朱莉

※※※






「うん……。ずっとね、しまったままだったんだけど……。今日、久しぶりに付けてみたの」



 そう言って、切なそうな顔をしてブレスレットを見つめる夢。



(何だろう……。この貝殻、どこかで見た気がする……。ーーあっ!)



「ーーねぇ、夢。それって……。もしかして、お揃いなんじゃない?」



 冷やかすつもりで、ニッコリと笑って尋ねてみる。



「……うん。涼くんとね……、お揃いなんだ。……あのキャンプの日に、私が作って涼くんにあげたの」


「…………え? 涼……、と?」



 ニッコリと微笑んで頷く夢を見て、私は見間違いかと思って再び口を開いた。



「……夢。それ、ちょっと見せて」



 そう言って夢の手首を持ち上げると、そこにぶら下がった貝殻を見つめる。


 それはやはり、見間違いなどではなくーー

 私が見たモノと、同じモノのように見える。



(何で、涼のものを……? 涼から……貰った? でも……。夢から貰ったものを、涼が人にあげるとは思えないし……)



「……ねぇ、夢。涼にあげたのって、いつ?」


「キャンプファイヤーが終わる頃だよ」



(それってつまり……。涼が死ぬ直前ってこと……だよね。……じゃあーー)



 涼以外の人間が持っているなんて、絶対にあり得ない。



(……ただ、似てる……だけ……? それとも……)



「……あっ! 楓くんが来たよ」



 夢の視線を辿ると、花束を持った楓が笑顔でこちらに近付いてくる姿が見える。



「ーーお待たせ。……ごめんね。暑い中待たせちゃって」


「ううん、大丈夫だよ。楓くんこそ、お花買いに行ってくれてありがとう」



 2人の、そんなやり取りが聞こえてくる。


 楓はそっと屋上に花束を手向たむけると、そのまま静かに手を合わせた。

 それにならうようしてその場に腰を屈めた私達は、そっと手を合わせると静かに瞼を閉じる。


 ーーでも。

 私の心臓はドクドクと鳴り響き、正直、それどころではなかった。


 夢の話と、自分が見たものを、一つずつゆっくりと思い返してみるーー



「3人になっちゃったね……」


「……そうだね」



 そんなことを言いながら、おもむろに立ち上がった夢と楓。

 私は小さく震える脚でゆっくりと立ち上がると、左隣にいる夢の方へと視線を移した。


 涙を流しながら、皆んなで一緒に付けた鈴を見つめて、切なげな顔をさせている夢。

 その更に奥にいる楓へと視線を移してみると、片手で顔を覆って俯いている。



(泣いて……る……?)



 私はそんな楓をジッと見つめながら、あの日見た出来事を、1人、静かに思い出していたーー






ーーーーーー




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