優雨【回想】
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
トイレから出ると朱莉が出てくるのも待たずに、急いで夢の待つテントへと向かう。
思ったよりもトイレが混んでいたので、時間がかかってしまった分、きっと夢を寂しがらせてしまったに違いない。
テントへと辿り着くと、入り口を
すると、小さな寝息を立てて眠っている夢がいる。
私は眠っている夢に近付くと、その場にしゃがんで綺麗な夢の寝顔を覗き込んだ。
チラリと視線を下へと移すと、ワンピースから覗く細い脚が目に留まる。
真っ白でとても綺麗なその脚を見て、私は思わずーー
触れてみたくなった。
(少し、だけなら……)
そう思った私は、夢の脚にそっと優しく触れてみる。
ツルツルとした肌は想像以上に気持ちが良くて、触れている手を
ーーするとその時。
微かに動いた夢に驚き、私は慌てて手を離した。
夢の顔をそっと伺うようにして覗いてみると、その瞼はきっちりと閉じられ起きる気配など全くない。
閉じられた瞼からはフサフサとした長い睫毛が生え揃い、眠っていても天使のような夢は、思わず感嘆の息が漏れ出る程にとても綺麗だった。
「夢……」
私は小さく声を漏らすと、眠っている夢にキスをした。
「ーー何やってるの? ……優雨」
ーーー!?
突然の背後からの声に驚き、私は急いで顔を上げると後ろを振り返った。
すると、そこには怪訝そうな顔をしながらテントへと入ってくる涼がいた。
「……っ! ……べ、別に」
焦った私は、そう答えると足早に涼の横を通り過ぎてそのままテントを出た。
(っ見られた……っ。涼に、見られた……!)
下唇をキュッと噛みしめると、まるでバレてしまった事への恐怖心を振り払うかのようにしてーー
私はただ、ずっと走り続けたのだった。
ーーーー
ーーーーーー
ーーーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます