こわれた人形
OZさん
第1話
あなたは、お気に入りの人形をもっていませんでしたか。そう聞かれるとほとんどの人が、
「ああ、そういえばそんな人形があったっけ。」
と、思いあたるはずです。そして、ある不思議なうしろめたさを覚えながら、
「あの人形はどこへいってしまったんだろう。」
と、思い出すのではないでしょうか。
その人形は、きっとガラスのケースにしまわれた、豪華な飾り物ではなかったはずです。ちょっとよごれてすりきれてはいても、遊ぶときも寝るときもいつも一緒で、ほかの誰とよりも長い時間を過ごした、そんな人形だったのではないでしょうか。そして、そんな人形だからこそ、いつかみるかげもなくボロボロになって、いつの間にか忘れ去られてしまったのでしょう。
でも、そんな人形たちのことを思い出す時、なぜ不思議なうしろめたさを覚えなければならないのでしょうか。それは、みなさんが無意識に、人形には心があると思っているからなのです。そして、大事な友達を、こんなにも長い間すっかり忘れてしまっていたことを、恥ずかしく思っているからなのです。
では、もし人形たちに本当に心があったとしたら、人形たちはどう思ったでしょうか。
ついこのあいだまで一緒に遊んでくれた友達から、急に見捨てられたことに驚き戸惑い、どんどん離れていってしまう心を、どうすることもできない自分を嘆いたことでしょう。
でも、なによりも、人形達はとても悲しかったと思います。愛する者を失った悲しみに、心が引き裂かれそうだったことでしょう。いえ、本当に、心が引き裂かれてしまったのではないでしょうか。
そんな人形達は、どうなってしまったのでしょうか。そんな人形達は、どこへ行ってしまったのでしょうか。
僕がしたいと思っているのは、そんなお話です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます