第71話 おっさん、下っ端をつぶす

 都市とダンジョンを行ったり来たりだ。

 転移陣を設置する事を考えた。

 転移陣を作動させるには魔力が要る。

 魔力イコール金とも言える。

 人さえ集められれば魔力は集められるからな。


 ワンイェンクラブ専用の転移陣は金になるからどうにかなっている。

 クラブを開催すると商人が地球の物品をかなり買い漁ってくれる。

 その利益で魔力は足りている。


 ダンジョンとの行き来の転移陣を設置してみようかな。

 冒険者に金を払わせる事にしよう。

 これもダンジョンを改造して人気が出るようになったから言える事だ。


 設置自体はそんなに問題ない。

 魔法陣を書いて、転移の座標が間違っていなければ、事故も起きない。

 魔力を沢山使うので、魔力タンクの魔石の値段はかなりするが、最初に費用が発生するだけだからな。


 転移陣を試しに設置してみたが、使うのは上位の冒険者と、ギルドのお偉方だけだった。

 そうなるよな。

 利用者が居るだけましか。


「アルマ、クラン・ラベレン所属の冒険者のリストアップは終わったか?」

「ばっちりや」


 ダンジョンコアの部屋で、アルマ達には寝ないで作業にあたってもらった。

 アシスタントの体はロボットだから、疲労する事がない。

 魂は人間のだけど、魂の疲労というのはないようだ。


「じゃ、退治するとしますか」


 俺はワープを使いクラン・ラベレンの冒険者の前に出た。


「いきなり現れたぞ。モンスターか」


 クラン・ラベレンの奴らは俺をいきなり攻撃してきた。

 はい、正当防衛を頂きました。

 俺はメイスで反撃。


「ぐがっ」

「おい、しっかりしろ」

「何の恨みがあってこんな事をする」


「お前達、犯罪に加担しているだろう。上納金がきついんだってな」

「どこでそれを。お前、モンスターじゃなかったのか」

「虐げられた人たちの恨み思い知れ」


「うあぁ」

「がっ」

「くそう、ぐっ」


 下っ端なんてこんなもんだ。

 俺はクラン・ラベレンの下っ端を潰して回った。


 ある日。


「命を助けてくれ。何でもする」


 そう下っ端の冒険者から言われた。


「お前達の末路は決まっている」

「そうだ。村を襲撃する計画があるんだ」

「ほう、詳しく話せ」


 俺は村の襲撃計画を聞いた。


「分かってはいるが、何で村を襲うんだよ?」

「奴隷を捕まえるためだと聞いた」

「そんな事をしたら、貴族が黙っていないだろう」

「話がついているんだよ。空になった村へ入れる人間は用意できているらしい」


「許せへん」

「そうね。奴隷を作り出すのに貴族が絡んでるなんて」

「悪徳貴族」


 盗賊に早変わりしたクラン・ラベレンの人間が村人を奴隷として売る。

 貴族は上前をはねる。

 そして空になった村へは流民でも入れるのだろう。

 もしかしたら貴族は流民からも金を取っているかも知れない。

 そして、村人になった流民はまた捕まえて奴隷にする。


 そういうサイクルが出来上がっているのだろう。

 話が大きくなったな。


 クラン・ラベレンが上と癒着している可能性はあったが、そういう事だったのか。


「俺を殺すのか? 全部、話したぞ」

「もう良い。どこへでも行け」

「ありがとう。あんたの事は忘れない。もう二度と悪事はやらない」

「そうするんだな」


 襲撃をする予定の村はフィーレス子爵の領地だった。

 調べたら前に盗賊に襲われていた村もフィーレス子爵の領地だ。

 フィーレス子爵はクズ貴族に違いない。

 証拠を集めて断罪したいところだが。


 クラン・ラベレンとの関係は当然、隠しているだろう。

 流民の入植も村が盗賊の被害で無くなったからしたんだと言えばそれまでだ。

 子爵の屋敷に隠しカメラなどを設置する事は出来る。

 できるが、この世界の裁判で証拠として採用されるか分からない。

 偉い人との伝手があればな。


 この世界の人間から俺の記憶が失われていなければ伝手はあったのに。

 ないものねだりしても仕方ない。


 とりあえず、クラン・ラベレンを追い詰めよう。

 そうすればフィーレス子爵の尻尾もつかめるかも知れない。


「よし、みんな村を救うぞ」

「はいな」

「頑張るわよ」

「悪人殲滅」


 村を救う過程で、さらわれた村人の行先も分かると思う。

 よし、やるぞ。

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