第9話 飛竜と引き抜きと 3/3

 座って待っていたら、MAPの光点が左右の部屋に大量に入ったが、ウロウロしてから出て行った。覗き穴の数は合っていたらしい。


 それからしばらく待つとドアがノックされ、返事をしたらメイドさんがドアを開け、なんか派手な格好をした、端正な顔立ちをした男が入ってきた。ヴ〇ルサイユ的な?


 美男美女の掛け合わせから産まれれば、こうなるわな……。


「ウェスから聞いている。君が飛竜を倒してくれた、流れ者のスピナシアだね?」


 あのヒョロイ男の名前がぼろ布ウェス? ある意味似合ってるな。


「えぇ、一応そう言う事にしてあります」


 奴の顔を立てて、一応丁寧に喋ってみる。ってかリアルではこんな感じだ。


「かなり口が汚いと聞いていたが……。普通に喋れるんだな」


「えぇ。は。失礼ですがまだお名前を伺っておりません。どのような名前で?」


「この街に住んでて、直筆で手紙も書いたのに知られていないとは……。悲しいな」


「申し訳ありません。手紙は流し読みして、即座にしまっていしまいましたので。それにウェスさんが隣でゴチャゴチャうるさかったので、ある程度の情報は入ってきました。この街のお偉いさんが会いたがってる……と。それと口頭で一度挨拶するのが礼儀かと思いますが?」


 ない事も混ぜて少しだけ挑発をしてみたが、どう出るだろうか?


「そうか、それはすまなかった。あとで手紙を読んでる方の隣で騒ぐのを止めろと言い聞かせよう。それに……口が汚くないと毒を吐くのだな」


「育ちが悪い物でして……」


「メディアスだ。長いからそれでいい。忘れるんじゃないぞ!」


 少しだけ怒気を纏い、そんなことを言われた。一応人の上に立ちたいタイプか。


「こちらもスピナでいいですよ。こっちも本名が長いんで。あと早めに本題に入ってくれますか? 堅苦しい場は嫌いなので」


 メディアスは左目をヒクヒクさせながら、無理矢理笑顔を作っている。


「あぁ、そうだな。なら最初から本題に入ろう。我々の国にしょぞ――」


「断る。私はどこにも所属するつもりはない。言いたい事はそれだけでしょうか? なら自分は帰らせていただく」


「待て、本当にそれでいいのかな?」


「どういうつもりでしょうか?」


 俺が立ち上がったら、何か意味ありげな言葉をニヤニヤしながら吐いてきた。


「アラバスターで騒ぎを起こし、この国ビスマスに逃げ込み、安宿の女将と仲が良いそうではないか」


「こちらからしてみれば……だから? としか言えませんが、何を言いたいのでしょうか? 色々ばらすぞ、女将がどうなってもいいのか? と言いたいのでしょうか? 生憎権力や圧力にはには屈しないと既に決めていますので……。それに、メディアス様は自分の置かれてる立場をご理解してないのでしょうか?」


「どういうつもりだい?」


 ニヤニヤと自分が優位に立ったつもりでいるメディアスは、既に先手を取ったつもりでいるらしい。


「その一、面倒を避けたいからアラバスターから逃げただけ、対抗しようと思えばどうにでもできた。その二、別に逃げた訳じゃない。色々と面倒だから帝国から正規ルートで普通にこっちに入国した。その三、確かに仲は良いが、まだ恋仲に発展したわけじゃない。その四、お前は失うものが少ない奴の覚悟を甘く見ている。その五、この部屋の外に十数名が待機してようとも、俺はお前を殺して逃げだせる」


 軽く睨み返しながら、腕の端末を軽く操作する。もちろん装備を変えるためだ。


「はっ! 何を言うかと思えば……。君の装備はこちらで預かっているんだぞ? 今の君に何ができ――」


 そんな言葉と共に爆発音がし、部屋が軽く揺れ、もう一回大きな音だけが鳴った。


「あれほど装備をいじくるなと言っておいたんですが……。どうも興味が勝ったらしい。今ので確実に一人は死んだな」


「貴様! 何をした!」


「何もしてませんよ。しいて言うなら預けた装備を勝手にさわり、魔法が勝手に起動して自爆した……としか言えませんね」


 多分手榴弾をいじって、ピンを抜いたんだろうな。安全レバーを握らないでピンを抜くと、撃鉄が落ちる反動で勝手に安全レバーがポロって飛ぶんだよな……。二回鳴ったし、二回目は揺れがなかったし閃光手榴弾だろうな。


