第63話 おっさん、アルマに任す

 キールに着いた。


「うちの有能なところみせたるで」


 アルマは前にマーロウ探しで役に立たなかったのをまだ気にしてたらしい。

 たまにはアルマに任せてみるか。


「じゃアルマ、頼むよ」

「任された」


 アルマはまずはギルドに行くらしい。

 順当だな。


「すんまへん。マーロウという駆け出し冒険者探しているんやけど」

「パーティ名が分からないとちょっと。個人名だけだと、同名の方は居られますし」


「えーと、ご主人様。パーティ名は何でしたやろか」

「この前の情報ではパーティが出来立てで、どんなパーティ名になっているかは分からない」


「どないしょ」

「依頼を出せばいいのよ」

「エリナ、おおきに。受付はん、マーロウの入ったパーティ名の情報を頼むの依頼を出すわ」

「金額はどうします」

「銀貨1枚でええやろ」


 待つ事、一時間。

 情報提供者が現れた。

 身なりから察するに駆け出し冒険者だな


「マーロウのパーティ名はなんや」

「月光に光る刃だったと思う」

「マーロウの特徴は?」

「一緒に仕事した訳でもないのに、いちいち覚えてないよ」

「ほな何で覚えているんや」

「月光に光る刃のパーティメンバーが怪我をして、困ったって聞いたんだよ。俺らも駆け出しで失敗談はためになるから、よく覚えている」

「それを詳しくお願いや」

「月光に光る刃はオークの集落のせん滅に行ったらしい。そこで実力を見誤って怪我をして逃げ帰ったって訳だ」


「ほな次は、治療院を当たるべきやな。駆け出しが行きそうな治療院は分かるか?」

「地図を書いてやるよ」

「おおきに。依頼完了のサインしとくわ」


「アルマ、凄いな。見事な探偵ぶりだ」

「えへへ」


 照れてるアルマもいいな。


 アルマ達が受付で何かしてから、俺達は治療院に行った。


「ここに月光に光る刃の人間が治療に訪れたと思うんやけど」

「患者さんの情報は漏らせません」


 看護婦の対応は硬い。

 アルマのお手並み拝見だ。


「マーロウの家族から伝言を預かっているんやけど」

「依頼ですか」

「これが依頼票や」


 何時の間にスラムの子供達が依頼を出したんだ。

 依頼人の名前を見るとエリナってなってた。

 なるほどね。

 さっきやってたのはこれか。

 嘘の依頼を出したって訳か。


「そういう事なら仕方ありませんね。マーロウさんのパーティは怪我を治して立ち去られました」

「あんたが知っているマーロウと、うちが探しているマーロウが、同じか確かめたいんやけどええか」

「はい」


 それから人相のチェックをしてマーロウが同一人物だと分かった。

 パーティ名が分かれば後は追跡するだけだな。


「月光に光る刃の方向を出したんやけど」

「都市も何もない方角だな。どれぐらい離れているかも分からん」

「そうやね。どないしょ」

「ギルドで、月光に光る刃が、どんな依頼を受けたか聞いたら」

「エリナはん、ナイスアイデア」

「激甘、守秘義務」


「そうやね。受付では教えてくれへんかも。うーん……」


 アルマが長考に入った。

 そしてぽんと手を打った。

 何か思いついたか。


「言うだけならただやし。まずは受付で聞いてみるわ」


 ギルドの受付で聞いたが、駄目だったようだ。


「作戦会議や。どないしたらええと思う?」

「うーん、ここの近辺のギルドに伝言をだしたらどう」

「相手拒否、可能性大」


 そうだよな。

 マーロウが伝言を見てもスラムの子供達の所へ帰ってくるとは思えない。


「ほな、依頼だしましょ。月光に光る刃がどんな依頼を受けたか情報提供を呼び掛けるんや」

「そうね。それがいいかも」

「名案」


 依頼を出したらすぐに情報提供者は現れた。

 驚いた事にその相手はさっきの駆け出し冒険者だった。


「なんや、知ってるのだったら、さっき教えてくれてもええのに」

「さっきは聞かれなかったからね。あの失敗談に続きがあるんだ。怪我の治療費が払えなくて困った彼らは、商人の護衛依頼を受けて、その商人から借金したんだ」

「よく、商人が貸したわ。うちだったら貸さん」

「武器なんかの装備を質に借りたらしいよ」


「ところで、商人の護衛依頼を受けたのが分かったからと言ってどうするんだ」

「ふふふ、うちは腐っても商人や。商人の事なら分かる。行商が使うルートがあるんや。たぶん行先はそれで分かる」


「流石だな。アルマは有能だ」

「次は都市バンクスや」

「水を差すようで悪いがゴーレム・ダンジョンの様子を見てみたい」


 ゴーレム・ダンジョンに寄り道する事にした。

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