16  ハッピーエンドののちにありがちな  


すべてが新品である

お互いの存在が目新しい

人の世の独立した若い単位として


姑が時には訪ねて来る

そこではもう、息子だった子はいないのだが

姑は新婚の部屋のなにかについて

なんらかの彼女の意見を言う


新妻にはその意見はいずれにしろ無用な批判だ


たいていは出産、という運びになり

喜びであり試練である子が授かる

姑が孫に夢中になる、なりふり構わずご機嫌をとり

幼児の一番のお気に入りになろうとする


若い母は押しのけられて途方にくれる


共稼ぎで子が一人か二人

嵐の日々である

姑が電話して来る

「どうしたの、電話もしてこないね」


妻であり母であり職業人であるうえに家の嫁



華燭の宴のあと、プリンスとプリンセスのキスの後

夢に描いた日々は泥にまみれる

お互いに強いられた交友から必然的に生じる

密かにのみ語られる日常の軋み


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