「人の物を勝手にいじくりまわすのがいけないんじゃないんですかね? ここに来た皆にしているんでしょうか?」


 そう言い終わると、廊下からフルプレートアーマーの奴等が部屋になだれ込んできた。


「おやおや、別に何もしていないのにこんなに沢山人が。ずいぶんと臆病なんですね」


「強がりもそこまでいけば立派だな。先ほどの余裕を見せてみろ! ほら早く見せてみろよ!」


 公爵がめんどくさい奴に成り下がり、ギャーギャー騒ぎ出したので、端末に出ている『はい』というボタンを押し、強化アーマーセットになった。


 ってかこっちが本性か? 貴族って難しいなぁ……。相手の弱みがないと戦えないんだから。


「望まれたから見せましたが……これでよろしいでしょうか? 公爵様?」


 装備を変えれば攻撃はできないが、それはゲームのシステム上できないだけだ。盾で防ぎつつ、拳で殴ればどうにでもなるし、一分経てば銃が使え、盾で殴れるし銃も撃てる。


「殺せ! そいつを殺すんだ!」


 面倒な事になったなー。公爵の言葉と共に、フルアーマーの奴等がこちらに走って、思い切り剣を振るうが、防御力は過去に実証済みだ。


 俺を思い切り剣で切った奴が剣を落とし、鎖付きのモーニングスターで殴ってきた奴は、鎧にへこみすらできずに驚いていた。


「はぁ……貴族ってクソめんどくせぇなぁー」


 とりあえず剣で切りかかって来た奴を殴り飛ばし、倒れたところを思い切り蹴り飛ばしておいた。


「とりあえず痛がっておけ」


 会話や、相手が狼狽うろたえていた時間、殴り飛ばしているうちに時間を稼ぎ、一分経ったら胸の辺りに斜めに刺さっている自動拳銃を抜き、スライドを引いて弾を装填してから、足元に寝転がっている奴の胴体を狙って二発撃つ。


 減音された音が室内に響き、鎧に穴が開き、鎧を着こんだ奴は苦痛の声を出しながらもがき、絨毯に赤い染みが広がった。


「おいおい、俺を殺すんじゃなかったのか? 棒立ちだったら殺せないだろう?」


 盾と銃をわざとらしく広げ、首も大げさに振ってみた


「まぁ、立ってるならそれでいい。俺はお前達を時間をかけて死ぬように攻撃するだけだ。そうそう、さっきの振動はこれな」


 俺は手榴弾を取って手の平の上にのせる。


「この輪っかを引っ張ると、この取ってが取れる。取れたら一呼吸おいて爆発する」


 そう言って、目の前で手榴弾を握ってからピンを抜く。


「でも、これじゃまだ爆発はしない」


 手のひらを開いて勝手にピンが飛んだのを確認し、慌てないで窓の方に投げて、ガラスをぶち破りながら外に捨て、爆発音と共に無事なガラスがビリビリと揺れている。


「なんだ、まだ棒立ちなのか? わざわざ待っててやったのに、爆発するから尻ごみか?」


 銃を持っている右側から二発づつ的がでかい胴体を狙って撃ち、公爵を無視し、まずは自分の周りにいる奴を戦闘不能にしていく。


 まぁ、囲まれて攻撃されたら、手榴弾を床に落とすだけだけどな。


 そしてマガジンを交換し、銃口を公爵の方に向ける。


「さて。交渉と行こうか? まずは軍に所属するという話だ。これはなしだ。どこの国にも所属するつもりはない。次に俺の拠点の安全確保。さっき安宿がどうのこうのとか言ってたな? 極力関わるな、何かあったらこの城をぶっこ――」


 公爵がニヤニヤしていたが、なんで笑っているかはわかる。さっきお茶をぶっかけた甲冑が音もたてずに近寄って来て、槍で突き刺してきたので体勢を崩してしまった。特にダメージがなかったので後ろを向いて両方の太ももを撃ち抜ぬいた。


 さっき剣で切られたの見ていたのだろうか? 槍なら抜けると思ったのか?


