました。この持ち物はこの時点では持っていないので削除など、矛盾のないように一生懸命編集して入れ替え、あるいは修正が面倒なので話の入れ替えを我慢しました。

 それを乗り越えて入れ替えたのに、いざ読むと以前の方が良かったように思えます。結局元に戻すこともありました。


 この話数入れ替えは本当に煩雑です。そこでデータをまとめようと思い、様々な各話の情報を表計算ソフトで一覧にしてみたのです。

 こうしてまとめてみると、主人公がこの段階ではどんな道具を持っているか、どんな技能を持っているか、誰と面識があるかなどが瞬時に分かります。


 これによって話数の入れ替えや新たな話の挿入が容易になったため、それまで面倒で我慢していた分をひっくるめて、積極的に入れ替えることが可能になりました。それでひとり話数入れ替え祭りを開催しました。具体的には、話と話の関連性は元より、話の長短や盛り上がりの有無を見極めて適切に再配置をしたのです。

 冒頭でいきなりの大トラブルに見舞われるはずだった話を後半の話数にしたり、この程度なら後半の主人公なら楽勝でしょうという話は前半に持って行きました。

 これは連載だったなら不可能なこと。書き溜めの良さを痛感しました。


 話の入れ替えは連載小説にはおそらく致命的でしょう。連載がいかに難しいかを真に理解しました。話の風呂敷を上手に広げ、そして綺麗にたたむ。これがどれだけ難しいかを。

 それができている諸先輩方を冗談抜きで尊敬します。私にはとうてい無理でした。


 プロットが大事というのはそこから来ているんでしょうね。私は結局プロットを一切作らなかったので今こうして苦労しています。でもそのプロットがなかったおかげで、半年も後に思いついた案で冒頭を修正することすらできました。題名すらこの半年間で何度も変わりましたし、主人公に至っては性格どころか性別すら変わったのですから!

 自由度があると言えば聞こえが良いですが、要は行き当たりばったりなのです。反省はしています。しかしくり返すでしょう。それがおれごん未来です。


 この表計算ソフトは、話数の入れ替えが稀になった今でもほぼ毎日何らか書き加えているので、これだけでも延べ数十時間は使っています。それでも、入れ替えの煩雑さや物語の進捗度の把握などを考えるとトータルで短時間化できていて、かつ時系列の矛盾抑制に効果が出ていると思います。




 2020年4月終了時点のデータを示します。

 完成話数          6→11話

 総話数             24話

 増加文字数       83,917文字

 延べ文字数      325,758文字

 延べ日数           135日

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