優雨【回想】

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 トイレから出ると朱莉が出てくるのも待たずに、急いで夢の待つテントへと向かう。

 思ったよりもトイレが混んでいたので、時間がかかってしまった分、きっと夢を寂しがらせてしまったに違いない。


 テントへと辿り着くと、入り口をまくって中を覗いてみる。

 すると、小さな寝息を立てて眠っている夢がいる。


 私は眠っている夢に近付くと、その場にしゃがんで綺麗な夢の寝顔を覗き込んだ。

 チラリと視線を下へと移すと、ワンピースから覗く細い脚が目に留まる。


 真っ白でとても綺麗なその脚を見て、私は思わずーー

 触れてみたくなった。



(少し、だけなら……)



 そう思った私は、夢の脚にそっと優しく触れてみる。

 ツルツルとした肌は想像以上に気持ちが良くて、触れている手を太腿ふともも部分まで移動さてみる。


 ーーするとその時。

 微かに動いた夢に驚き、私は慌てて手を離した。


 夢の顔をそっと伺うようにして覗いてみると、その瞼はきっちりと閉じられ起きる気配など全くない。


 閉じられた瞼からはフサフサとした長い睫毛が生え揃い、眠っていても天使のような夢は、思わず感嘆の息が漏れ出る程にとても綺麗だった。



「夢……」



 私は小さく声を漏らすと、眠っている夢にキスをした。



「ーー何やってるの? ……優雨」




ーーー!?




 突然の背後からの声に驚き、私は急いで顔を上げると後ろを振り返った。

 すると、そこには怪訝そうな顔をしながらテントへと入ってくる涼がいた。



「……っ! ……べ、別に」



 焦った私は、そう答えると足早に涼の横を通り過ぎてそのままテントを出た。



(っ見られた……っ。涼に、見られた……!)



 下唇をキュッと噛みしめると、まるでバレてしまった事への恐怖心を振り払うかのようにしてーー


 私はただ、ずっと走り続けたのだった。





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