「何かあったらこの城をぶっ壊しにくるからな? さて、話を聞いてやった依頼料だ。もちろん料金は金貨一枚だ。ウェスから聞いてるだろ? 俺の依頼料は一律金貨一枚だってな。さて、俺は帰らせてもらうぞ?」


 ついでに公爵を守ってる奴の胴体を撃ち、他の奴等と同じように戦闘不能にしておいた。


「このくらいならポーションとか、回復魔法で多分治ると思うぞ? 処置が早ければな」


 それだけを言ってドアを開けて廊下を確認するが、騒ぎを聞きつけたメイドさん達ではなく、武装した集団が待機していた。とりあえず面倒くさいので、手榴弾のピンを抜いて足元に落とし、ドアを閉めて一歩横に逃げた。


「少しうるさいぞ?」


 そう公爵に言って直ぐにドアが吹き飛び、叫び声も聞こえた。んー自動拳銃じゃ面倒くさいが、一分待つのもどうかと思うしそのまま続けよう。


 ドアの目の前に陣取り、盾を床に突き立て入り口をふさぐようにアンカーを突き刺し、盾越しに数人戦闘不能にしておいた。


「あーめんどくせぇ。おいお前。無事だから攻撃するのは止めろって言え、今言えねぇなら廊下に投げ出すぞ?」


 俺は唸っている兵士を踏みつけながら部屋の隅で呆けてる公爵まで移動し、胸倉を掴んでドアまで引きずり、盾の上から廊下に放り投げた。


「メディアスは見ての通り無傷だ。これ以上負傷者を出したくなければ攻撃を止めろ。それとも、人質がいないからって本気で攻めてくるか? その場合は容赦はしない。今すぐ決めろ」


「殺せ! そいつを殺すんだ!」


「おーけーおーけー。かかってこいよ!」


 正直面倒くさいけど、このまま自動拳銃で対処していくか。盾を床ごとはがされる前に、盾の向こうに閃光手榴弾を投げ、爆発音がしたら盾を回収し廊下に出て、兵士を盾で吹き飛ばしながらホール脇の廊下の奥に進み、反転して囲まれないようにして銃を構える。


「死にたい奴から前に来い。あ、スマン。嘘ついたわ」


 一個目のフラググレネードが回復していたので、ピンを抜いて公爵に当たらない様に鎧の集団の中に投げ込み、盾を構えて兵士達が吹き飛ぶのを確認し、肉壁で死なずに前に吹き飛んで来た奴を銃で処理をする。


 しばらく盾の陰で膝をついて銃を撃っていたが、どんどん襲い掛かってくる奴が少なくなっている気がする。しかも廊下に鎧を着た奴がどんどん寝転がっているので邪魔だ。


「貴様! 逃げ切れると思っているのか!」


「あぁ、逃げ切れると思っている。だから廊下の奥に逃げ込んだんだよ! 後ろと横から来ないからな! このままだと私兵がいなくなるぞ? 村の救援に出し惜しみする奴が、怒りに任せて闇雲に兵を減らす馬鹿だったとはな……。カードを睨むなよ、手札は変わらないぞ?」


「なら宿屋の女将を襲いにいくまでだ! それが貴様の弱点だからな!」


「おいおい、本気で言ってんのか? 別に殺しに行ってもいいが、覚悟はしておけよ? さっきも言ったが、特に恋仲まで行ってないにせよ、かなりお世話になってる人だ。それなりの報復があると思えよ?」


「はん、言ってろ! おい、ウェス! 女将を殺してこい!」


「お断りします」


 そこにいるのかよ……。死角で見えなかったわ。


「貴様! 俺の言う事を聞けないというのか!」


 どうやらウェスは、多少損得勘定ができるらしい。感情で動かないだけマシだな。


「申し上げますが、こいつはあの飛竜を二撃で落としたのですよ? 敵に回したらどうなるか考えておられるのですか!? しかもこの騒動は、部下が勝手に動いてこうなっただけです。今兵を引けば、スピナも大人しく引き下がるでしょう! なぁ?」


