最終話 おっさん、管理者になる

 証人のスコットとディーンと証拠のICレコーダーを持って、領都に帰る日が近づいている。


 バルバラは証人の数には入れてない。

 土壇場で裏切る可能性があるからだ。


 代官屋敷に伯爵の使いを名乗る者が面会を申し込んできた。

 何だろう?

 俺は会う事にした。


 男を一目見て分かったこいつは刺客だ。


「遠い所までご苦労様」

「死ね」


 いいね分かりやすくって。

 男は短刀を抜いて襲い掛かってきた。

 俺はトイレのすっぽんをアイテムボックスから取り出すとそれで殴った。


 今、レベルは541もある。

 その力で叩かれて男は這いつくばった。


「お前いくらで仕事を受けた?」

「金貨10枚だ」

「なら俺は倍の金貨20枚出そう。ブレッドに俺を仕留めたと報告に行った時に切りつけてやれ」

「仕方ない。あんたには敵いそうもないから、寝返るとしよう」


 刺客の男はブレッドを倒す為に領都に帰って行った。

 こんな手で上手くいくとは思ってないが、嫌がらせぐらいにはなるだろう。


 そして。

 なんと女達が大挙して押し掛けてきた。

 聞けばブレッドの女だったが、ブレッドは顔を斬られ醜くなったという。

 不快感を表に出した女は容赦なく折檻されるのだとか。

 女達は敵の敵は味方という理論で俺を頼ってきたらしい。


 全く、器の小さい男はこれだから。

 俺は女達の為に婚活パーティを開いてやる事にした。

 だってブレッドの元女を信用する訳にはいかない。


 そして、婚活パーティで。


「私、決めたわ。ブレッドを裏切る」


 そうバルバラが言った。

 今度の宣言は信用できそうだ。


「ジャック! お前は許さん!」


 ブレッドが30人ぐらいの私兵と共に、婚活パーティに殴りこんで来た。

 おーおー、ブレッドの奴、ゴブリンみたいな面相になって。

 この傷だとエリクサーでもないと治らない。

 刺客は良い仕事をしたな。


「きゃー!」

「助けて!」


「女どもを黙らせろ」


 私兵が剣を抜いた。

 俺はアイテムボックスからメイスを出すと私兵を手あたり次第に叩きまくった。


「何で? お前は何だ?」

「良いから、眠っておけよ」


 俺はメイスをトイレのすっぽんに持ち替えてブレッドを殴った。

 それからブレッドの裁判は滞りなく済んだ。

 殴りこんで来たからは、もはや証拠は要らない。

 そうそう、例の側近はブレッドの手の者だった。


 ブレッドの全ての悪事を明るみにすると、ディランディ伯爵は泣く泣く処刑の書類にサインした。


「やっと不具合が直ったわ」


 管理者から連絡が来た。


「ジャックはどうなる?」

「あなたの代わりに体に入って引き継ぐわ」

「じゃ、元通りって訳だ」

「そうもいかないのよね」


「何だ。何かあるのか?」

「一度消えた因果律を元に戻すのは、更に上位の存在にならないといけないの」


「つまりどういう事だ?」

「管理者になるって事よ」


「なんだそんな事か。就職したって事だろ」

「永遠に任務に囚われるのよ」


「暇な時は自由に過ごせるんだろ」

「ええ」


「なら、すっぱりやってくれ」


 俺の意識が暗転して俺は目を覚ました。

 鏡を見るとジャックの顔でなく見慣れたおっさんの顔。

 ドアを開けるとアルマ達が働いていた。

 ここはムニ商会らしい。


「アルマ、一つ頼んでいいか」

「ええよ。何でも言って」


 そして、俺はムニ商会のキャラバンを率いて、ディランディの領都に辿り着いた。

 ジャックとアポを取る。


「よう、久しぶり。と言っても覚えてないだろうな」

「よく覚えてますよ」


「覚えてたのか。それなら話は早い。プリンターのインクと紙が必要だろう。持って来てやったぞ」

「ありがとうございます」


「機材とか色んな注文はムニ商会が受ける」

「何でこんなに良くしてくれるんですか」

「何でだろうな。お前とは兄弟みたいなものだからかな」

「そうですか。兄上、これからもよろしく」

「おう、よろしくな」


 肩の荷が全て降りたような気がする。

 色んな世界には自由に行けるらしいから、これからは任務の間に物を売って歩こう。

 行商も慣れれば楽しいものだ。

 飽きたら別の趣味を見つければいいや

――――――――――――――――――――――――

あとがき


 1000話を目指しましたが、力尽きました。


 自分としては第1部の1章が一番面白くて、それからはグレードダウンしていったような気がします。

 何ですかね、名作はグレードダウンしないのですよ。

 書籍化されたので好きな作品のいくつかは、巻が進む毎にグレードダウンして、読むのを途中で辞めてしまったのがあります。


 この作品はそれよりもグレードダウンが激しい。

 書籍化された作家さんの力は私にはないと思っているので、仕方ないかなと思わないでもありませんが、もうちょっと何とかならないかと。

 悔しいのでリメイクという形でリベンジしたいです。


 今まで読んで頂いてありがとうございます。

 全ての読者様に感謝を奉げたいと思います。

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