入ってしまった(15分間でカクヨムバトル)

春嵐

毛が

「あのさ」


「うん」


「非常に。非常に申し上げにくいのですが」


「なによ。しこたま懇ろにして、その上で言うことなわけ?」


「はい。ほんとうに。本当にもうしわけないのですが」


「はやく言いなさいよ」


「その。ええと。毛がですね」


「毛?」


「毛です。その。そこの、ええと」


「あ、ああ。はい。大事な部分の毛ですね。はい」


「その毛がですね。あの。ほんとに申し上げにくいのですが。その。中に」


「は?」


「すいません。あの。毛がですね。先端に挟まってしまいまして。んで、引き抜こうとは、引き抜こうとはしたんですよ。でも、その」


「そのまましたの?」


「だって。だって。ずるずるやられてしまったんですもの。取り出したくても抜けなかったんです。で、そのまま」


「え」


「あの。ごめんなさい。ええと。あなたの奥のほうに。毛が。置き去りに」


「あははは」


「たいへんもうしわけございません」


「なんかかき出そうとしてるなって思ってたのは、そのせいなのね。あははは」


「出てこなくて。正直に言うしか、ない、かなって。さすがに。その。毛を置き去りにしてしまったのは」


「別にいいけど」


「え?」


「毛が中に入っちゃったんでしょ。いいわよべつに」


「いいの?」


「一人でするときにときどき毛が巻き込まれますけど?」


「あ、そんなもんなんだ」


「よく教えてくださいました」


「はい。すいませんでした。今後気をつけます」


「ということで罰ゲームっ」


「えっ。やめてっ。毛は剃らないでっ」


「違うけど」


「え」


「毛を奥に押し込んでよ。第2ラウンド」


「第2ラウンド?」


「ほれ。次やるわよ次」

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