第79話 おっさん、手紙を受け取る

 なんとマーロウから手紙が来た。

 奴はクラン・ラベレンから賞金を懸けられて裏の賞金首になったようだ。

 俺に助けを求めて来た。


 言わんこっちゃない。

 派手に動いているからそうなる。


 マーロウとの会談の場所へ急ぐ。

 そこはなんと教会だった。


「ロウは居るか?」


 俺は教会のシスターに話し掛けた。

 ロウはマーロウの偽名だ。


「あなたがムニさんですか?」

「そうだ」

「では、ご案内致します」


 懺悔室に案内されて俺が入ると格子の向こう側に人の気配がした。


「マーロウ、神父の真似事か?」

「仕方なくだよ。神父に化けるしか変装の方法が思いつかなかったんだ」


「伝言がある。スラムの子供達が会いたがっているぞ」

「何であんたがそれを知っている?」

「ずいぶん前に頼まれた。音信不通は心配して当然だろう」


「こんな事態になっちゃ帰れない。手紙を出すのさえ危険なんだ」


 仕方ないな手を貸してやるとするか。


「髪染めと目の色を変えるカラーコンタクトを置いていく。これで変装しろ。後は綿を口に入れるぐらいか」

「あんた、変わった道具を持っているな」

「まあな。転移の魔法陣を使わせてやる。一回、スラムの子供達の所へ帰れ」


「恩に着る」

「お前に懸かった賞金はまた後で考えよう」


 変装したマーロウを連れてスラムの子供達を訪ねる。


「わぁ、マーロウ兄ちゃんだ。兄ちゃんが帰ってきた。みんなに報せないと」


 子供が駆け出して行く。

 しばらくして数人の子供達を引き連れて帰って来た。


「ほんとだ。兄ちゃんだ」

「酷いや、連絡も寄越さずに」

「おかえり」

「兄ちゃん、少し太った?」


「綿を口から出して良いぞ」

「ふう、これで喋り易いぜ。みんな元気だったか。心配をかけたな」

「そうだよ、兄ちゃん。手紙の一つぐらい寄越せよ」


「悪い、仕送り出来る状況じゃなくってな。この通りだ謝る」


 マーロウは頭を下げた。

 それから子供達とマーロウは長い時間、話をした。


「大変や。本体がさらわれた」


 アシスタントのアルマがそう言って慌てた様子を見せる。


「場所はどこだ?」

「今、移動中や」


 移動中は不味いな。

 行き着く先を特定しないと。

 焦りながらしばらく、アシスタントのアルマに情報に耳を傾ける。


「今、ダンジョンの中や」

「ダンジョンが好きな奴らだな。証拠が残らないという利点があるのは認めるが」


「それが支配下でないダンジョンや」

「厄介だな」


「ムニさんには世話になった。俺が囮になるよ」

「マーロウ、お前は何で危険な所にそう首を突っ込むんだ」

「冒険者だからさ。子供の前で恰好つけたいってのもあるけど、それだけじゃない」

「理由があるのか」


 考え無しだと思ったんだが。


「俺の首に賞金を懸けている奴らなんだろう。やつらに一泡吹かせたい。攻撃は最大の防御だ」

「よし、そこまで言うのなら、やろう」


 スクーターに乗りアルマが監禁されているダンジョンに急ぐ。

 無事でいてくれよ。


 スクーターのエンジンが焼き付いて乗り潰したりしたが、問題なくダンジョンに着いた。


「さて作戦を立てないと」

「何でも言ってくれ」


 とマーロウ。


「俺が正面から行くのは愚策だな」

「囮になってやつらを引き離そうか」

「そうしてくれ。第1段階はそれで良いだろう」


「次は私達の出番よね」

「主役登場」


「エリナとモニカは最初マーロウと一緒に行ってわざと捕まるんだ」

「なるほど、敵の懐に潜り込むって訳ね」

「敵地潜入、攪乱埋伏」


「そして、最後はアシスタントのアルマだ。捕まったのは影武者で、本当のアルマは私だからと言って、人質を交換するんだ」

「分かった、頑張るわ」


「後は捕まった三人が暴れて、俺が突入して終わりだ」


 こんな計画を立ててみたが、上手くいくだろうか。

 上手く行かなくても何とかするしかない。

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