第12話 作戦
東京に戻った勘太郎。
徹底的に、ムヴェアリアとシャリフ・アブドラの動きを見張らせた。
その結果、シャリフ・アブドラは、富士山の樹海にログハウスを建てて、優雅な生活をしていることがわかった。
月に数日、ムヴェアリアのオーナー。
ムハンマド・ザッカルディもやって来た。
『瀧川さおりと田辺三佐男の殺人犯人は、本当に、シャリフ・アブドラで間違いないんですね。
瀧川さおりも田辺三佐男も殺人の証拠と凶器の裏付けは勘太郎が見つけた。
にも関わらず、いつになく慎重な勘太郎。
この日、勘太郎に客があった。
サウジアラビアの大使である。
『なるほど、外交対策だった
んですね。
で、警視正は何を待ってお
られたんでしょう。』
森川と鶴薗は、首をかしげていた。
サウジアラビア大使は勘太郎に。
『よくシャリフ・アブドラと
ムハンマド・ザッカルディ
を追い詰めてくれました。
本国から、検事を呼び寄せ
ましたので、お手伝いさせ
ていただきます。』
大使の横に座っていたのは、なんとサウジアラビア検事。
『ザウード・ビン・ムラドと
申します。
2人には、死刑相当という
判断が下っています。
できれば、お願いします。』
シャリフ・アブドラとムハンマド・ザッカルディを殺して遺体を引き渡せという依頼である。
『残念ですが、日本の法律上、
2人の射殺は難しく。
イスラム過激派の常套手段
を使わせようかと思ってい
ます。』
大使とザウード検事には、勘太郎の作戦が、理解できたようだった。
森川と鶴薗は、まだわかっていない。
勘太郎が待っていたのは、サウジアラビアの2人への殺害許可だったのだ。
数日後、ムハンマド・ザッカルディが、富士山樹海に向かったと報告を受けた勘太郎が下した命令に森川と鶴薗はどぎもを抜かれた。
戦争かと思うぐらい物々しい。
装甲車が100台と警察官3000人で、シャリフ・アブドラのログハウスを取り囲んだのである。
囲みの指令車には、サウジアラビア大使とザウード検事、森川と鶴薗はもちろんである。
画面には、ログハウスの中の様子が写し出されている。
高角度からだがドローン撮影していた。
『うーん。
さすがに。しぶとい。』
2日目に勘太郎が画面を睨み付けていた。
勘太郎と並んで、ザウード検事が同じような表情をしている。
『くるよ、ミスター。』
ザウード検事が、勘太郎に呟いた。
『総員、ログハウスに対し
て、耐閃光・耐振動防御
の姿勢を取れ。
来るぞ。』
10秒後。
ログハウスが大爆発して、辺りは閃光と振動と白煙と熱風にさらされた。
『危ない・・・
白煙と熱気が完全に治まる
までログハウス跡には近づ
くな。』
勘太郎の叫び声に、鑑識作業員や捜査員が立ち止まった。
『どうしたんです、先輩。
2人は、自爆したんでし
ょう。』
小林が質問した。
『相手は、イスラム過激派
やぞ。
自爆したと見せかけて、地
下シェルターとかに隠れて
近づいたやつにマシンガン
で攻撃する。
ぐらいのことはやりかね
んよ。』
熱気と白煙が完全に消えて、爽やかな山の空気に入れ替わった後。勘太郎が真っ先に、ログハウスの跡と近づいた。
案の定、地下シェルターは作っていたようで、入口らしいコンクリートの蓋があった。
全員に拳銃を構えさせて、自分も愛用のオートマグを構えてから、鑑識作業員に蓋を開けさせて、勘太郎が先頭で階段を下りた。
ザウード検事が、勘太郎の銃を見て驚いた。
警視庁の捜査官も驚いている。
拳銃には間違いなさそうだが、あまりに巨大。
『ミスター小林。
ミスター勘太郎のあの
銃は。』
ザウード検事の質問は当然であり。
森川と鶴薗も、小林の返答を待っていた。
『アメリカのS&W社製。
44オートマグです。』
戦車も破壊すると言われる化け物である。
『そんな化け物、日本人が扱
えるわけない。
犯人に対するこけおどしに
使うのか。』
森川は首をかしげた。
『使いますよ。
勘太郎先輩は。
数年前に、京都の山中で、
退役グリーンベレーと戦っ
て勝ってますよ。』
有名な事件である。
森川と鶴薗は、それで納得した。
ザウード検事も、その事件のことは知っていた。
『あの時は、世界中で、日本
には、とんでもないスーパ
ー捜査官がいると噂になっ
たんです。
それが、勘太郎だったので
すね。』
大使、我々は、世界最高ク
ラスのポリスに手伝っても
らっていました。』
その勘太郎をしても、日本の法律の前には、無力なこともあった。
『ザウード検事、本当に申し
訳ない。
本来なら、2人の遺体は、
顔を確認できる型で、お渡
ししたかったです。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます