第240話 おっさん、下調べをする

 聖杭ミスランター関連の任務が来た。

 ある男の恋人がさらわれた。

 さらった男が聖杭ミスランターの製造を担っていると言ったそうだ。


 さっそく、恋人がさらわれた男の所を訪ねた。

 居たのは優男という表現がぴったりの男だった

 洋服店の店員をしているらしい。


「とっとと情報をくれ」

「ちょっとムニ、恋人がさらわれたのだからもっと優しく」

「優しくして事件が解決するなら、そうするさ」


「そうですね。僕は一刻も早く恋人を助け出してやりたい。さらわれた状況をお話しします。デートの帰りに行きつけのバーに寄りました。少し目を離したすきに居なくなっていたのです。居なくなる直前に恋人のジーナと会話していたのがドガーで。こいつが怪しい。あっ、僕はカイルと言います」

「ドガーを訴えればいいだろう」

「それはしました。ろくに調べもせずに釈放されました」


 そうだろな。

 聖杭ミスランター関連だとすれば、国ぐるみだと思う。

 警備兵に訴えても無駄だろうな。


「許せない」


 アニータがふんまんやるかたなしと言った風情でそう言った。


「聖杭ミスランターの事を話せ」

「ドガーが酒に酔って聖杭ミスランターを作っているんだぞと、たまに自慢していたのです」

「よし、ドガーを調べよう」


 ドガーをジーナがさらわれた現場となったバーで待つ。


「あれがドガーです」


 カイルが小声でささやく。

 ドガーはハンサムとは言い難い普通の男だった。

 ドガーがバーを出たので俺一人で後をつける。

 歓楽街に入って、場末の娼館が立ち並ぶ一角に来た。


 ドガーが店の中に入る。

 お楽しみかな。

 こりゃ時間が掛かるかな。

 そう思ったら数分でドガーが出て来た。

 むっ、どういう事だ。


 娼館の近くに寄る。


「お願いです。あの男に売らないで下さい。なんでもします」


 女が誰かに嘆願している。

 ヴァンパイヤの耳がそれを捉えた。


「稼げるうちは売らないよ。安心おし」


 ドガーは人買いらしい。

 ジーナは売られたのか。

 聖杭ミスランターは製造過程で大量に魔力が必要になのかも知れない。

 生贄に売られたという線もあるな。


 ドガーの尾行を再開する。

 ドガーは賭場に入っていった。

 俺も中に入るか。


「あんた見ない顔だ。誰の紹介だ」


 賭場の扉の前に用心棒がいて立ちふさがる。


「ドガーさんの紹介だよ」

「入りな」


 俺は賭場の中に入った。

 ドガーはサイコロを使った博打に夢中になっていた。

 賭け方を勉強するふりをして、ドガーの後ろに立つ。


「今日はついてないな」


 そうドガーが愚痴を漏らす。


「ドガーさん、もぐりの娼婦が捕まったって、聞きましたぜ」


 遊び人の男が寄って来てドガーに伝えた。


「ほう、情報ありがとよ。リンチにされる前に助けてやらないと」


 ドガーは話し掛けて来た男にチップを握らせた。

 そして、席を立って賭場を出た。


 ばれないように細心の注意を払いながら後をつける。

 ドガーは歓楽街外れの看板の出ていない店に入った。


 ほどなくして、後ろ手に縛られた女を連れて出て来た。

 この女には悪いがどこに連れて行かれるか、囮になってもらおう。


 ドガーと女は場末の娼館にやってきた。

 どうやら今回は外れらしい。

 女を娼館に置いてきたのだろうドガーが一人で出て来た。


 どうやら、ドガーは帰るらしい。

 露店で食べ物を包んでもらっている。

 どこに住んでるかも調べておくか。


 途中、物取りだろうか、それとも喧嘩か、男が袋にされていた。

 歩く住民は誰も咎めたりしない。


 治安の悪い所だな。

 だが、ドガーをさらうのには都合が良い。


 ドガーの下宿は軍の高級士官の宿舎だった。

 こいつは何でこんな所に住んでいるんだ。

 怪しい奴だ。


 ジャスミンとアニータに合流する。


「何か分かった?」

「ドガーは人買いだ」

「怪しいわね」

「ぷんぷん臭う」


「それに軍の宿舎に住んでいる」

「それは黒ね」

「真っ黒」


「よし、明日、捕まえて尋問しよう」


 俺は準備を始めた。

 ロープに猿ぐつわに自白ポーション。

 これで準備はいいな。

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