朱莉

※※※






「中学の頃から、夢に嫌がらせをしていたのは朱莉だね」


「……っ」


「やりすぎたね、朱莉」


「っ虫はやってないよ! ……あれは、私じゃない!」



 奏多の腕に掴まり、必死に訴える。



「もう、俺に話し掛けるなーー」


「っ……!」



 突然冷たい表情へと変わった奏多は、そう告げると私の手を払いのけた。



「お前は、やりすぎたんだよーー朱莉」



 私の耳元でそう冷たく囁いた奏多は、夢の鞄を机から取ると私を置いて教室を出て行った。





 私はーー


 私はただ、奏多の1番になりたかっただけだった。


 奏多がこの学校へ行くと聞いたから、私はここを受験した。

 夢が行くから、奏多はこの学校へ進学することを決めた事はわかっていた。


 それでもーー

 側にいれば、いつかは振り向いてもらえるかもしれない。そう、思ったから。


 でも、奏多はいつだって夢の事しか見ていなかった。

 私なんて、ただ夢と友達だったから奏多の近くにいれただけ。


 高校に入ると、以前にも増して夢と奏多の距離は近くなっていった。

 ーー私は、それが許せなかった。


 だって、夢は今でも涼の事が好きなのにーー



 2人が付き合い出したという噂を耳にした時、私は大きく絶望した。

 夢が憎くて憎くて、仕方がなかった。



(どうして、私から奏多を奪うのーー?)



 それからの私は、以前から度々していた夢への嫌がらせを毎日するようになった。


 だからーー罰があたったのかもしれない。


 自分のした行動のせいで、私は完全に奏多を失ってしまったのだからーー




 1人取り残された教室で、床へと崩れ落ちるとヘタリとその場に座り込む。


 床に付いた掌をキュッと握り締めると、まるで後悔と悲しみの念を爆発させるかのようにしてーー


 私は天井に向けて、思い切り大きな声を上げて泣き叫んだのだった。





ーーーー




ーーーーーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る