第222話 おっさん、四人組を退ける

「雁首、揃えちゃって」

「同胞をやってくれたのはお前だな」


 俺の言葉に答えたのは3メートルもの盾を持った男だった。

 凧みたいに見えたのは盾のようだ。


「それより俺の居場所がなんで分かるのか教えてくれよ」


 それを聞きたかった。


「ヴァンパイヤは身を削って生きている。その削りカスを追跡するのだ」


 劣化した体は垢みたいにはがれていく。

 それを追跡するのだろうな。


「話し合いなんてのは無理だよな。とっとと始めようぜ」

「そうだな。四人がかりを卑怯だと思うなよ」

「思わん」


 いでよ、強力紫外線ライト。

 俺は作動している強力紫外線を出した。


「アイン」


 四人の中で唯一の女が指示した。

 腰に付けた沢山の投げナイフが揺れた。


「分かっている」


 盾の男が盾を地面に突き刺し紫外線から四人を守る。

 そして盾の裏側から投げナイフが放物線を描いて飛んできてライトを壊した。


「ドライ」


 女の声がして、太鼓腹の男が盾の陰から出て来た。


「おうよ」


 男が口から火炎を吐く。

 そして、女は両手を剣に変えて斬りかかってきた。

 足の下から炎を出していた男は、やはり足から火炎を出しジグザクに飛んできて、短剣で俺を刺した。

 盾男はポチを盾で殴打した。


 実は魔力壁はもう習得してある。

 レベルが80もあるとそれなりに硬い。

 炎ぐらい全然平気だ。


 それに耐刃ジャケットも身に着けているから余計に短剣は通らない。

 刃物女の剣はヘルメットに弾かれた。


「こいつ、刃が通らない」

「なんて硬い兜なの」


 ヘルメットはかなり凹んだな。

 事故に遭うと凹んでも頭の中身を守る仕組みだからな。


 急いでヘルメットを替える。


「こいつ、アイテムボックスを使ってる。人間とヴァンパイヤの合いの子って訳ね」


 その推測は間違っているが、指摘する必要はないな。

 俺は携帯型紫外線ライトを手に持つと剣みたいに振り回した。

 盾男が紫外線を遮る。

 この後、投げナイフが飛んで来るのだろう。

 俺は投げナイフをさけた。

 そして、紫外線ライトを捨てメイスを出すと、盾を全力で叩く。

 盾は少し凹んだが、ほとんど壊れていない。


 風船みたいな物が飛んできて俺の周りで爆発する。

 くそう、四人もいると手が付けられない。

 まずは盾だ。


属性魔導アトリビュートマジック、刃よ回転して切り刻め」


 ダイヤモンドカッターの刃で盾の表面に切り込みを入れた。

 そしてメイスでガンガン叩く。

 投げナイフが雨あられと降ってくるが、こんな物は効かないよ。

 遂に盾は折れた。

 メイスを捨て、携帯型紫外線ライトを取り出して、奴らを照らす。


 火炎放射がライトを溶かす。

 まあいい。

 替えはある。


 俺は火炎放射男に触るとドレインタッチの逆のヒートタッチをした。

 爆発する火炎放射男。


「よくもドライを」


 刃物女が特攻してくる。

 紫外線ライトを出して刃物になった両手を灰にする。

 そして胸倉を掴み抜き手でコアを潰した。

 魔力壁とヴァンパイヤの怪力を使うと、こういう芸当も可能だ。


「フィーアもか」


 俺は飛んできたロケット男を受け止めると、抜き手でコアを潰した。

 最後に盾男を紫外線ライトで焼くと盾男は血の涙を流した。

 ヴァンパイヤも泣けるんだな知らなかったよ。

 さらばだ。

 抜き手でコアを潰した。


 俺は散らばった装備を集め、山を下りる。

 何だろ、急に仲間が恋しくなった。

 俺はヴァンパイヤのまま、地球に帰る事にした。


次元移動ディメンションムーブ


 久しぶりの地球だ。

 我が家が懐かしく感じた。


 いつもの癖でカーテンを開ける。

 あれ、太陽に当たっても煙が出ないどうなっているんだ。

 でも、血の渇きは変わらずにある。


 前々から不思議に思ってた。

 世界を飛び越えた時の状況から始まる。

 時間と空間を捻じ曲げていると解釈していたが、どうも違うようだ。

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