物語の始まり 眠り姫
仲仁へび(旧:離久)
01
ずっとずっと長い時間、眠りについていた。
私が最後に起きていた時から、どれだけ時間が経ったのか分からない。
きっともうこの世界では、私の友人や家族は生きていないだろう。
世界救世の眠り姫。
この世界のこの時代では、そんなおとぎ話がはやっているらしい。
世界が危機に陥った時、その世界を救うために一人の姫が眠りについた。
眠りにつくとき、この世界はが夢の世界だったという事が分かった。
だから、何もしなければ誰かの目覚めによって消失する運命にあった。
けれど、私が眠りにつくことによって、誰かの目覚めは阻止された。
そして、大勢が生きるこの世界は、今も救われている。
そんな私が目覚めたのは、他に眠り姫の候補となる人間があらわれたからだ。
一人の人間が眠れる時間には限りがある。
だから、世界を存続させるために、次は他の人に眠ってもらわなければならない。
それも早急に。
なぜなら、期限がある。
時間がないのだ。
これから一年間。
その間に、その候補の人間を見つけて眠りについてもらわなければ、この世界は夢の世界として消えてしまうだろう。
私は何とかして、その人間に、様々な試練を課して絶望してもらわなければならない。
この世界に未練がなくなれば、眠りについてくれるだろうから。
この世界に絶望した人間がこの世界を守る。
眠り姫の責務は、なんという皮肉なものだろう。
けれど、未練さえなければ、これから見つける誰かは、一千年にも至る長い長い眠りの責務を喜んでくれるはず。
夢の世界は優しい。
現実では与えられなかった幸福を与えてくれる。
会えない人にも会える、生きたいところにもいける。できない事なんてない。
私は、次の眠り姫を探すため、世界のどこでも見渡せる水晶を覗き込んだ。
そこに映ったのは……。
「「「お誕生日おめでとう」」」
大勢の人たちに囲まれて幸せそうに笑う一人の少女。
私は&した。
きっとこの幸せな彼女なら、必ずこの世界に絶望してくれる。
私は寝起きのけだるい体で思考を巡らせる。
さて、この少女の回りにいる友人を、家族を、想い人をどうやってむごたらしく消し去ってみせようか、と。
物語の始まり 眠り姫 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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