 あ、これ俺にも言ってるの? まぁ落としどころとしてはいい気がするな。


「あぁ、問題ない。事の発端は俺の装備をいじくって死んだ馬鹿が原因で、部屋に兵士がなだれ込んできただけだからな」


「こう言っております。どうか、どうかご決断を!」


「今更引けるか! いいから殺してこい!」


 もういいや。殺そう。生かしておいても俺の知り合いに実害が出るだけだ。


「ウェス、死にたくないなら二十歩以上逃げろ。そいつを殺す」


 俺は回復したての手榴弾を公爵の足元に転がるように投げ、目の前の兵士をどんどん処理していく。


 そして爆発の後、寝転がっている兵士を無視して進むと、公爵が血と肉片まみれで倒れていただけだった。


 少しだけ目測を誤ったか? それともウェスが死体を盾にしたか?


「生きてるみたいだな。死ね」


 公爵を狙い撃とうとしたところで、ウェスが俺の右手に飛び込んできて、弾を数発受けながら俺の腕を明後日の方向に向けた。


「すまぬ。ここは引いてくれ……。お前のねぐらと女将には手を出さない、俺の命を差し出してでも主を止める。頼む。引いてくれ!」


 腕や肩に弾を受け、血まみれになりながらすごい眼力でそんな事を俺に言ってきた。


 こいつはこいつなりに忠誠心を、この馬鹿に持っているらしい。


「興がさめた……。殺しはしないが惨めな目に遭ってもらう。これは俺を脅した罰だと思えこのクソ野郎が!」


 俺は装備欄をいじくりつつウェスに謎の注射器を刺し、薬液を注入してホールを通って外に出た。


「城壁の上の見張り! 死にたくなければ門から離れるんだな!」


 それだけを言って跳ね橋を渡り、門の外に出てから装備変更ボタンを押し、総重量が重すぎてネタ武器と化してる、ゲームオリジナル銃を取り出す。


 携行型重機関銃、ウォールブレイカーだ。


 この銃は、五十口径の弾を軽機関銃のように打ち出すという馬鹿みたいな銃だ。射撃感覚も一秒に五発と圧倒的に遅く、弾も箱型の弾倉なのに五十発しか入らないし、立ちながら撃つと、二発目はどこに飛ぶかわからないイカレた銃だ。


 そして弾数は50/52。弾の回復は遅いが、マガジンを一回変えるだけの予備は存在しているし、見た目が軽機関銃をそのまま大きくした感じになっている。


 俺はそのまま門から五十メートルほど離れ、ウォールブレイカーの下に杭がバイポットのように出ているので、地面に突き刺すようにして杭の突起を踏みつけてから寝転がり、門に向かって引き金を引いた。


 物凄い爆音が一秒間に五発響き、門を木屑に変え、門周辺の石レンガも粉々に砕け散り、遮蔽物に当たってもまだ力を失っていない弾が、そのまま跳ね橋の周りの石レンガも同じように砕いていった。


「な、なんだ! 何が起こってやがる!」


 弾をすべて打ち切る頃には、門のあった塀の出入り口が少し古いコントの様に崩れ、道から城の中が丸見えの状態になった。跳ね橋を支えている鎖も千切れているので、閉める事もできなくなっている。


 そして別に用意しておいたACOGだけを付けたMG4軽機関銃を取り出し、これもバイポットを立ててから寝転がって、石レンガをちまちま崩すようにしてフルオートで数発ずつ撃ち、門を完全に崩落させて跳ね橋の奥にあるホールのシャンデリアも狙って床に叩き落す。


