第5章 アンデッドでざまぁ

第201話 おっさん、スケルトンになる

 気がつくと俺の手足と体は骨になっていた。

 なんだってー。

 もしかしてスケルトンになったというのか。


「カタカタ(ステータス)」


――――――――――――――

名前:山田 無二 LV1

魔力:100/100


スキル:

収納箱

魔力通販

次元移動

――――――――――――――


 おー、初期化されている。

 そうだ。

 俺は管理者に貸しが一つある。


「カタカタ(管理者、貸しがあるはずだ。俺を元の体に戻してくれ)」

「出来るけど、そのまま戻すと今度は本当に死ぬわよ。周りを良く見なさい」


 周りを見るとモンスターが闊歩していた。

 この状況でレベル1の人間になると死ぬな。


「カタカタ(分かった)。カタカタカタ(戻すのは後にしてくれ)。カタカタカタカタ(もしかしてスケルトンのレベルが戻った時のレベルになるのか)」

「ええ、そうよ。スケルトンのレベルとスキルが引き継がれるわ。じゃあ、その時になったら呼んで。待ってるわ」


 この体でレベルアップを目指すか、もしくは人里を目指すべきだろう。

 モンスターは今のところ、俺に襲い掛かってくることはない。

 だが、攻撃すれば、別だと思う。


 人里に行くのもな。

 この姿で人里に行ったら、討伐される事、請け合いだ。


 何とかしてレベルアップを計るのが堅実だろう。


 ところでここはどこだ。

 何で俺はここに居る。

 それとアルリーのアンデッドは日光に弱かったが、この体は日光に弱いという事はない。

 アルリーのアンデッドとは別物だと考えた方がいいだろう。


 分かったのはこの辺りはモンスターが多いという事と人はいないという事だ。

 ある日、ダンジョンの入口を見つけた。

 まだ、未発見のダンジョンらしい。

 人が出入りした形跡はない。


 土を掘ったような洞窟のダンジョンだ。

 中は明るい。

 仕組み不明な光源がある。

 それより、モンスターどうなっている。


 ダンジョンの中にいたのは俺と同じスケルトンだった。

 何か俺と関係あるのか。

 ダンジョンの中は居心地が良かった。

 それにスケルトンには攻撃しない限り反撃されないしな。

 スケルトンの倒し方は体の中にあるコアを潰すと死ぬ。

 案外と弱いのが分かった。

 レベルが上がりにくい例の特性はまだ生きているらしい。

 300体のスケルトンを倒してもレベルアップしなかった。


 とほほと言うしかない。

 地道にスケルトンを倒し続けたら何日でレベルが100になるかな。

 考えたくもない。

 いつしか俺はスケルトンを倒すのを辞めていた。

 そして、ダンジョンコアを討伐する方法を考え続けた。

 いつまで考えても答えは出ない。


 そして、このダンジョンは人間に発見された。

 人間が出入りするようになったのだ。


 俺は人間から逃げ惑って暮らした。

 このダンジョンは諦めて旅に出るべきだろうか。

 そんな事を考えていた時にある出来事に遭遇した。


 女冒険者がスケルトンの集団に襲われて、殺されそうになっているじゃないか。

 俺は駆けつけてスケルトン達を足払いして転ばせた。

 そして女冒険者の手を引いて安全な場所に急いで避難した。


「助けてくれたの」


 やった、言葉は異世界ガンティスの物だ。

 他の異世界に飛んだという訳ではないようだ。

 まじまじと女冒険者を見る。

 栗色の髪と緑の目。

 顔はそばかすがあり、あどけなさが残っている。

 駆け出しなのだろう。

 1階層で苦戦するようではな。


 装備は皮鎧に剣。

 腰に水筒と小袋が括り付けられている。

 背負いバッグも革製で頑丈そうだ。

 背中の装甲も兼ねているのだろう。


「カタカタ(まあな)」


 助けてくれたかの問いに俺は歯を鳴らして答えた。


「信用して良いのね」

「カタカタ(まあな)」

「頼みます。出口まで案内して下さい」


 ここで秘密兵器登場。

 100均のホワイトボードだ。

 人間と会話する為に買って、アイテムボックスに入れておいた。


『大船に乗ったつもりでついてきたまえ』


 そう書いた。


「凄い。文字が書けるのね。この白い板は骨で出来ているのかしら。もしかして新種なのかな。きっと書記スケルトンね」

『ムニだ』

「私はジェマよ。よろしく」


 ジェマは先ほどの戦闘で足首を捻ったらしく、歩くのが痛そうだ。

 むっ、スケルトン。


『お嬢さん、下がって』


 俺は骨の拳でスケルトンを砕き、頭蓋骨の中のコアを握りつぶした。

 スケルトンは魔石を残して消えた。

 ありゃ、拳にひびが入った。

 だが、心配はない。

 すぐに修復するからだ。

 スケルトンの体は壊れてもすぐにくっつく。

 とにかくコアを潰されない限り死なない。

 このコアは不思議な光体で出来ていて触れる。

 気体の集まりではないかと思う。


「ムニさん、強いのね」

『一対一なら、スケルトンごときに負けない』


 スケルトンを倒しながら進み、出口まで後少しという所まで来た。

 そこに待ち構えていたのはファイタースケルトン


 剣を持ったスケルトンだ。

 イレギュラーという奴か。

 ついてないな。


『剣を貸してくれ』

「ちゃんと返してね。高いんだから」


 ファイタースケルトンとの戦闘が始まった。

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