第78話 おっさん、すっきりしない解決をする

 村へ行くと、前来た時と変わらない風景があった。

 村人は怠惰で働こうとしない。


「どうなっているんだ。診療所に急ごう」


 診療所に到着すると薬の素材が山と積まれていた。

 調合が上手くいってないのか。


「どうなっているんだ!」

「すみません、力及ばず」


 医者が疲れた顔で出て来た。


「薬は出来なかったのか?」

「出来たんです。効果もありました。しかし、誰も薬を使いたがらないのです」

「現状を変えたくないと言うんだな」

「そのようです」


「無理に飲ませたらええのとちゃう」

「患者は我がままを言うものよ」

「強行投薬」


 無理に飲ませるしかないようだ。


「意味がありません。薬を飲ませて治した患者は、悪魔の魔道具使う元の生活に戻ってしまいました」

「ふっ、こうなったら。呪いを解いてから、呪いを掛けてやる」


 悪魔の魔道具を使わせない様に呪いを掛けてやりゃ良い。

 俺達は嫌がる村人を捕まえては薬を飲まし、呪いを掛けた。


 村人は働き始めた。

 どんな呪いを掛けたかというと、魔道具を見ると不快に思う呪いだ。


「これでなんとかなりましたが、魔道具の供給を絶たないといけません」

「そうだな。根本的に何とかするにはそうしないと」


「それ何ですが、こんな手紙を貰いました」


 何だろう。

 内容はダンジョンで魔道具の取引が行われていると書いてある。

 差出人はマーロウだった。

 あいつ、この事件にも首を突っ込んだのか。


 ありがたい情報だが、マーロウは俺達が見つけるまで生きているかな。

 駆け出しの癖に無茶しやがって。


 俺はダンジョンに戻り取引の現場に飛んだ。

 その場所は前に俺が占有するチンピラを始末した所だった。


 そうか、あいつらは取引の現場を守っていたのか。

 謎が一つ解けた。


「出ていけ。ここは俺達が討伐をしている」


 取引の部屋の入口で見張りにそう言われた。


「知るかよ。俺達冒険者は好きな所で討伐をする」

「ふん、冒険者の流儀でやりたいのか。吠え面をかくなよ」


 冒険者の流儀とは争いごとの時に、腕っぷしでなんとかする事だ。


「それはどっちかな」


 俺はメイスを出すと見張りに襲い掛かった。

 相手はそんなに強く無かった。


 一回目の振り下ろしで見張りの武器が壊れ。

 二回目でドロップ品が壊れ。

 三回目で死んだ。


 俺達はダンジョンの小部屋に入った。

 取引をしている男達の視線が俺達に集まる。


「全く、まともに見張りもできねぇのか」


 そう言った男の顔には見覚えがある。

 クラン・ラベレン幹部のビンターだった。


 やっぱり黒幕はクラン・ラベレンだったか。


「クラン・ラベレンは皆殺しだ」

「お前、金貨1000枚の賞金首か。こいつは良い。殺して頂いてやる」


 俺はメイスで男達を殺し始めた。

 口ほどにもないな。

 ビンター? ビンターなら最初の三撃で死んだ。

 だってビンターは大剣を担いだパワータイプだったからだ。

 レベルに物を言わせて戦う俺と相性は良い。


 メイスで叩くだけの簡単なお仕事だ。


 悪魔の魔道具を多数押収した。

 俺はそれを危険な麻薬と同じだと説明を添えてギルドに提出した。

 元締めを殺した今なら、違法として取り締まれば、根絶は容易いはずだ。


 しばらくして、医者から手紙をもらった。

 あの村は改善できたが、似たような村は他にもあるらしい。

 悪魔の魔道具はまだ使われているようだ。

 根絶は簡単にいかなかったらしい。


「今回はあんまりすっきりせえへん、終わり方やな」

「仕方ないさ。麻薬と一緒でこういうのは無くならない」


「そうやね。酒やタバコが無くならないのと一緒やね」

「体に良くないと思っても摂取してしまう。人間のさがかな」


「撲滅に協力したりは、せえへんの」

「出来る限りはな。こういうのは沢山の人の力が必要だ」


 俺は今回の解決方法をパソコンで書いて、プリンターで何万枚も打ち出し、それを各方面に配った。

 ワンイェンクラブの人脈が非常に役にたった。


 俺に出来るのはこれぐらいだ。

 密売組織が目につけば対処する事ぐらいはするけどもな。

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