第四章 泥濘にて

 自らの内を知ろうとすることは、泥濘の中に一粒の砂を見つけるに似る。我々は、我々が思い描くものより大層複雑に構成されている。それを知る者は、「私は自分がわかる」と言えるはずもなかろう。…

 私はあらゆる多面体であり、また液体であり、時に偽装工作の末の小洒落た固体である。「自分」という存在は、絶えず変貌し、その内面の核を覆い隠し続ける。その都度、私は新しい視点と手法でその変装を暴かねばならない。終わりのなき智慧の闘争の渦は、確固たる結果をやがて齎すだろうか?

 否、と私は答える。

 私が、生き絶えるその瞬間まで、私は変わり続ける。そして、常にその中核を覆い隠し続けるだろう。触れたと思えば離れ、離れたと思えば近づき、光明と暗転を繰り返しながら、私は問い続けるだろう。

 私は私の全てを知ることはない。精々、半分を知ることもできるだろうか?数えきれぬ多面体の、その偽装の表層すら、何面知ることができよう?…

 されど、私は問い続ける。そこに愉悦を見出し、生きる意味を見出す故に。

 「問う」ことこそ生存の価値であり、「答える」ことが生存の最終目的ではない。

 息も絶え絶えの生活の刹那、問い続けよ。

 それを辞めた瞬間、私に生きている意味など、何もない。

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