「美しかった空はここに?」
主船路1040
第1話 「美しかった空はここに?」
ワタシは憎かった。
光が……闇が……シロクロが私の存在を消し去ろうとすることが憎くて憎くて堪らなかった……
ワタシは人類に嫌われていた。
人々は口々に『醜い』『異常』だと罵詈雑言を吐き捨てる。無責任で暴力的で、ワタシを誰もちゃんと見てくれない……
だから、ワタシは世界を虚構で染め上げた。まるで壁にペンキでも塗るかのように
あの美しかった大空をこの手で人類のいう『見るに絶えない汚らしいと言われたワタシのアオ色』に
逞しくも儚い大地を『言うも穢らわしいと言われたワタシのミドリ色』に
人類の希望の象徴であるあの憎い光を『盲目と安眠を与えるワタシのシロ色』に
人類に安眠と安心を与えるあのでかい闇を『全てを飲み込もうとする凶暴なワタシのクロ色』に
ワタシは『正常』を『異常』にしてみせた
それでも人類は無駄な抵抗をした。
過去を忘れないようにと少しでも形に残そうと必死にしがみついていた
だからワタシは“少しの希望”として『一人一人に特別な色』を与える事にした。
彼らはきっと興奮しただろう。“世界とはこんなにも美しかったのか”という感動と”今まで人類はシロクロの世界だけで満足していたのか“という思い
それでも人類はワタシの色に染め切ることは出来なかった。あいつらの抵抗もあるけど、それ以上に変化を嫌い、常に色達と行き着く先へと鎮座する『無』がどうしようもない
あいつはワタシにはどうしようもない。
何者にも染め上げられないし、奴が虚構そのものだったから。
ワタシは、決して人類が嫌いなわけではない。
むしろ、慈愛に満ちている。
だからこそ、伝えた。
するとどうだろう?
人類は色をもつ世界を、異常とは思わずにこれこそが正常だと思い始めた。
それでいい。ワタシが正常で、あいつらが異常なのだ。だからもっとワタシを愛して?もっとワタシを欲して?ワタシをワタシでワタシにワタシだけにワタシだけをワタシ以外は見ないでヨ???
「美しかった空はここに?」 主船路1040 @allforakaban
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