第67話 おっさん、トラブルに出会う

 ダンジョンを出てバンクスに向かう。

 ダンジョンからダンジョンへのワープは出来るんだか都市へは飛べない。

 都市にはワンイェンクラブの転移陣が設置してあるので、それを使って飛ぼうと思う。


 急いでいる時に限ってトラブルが起きる。

 まあお約束と言う奴だろうな。

 もしくは一昔前に流行ったマー○ィの法則か。


 どういうトラブルかというと、スクーターで飛ばしていた俺の前に行き倒れが。

 あやうく轢きそうになった。

 見捨てていくのも寝覚めが悪い。


「おい、大丈夫か。しっかりしろ。ポーションは飲めるか」

「くっ、このまま死ねん」


 行き倒れは俺と同年代の男だった。

 男はポーションを飲んで、それから俺の出したスポーツドリンクを飲んで、人心地が付いたらしい。


「行きたい所まで乗せてやる。どこに行きたい?」

「バンクスまで乗せてってくれ」

「奇遇だな行先が一緒だ」


 男とスクーターで二人乗りして急ぐ。


「飛ばすぞ。しっかりつかまってろ」


 女と二人乗りなら盛り上がるんだろうけど、おっさん二人では盛り上がらない事はなはだしい。

 道も真っ直ぐだし、運転に余裕が出来たので、話をする事にした。


「行き倒れするなんて何か訳があるのか?」

「村が盗賊に占拠された。助けを呼びたいんだ」

「ほう、金はあるのか?」


「ある訳ないだろう。盗賊の目を盗んで村から出たんだ。僅かな食料しか持ち出せなかった」


 金目の物は盗賊が真っ先に集めるよな。

 金がある訳ないか。


「領主は動いてくれそうなのか?」

「分からん。会ってくれるかどうかさえ分からん」

「それじゃ成功の見込みはまずないな」

「くそう。俺達の何が悪いんだ」


「悪くないな。悪いとすれば運が悪かった。そろそろ休もう。あんたの体もきついだろ」

「そんな事言ってられない。こうしている間にも仲間が」


 俺は適当な所でスクーターを停めた。


「何で停まるんだ? 俺は平気だ。先を急いでくれ」

「めんどくさい奴だな。ヘロヘロなのに少しは食べて落ち着けよ」


 俺は通販スキルで菓子パンを出してやった。

 男は菓子パンを貪り食う。

 まるで菓子パンを食えば盗賊が退治されるとでも言いたげに。


「戦うにはまず情報だ。敵の戦力、地形、もろもろの条件を調べにゃならん。味方の情報もだ。情報を調べたら作戦だ」

「そんなの分かる訳ないだろう!」

「興奮するなよ。このままバンクスに行っても成功はおぼつかないぞ」

「じゃあ、どうすれば良いんだ」

「考えるんだよ。一生懸命な」


 この男をバンクスに連れてって、僅かな金を持たせて放り出しても良いが、それでは可哀想だ。

 一肌脱ぐとしましょうかね。


「盗賊は何人だ?」

「分からん30人より多いとしか」

「分かっている事はないのか?」


「ああ、親玉の名前がヒューロだ。手下がそう呼んで殺されたので良く覚えている」

「何だって! それを先に言えよ」


 このヒューロはクラン・ラベレンの幹部かも知れない。

 かぜんやる気が出て来た。


「よし、村に引き返そう」

「あんたは盗賊に寝返るのか? 親切な人だと思ったのに」

「逆だよ逆。盗賊を退治してやる」

「あんた一人でか」

「いや4人でだ」


 アルマ達を再呼び出ししなかったのは、アルマ達が途中まで良い具合に事が進んでいて引き寄せたら、ご破算になるからな。

 でも幹部も一人が見つかったとなれば話は違う。

 それに殺してもお咎めなしの状況だ。

 盗賊として処分出来るからな。

 こんなチャンス逃す方がどうかしている。


「信じられない」

「見ろ。Sランクのカードだ。これでもちょっとはやれる」

「本当か。でも依頼金が」

「今回は銅貨1枚でいい。なあに、ただの気まぐれさ」


「お願いだ。頼む。村を救ってくれ」

「ああ、任された。じゃ早速、アシスタント帰還。助手アシスタント、来いアルマ、エリナ、モニカ」


 アルマ達が現れた。


「もう少しでマーロウの足取りがつかめそうやったのに」

「そうそう」

「終着直前」


「すまんな、クラン・ラベレンの幹部がやっている悪事の尻尾をつかんだ。せん滅したい」


 俺達は盗賊退治をする事になった。

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