狭間にて


この世界には英雄というものが居るらしい。


遥か過去や、物語の中ではなくて、現在いまに。


オチガミを焼き払ったんだそうだ。

玄霊を下したんだそうだ。

世界にとっての脅威を、討ち滅ぼしたんだそうだ。


多くの人が救われたという。

たくさんの感謝が溢れたという。


それが、たった13年前の話。


私が生まれて、一年後の話。


玄霊は消えたけど、今だってまだまだ影響は色濃く残っている。

オチガミを祓う術は解ったけれど、それが出来るのは一握りだけ。


英雄がそんなに凄い人だったのなら、どうして完全に消し去ってくれなかったの。

きっちり跡形もなく消し去ってくれていたのなら、こんなことにはならなかった。

きっちり跡形もなく消し去ってくれていたのなら、こんな風には思わなかった。




玄霊が残っていたのなら、とってもとっても簡単に、私がこの世界を壊してしまえたのに なんて。

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