 そして軽機関銃を百発撃ち終わらせ、ウォールブレイカーの弾倉を交換し、二階や盾を狙って壁を歯抜け状態にした。


 立ち上がって装備を礼装に変え、地面に転がしておいた銃が消えてることを確認してから、歩いて宿屋まで戻った。


 多分ウォールブレイカーや軽機関銃での死者はいないと思いたいし、預けた武器も消えてるだろう。



「ただいま戻りました」


「おかえりー。なんかすごい音が聞こえてたけど、あんたかい?」


 夕方の仕込みをしていたグリチネさんがそんな事を言ってきた。


「聞かないでくれ……。今はその事でものすごくイラついている」


「なら落ち着いたら事の詳細をよろしく」


「あぁ、夜にでも客がいなくなったら話す。すまないがイライラが収まらねぇ。少し寝て頭を冷やす。何かあったら大声で叫んでくれ」


「……って事は、私にも関係あるって事ね?」


「あぁ、それを含めて話すさ」


 俺は途中で話を切り上げ、部屋に戻った。



 そして夜になり、風呂にもいかず、夕食も食べずに一階が静かになった頃を狙い部屋を出た。


「お? 下りてきたわね。夕食は残してあるけど、食べるかい?」


「話し終わったらな」


 そして今日の午後にあった事を全て話し、もしかしたら迷惑をかけるかもしれないから、出て行く事も伝えた。


「あーそれね。夕方の噂話で聞いたわ。なんか城がすごい事になってるって聞いたけど、そこまでしたの? 相変わらず馬鹿みたいな魔法使いねー」


 グリチネさんは煙草を灰皿に押し付け、ほほを人差し指で掻きながら目の前に冷めた夕食を出してきた。


「別に迷惑だと思っちゃいないよ。死ぬときは死ぬんだ。気にしないでずっと泊まってな。私は気にしないよ。ただ、私が殺されたら敵を討つってのが条件だけどね」


 グリチネさんはカップにお茶を注いでくれ、自分のカップにも注いでいた。


「けど、私とあんたが恋仲に思われてたとはねぇ……。別に悪い気はしないね。お互い混ざり物だし、周りを気にしないでも済むし」


 俺はその一言でお茶を噴き出した。


「あら? あんたは私の事嫌なの?」


「いや、好き……だけどよ……」


 勇気を振り絞ってただそれだけを言った。


「ふーん。宿泊客がいない夜になら襲いに来てもいいわよ?」


「おいおい、あんまりはしたない事を言わないでくれ」


「一応言っておかないと強姦になっちゃうでしょ? それとも私が襲いに行った方が良い?」


 グリチネさんは少し恥ずかしそうにそう言うと、煙草をくわえ火をつけていた。


「いや、それは遠慮する……。なら俺が襲いに行くわ。男だし」


「そうしてちょうだい。あー、けど。シーツの洗濯とかを考えると、私から行った方がマシなのかしら? どうせ色々と汚れるんだし、一応お客様のシーツは洗わないといけないし……」


「こういう時くらい仕事抜きで話してくれ。私室を見られたくないって言うなら別だけどな」


「……そうね。こんな顔に傷のある女で良ければ襲いに来て頂戴」


 グリチネさんはこちらを見ずに、恥ずかしそうに煙草の煙を吐いていた。


「あぁ、なら今夜早速お邪魔するわ。飯食って風呂入ってくる」


「残念。この時間はもう風呂は開いてないよ」


「くそ、客がいなくなるまで待ちすぎた……」


「別にいいじゃない。部屋に桶持って行って拭けば。私が拭いてあげるわよ? 隅から隅まで。その代り、私も拭いてよね」


「はずかしいな……」


「私もよ……」


 俺はカップのお茶を飲み、グリチネさんは煙草の煙を吐いている。


 しばらく気まずい沈黙が流れた。


「夕食、冷めてるけど食べちゃってよ。食器が片付かない」


「あぁ、すまねぇ……」


 お互い意識しすぎて少しぎこちなくなっているが、明日の朝には今朝と同じ感じか、もっと親しくなっている事を祈るしかないな。


 そう思いつつ俺は冷めきった夕食を食べた。


「あ、そういえば前に襲う勇気はないって言ってなかったっけ?」


 その言葉に、冷めきった夕食を軽く噴き出した。





――銃器関係に詳しくない人の為の緩い武器説明――


気になったら自分で調べて下さい。


ダネルNTW-20:より遠くを狙えるように考えられた狙撃銃。作った国が平原が多く遮蔽物もあまりないので、見つからない遠くから狙おうって理由から作られた。


ウォールブレイカー:ゲームオリジナル武器。重機関銃を携行型にした狂ってる発想。作者的に元ネタは存在している。

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