第32話 おっさん、威力偵察する
「よし、夜のうちに偵察に行くぞ。ロバス、アルマ、エリナ、モニカと俺の5人で行く」
「了解しました」
「はいな」
「仕方ないわね」
「了解」
俺達は見張りをかいくぐり敵軍の後方に侵入した。
やはりだ。
後方は物資が集められている。
今回は偵察だけのつもりだったが。
ダメージを与えられるのなら放っておくつもりはない。
「よし、灯油を掛けて発煙筒で火をつけるぞ」
発煙筒で火をつけて回る。
「おい、食料に火をつけられたぞ。見張りは何をしてたんだ。早く消せ」
「火を出す筒に水を掛けたけど、消えません」
水中でも燃える発煙筒を使ったからな。
「素手で掴んで排除しろ」
「あちちっ」
発煙筒全体に火が回っているから熱いだろう。
暗がりに潜んでいた俺達はそっとその場を後にした。
帰りは最短距離を帰ったのがいけなかったのか、それとも油断があったのか、俺達はトラップゾーンに嵌ってしまった。
最初にロバスがトラばさみみたいな罠にかかった。
「すまん。俺は置いてってくれ」
「そんな事は出来ない。アルマとエリナは足首の方を持ってくれ。モニカは警戒を頼む」
俺達はロバスを持ち上げトラップゾーンから脱出にかかった。
俺とアルマ達もトラばさみに掛かったが、俺は魔力壁でアルマ達は体の特性で事なきを得た。
「おい、こっちで物音がした」
不味い、敵兵士が気づいた。
こちらに向かって来る人数は30人はいる。
迎撃してもいいが、ロバスが負傷している。
仕方ない切り札を一つ切ろう。
シート、隠れ身の術。
ただのシートの中に隠れたんじゃない。
このシートは接着剤を塗ってその上に砂をまぶして作ってある。
ぱっと見は砂と区別がつかない。
これはよく子供の頃に遊んだ事からヒントを得ている。
子供の頃、ビー玉に接着剤を塗り砂の上を転がした。
こうすると砂の玉が出来る。
ぱっと見は砂の塊に見えるので、砂を真球にするの大変でしょうと言って大人がびっくりした記憶がある。
シートに砂をつければ砂の塊にしか見えない。
「俺がドジ踏んだばっかりに」
「敵に感づかれる。喋るな。愚痴なら帰ってから幾らでも聞いてやるよ」
ぐすんという音がしてそれからロバスは喋らなくなった。
敵がいなくなるのをただ待っているのも何なんで、ロバスの応急処置をする。
傷口に消毒液を掛けてもロバスは一言も声を漏らさなかった。
シートの端から外を覗く。
「罠に血の跡があった。そんなに遠くには行けないはずだ。よく調べろ」
「はい」
血の跡が見つかったか。
これは簡単に退いてくれそうにない。
結局、敵兵が引き上げたのは朝になってからだ。
リアカー魔力通販で買ってロバスを載せる。
三人はシートを持ち、俺達を隠す。
砂が動いていたら、勘づかれる。
それはしょうがない。
だがやれる事があるはずだ。
そうだ、竹ぼうきで足跡を消したなんてのがあったな。
魔力通販で竹ぼうきを買って砂を均しながら進んだ。
「敵影」
最後尾にいるモニカが警告を発した。
俺達はじっと隠れ敵が通り過ぎるのを待った。
「おかしいな。ここで何か動いた気がしたんだが」
モレクに乗った敵兵がそう呟く。
俺はシートを跳ね除け、モレクの顔を殴った。
モレクは倒れ敵兵が落馬する。
敵兵は何かしようと腰の辺りを探るが、いち早く気づいた俺が取り上げた。
笛か。
吹かれたら面倒だったな。
敵兵を始末してアイテムボックスに収納した。
モレクは可哀そうだったが、やはり始末して収納。
死骸は後で適当な所に埋めよう。
双眼鏡があって助かった。
敵の接近がいち早く分かる。
砂漠は平坦なイメージがあるが、丘みたいな物が幾つもある。
それが俺達を上手く隠してくれた。
俺達は無事、仲間の下に帰る事が出来た。
ロバスをどうしよう。
骨までは傷はいってないが、素早く動くのには問題がある。
医療用の傷パッドを貼ってあるが、完治するには2週間はかかるだろう。
「すまん、ロバス。後衛をやってくれ。弓は撃てるよな」
「ええ」
俺はロバスにボウガンを手渡した。
斥候が負傷か。
この先が思いやられる。
双眼鏡があるので、大丈夫だとは思いたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます