怨⒋ XXXXXX目XXXXXXX
高木とのセックスは靜子を充分に満足させた。
相性も良いし強制や義務感に囚われることもない。本能のまま絡み合う身体の熱は、冷めることなく長い時間続いて、絶頂を迎えた後も互いの肉体を貪り合い弄んだ。
高木と出逢う前の靜子は、形式的なセックスに嫌気がさしていた。
ことが終わると、男は決まって満足気に天を仰いで煙草をふかす。
その度に、靜子は取り残された気分になって虚な目で男を眺めた。
彼氏がいても、寂しさを紛らわすだけの自慰行為が減る訳ではなく、むしろ回数は増えていた。
そんな靜子の空虚な心を埋めてくれたのが、専属マネージャーの高木だった。
サディスティックな高木とのセックスに靜子は溺れた。
欲していた欲望を満たしてくれる高木の前では、素直になれたし自分を曝け出せた。
高木はいつも、靜子の唇を軽く噛んだ。
勿論、程度は心得ている。
靜子に覆い被さる高木は、全体重をかけて彼女の身体の自由を奪い、時に激しく、時に優しく、たっぷり時間をかけて愛撫し続けた。
オーガズムに達する靜子の姿は美しかった。
白い喉をヒクヒクさせて、小刻みに震える身体。
高木がきつく抱きとめると、靜子はその顔や髪や胸に爪を立て、狂おしく続く世界を楽しんだ。
16階のマンションのベッドルーム。
レースのカーテン越しに浮かぶ高木の表情は、月明かりに照らされて愛おしく、いやらしい。
靜子は、イク寸前の高木の顔が大好きだった。
厚い唇。ツンと尖った高い鼻。長いまつげ。頼もしい肉体、脈うつ鼓動を独り占めにしている。
支配欲に浸りながら、こうしてふたりで絶頂に達して互いの温もりを感じる。
幸せだった。
靜子は高木の顔を指で撫でた。
髪をクシャクシャにしながら、高木の背中にキスをして、額から鼻筋、そして瞼に指をあてがう。
道標を刻む。
男の身体に印される、赤い色をした路。
存在しているのだ。自分はこの場に生きている。
靜子は興奮した。
高木の耳を噛んで引き千切る。
柔らかい瞼に指をめり込ませる。
ゼリー状の水晶体が飛び散る。
ぬぶぬぶと音を立てながら潰れてゆく眼球。
鶏皮に似た瞼を壁に投げ棄てると、大きく窪んだ眼底から蛆虫が湧いた。
数万匹の蛆虫は、高木の顔を埋め尽くして靜子の腕に這い上がる。
靜子は悲鳴をあげた。
月明かりの中、レースのカーテンの隙間に影が見えた。
痩せた頬。
長く濡れた黒髪の女。
その女の瞳からも、蛆虫が零れ落ちていた。
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