第66話 おっさん、名簿を作る

 ここから一番近いのはダーク・ダンジョンだ。

 ダーク・ダンジョンのダンジョンコアの部屋で見張る。


 見張るが、ランダムにカメラを切り替えていたのでは、情報収集には程遠い。

 イシュトンの情報待ちだが、やれる事はある。


 各ダンジョンの入口を見張るのだ。

 そしてそれを映像として出して家電のカメラで録画する。

 パソコンでダンジョンに入った人間の写真付き名簿を作るのだ。


 イシュトンから人相の情報と名簿を照らし合わせれば、どこのダンジョンに居るかが分かる。

 それに関係ない奴の名簿を作るのは無駄じゃない。

 アルマの商売に役に立つだろう。


 名簿を作る作業はとても忙しい、アシスタントとして秋穂を呼び出した。

 これで時間に余裕が出来たので、気になった奴は追跡してスキル構成なんかも調べた。


 ダーク・ダンジョンの様子も確認しておく。

 このダンジョンのモンスターは光を嫌う。

 目に見える光を見つけると特攻してくるのだ。


 ここのドロップ品は蛍光塗料と紫外線ライトだ。

 使い方はモンスターに向かって蛍光塗料を投げるなりして紫外線ライトで照らす。

 そうするとモンスターは同士討ちを始める。


 俺はあるパーティの様子を観察し始めた。


「おい、使わない時は塗料を袋の中に隠せよ。でないとモンスターが襲い掛かってくる」

「分かってるよ」

「手筈はみんな分かっている。とっとと進もうぜ」

「お前ら暗視スキルが無いのだから前に出るなよ」


「おう、モンスターと暗闇でごっつんこなんて洒落にならない。暗視スコープとやらが欲しいぜ」

「あれは下の階層のボスが落とすからな。俺達には高嶺の花だ」

「静かにしろ、敵だ」


 パーティの暗視を持っている人間が蛍光塗料を投げる。

 モンスターのべっとりと塗料が掛かった。

 紫外線ライトを照らすと、蛍光塗料は明るい光を放った。


 同士討ちを始めるモンスター。

 射手が参戦してモンスターは討ち取られていく。


 ドロップ品には蛍光塗料が出たようだ。

 そうしたら、パーティの人間は、壁に蛍光塗料を塗り始めた。

 何を始めるつもりだ。


「頼むぞ。上手く釣りだしてくれ」

「はいよ」


 暗視を持った男がうろつき始めた。

 モンスターを探しているのだろう。

 モンスターを見つけた男は挑発を始めた。


 そして、壁に蛍光塗料が塗られていた一角に逃げ込む。


「今だ」


 紫外線ライトが点けられ壁が光る。

 モンスターは壁と戦い始めた。


 射手がモンスターを討ち取って行く。

 壁と蛍光塗料で罠を張るとはな。

 なかなか考えているな。


 しかし、蛍光塗料と紫外線ライトではこのダンジョンの攻略はちと厳しいか。

 懐中電灯をドロップ品に追加した。

 これを常時つけているとモンスターに目の敵にされるが、スイッチを切っていれば関係ない。

 モンスターに出会ったらスイッチを入れて投げるのだ。

 そうするとモンスターは懐中電灯に突進する。

 使い捨ての囮として使う訳だ。

 壁に蛍光塗料を塗るよりましだろう。

 価格も100均のだと100円で収まる。


 改善案はこんなところでいいな。

 ダンジョンから出て脇にあるギルドの出張所に入る。


「ムニだが、伝言は来ているか?」

「ええ」


 伝言によるとクラン・ラベレンは4人の幹部がいるそうだ。

 ヒューロ、ラーク、ビンダー、アダモスの四人だ。


 名簿を検索する。

 ヒューロの名前が引っ掛かった。

 ダーク・ダンジョンに出入りしてたようだ。

 まだ、この近くにいるかも知れない。


 今日の録画を見るがそれらしき奴はいない。


 アルマ達と別行動を取ったのは悪手だったか。

 俺と異世界に慣れていない秋穂では出来る事が限られる。


 とりあえず、アルマ達を追う事にした。

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