朱莉

※※※






 ーーあの時。


 楓はあそこで一体、何をしていたのだろうか……?

 一度抱いた疑念は、どんどん大きくなってゆく。



 廊下で女とイチャつく楓が付けていたネックレス。

 ーーそれには、ピンクの貝殻が付いていた。


 俯く楓をジッと見つめていると、楓の口元がゆっくりと動いてーー弧を、描いた。



(ーーっ! ……笑って……、る……っ?)



 私は、自分の身体から一気に血の気が引いてゆく気がした。

 カタカタと震え始めた身体。楓から、視線を逸らす事ができないーー



 口を元の形へと戻した楓は、片手で顔を覆ったままゆっくりと空を見上げた。

 私の瞳は、楓に合わせてゆっくりとその動きを追ってゆくーー


 ーー次の瞬間。


 指の隙間から、ギョロリと瞳だけを動かした楓が私を捉えた。



「……ひっ!」



 恐怖に、小さく溢れた私の声。


 そんな私を無表情で見つめていた楓はーー



 口元を歪ませると、ニタリと微笑んだのだったーー






ーーーー




ーーーーーー

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