第200話 おっさん、終わりと新たな始まり

「こちら、ムニ。フレッドの馬車がそちらに向かっているはずだ」


 俺はスキル原理主義者にも渡してあるアマチュア無線機で連絡を取った。


「切通しになっている箇所があります。我々はそこを塞ぎますので、挟み撃ちにしましょう」

「よろしく頼むぞ」


 俺は切通しに急いだ。

 俺が駆け付けると既に戦闘は始まっていて、ブレッド達の火球の攻撃を斬撃スキルで防いでいるところだった。


「フレッド!!」


 スクーターを全速力で突っ込ませる。

 火球で攻撃され、火だるまになったまま護衛をなぎ倒した。

 そして、スクーターは爆発炎上。

 俺は投げ出された。

 魔力壁があるから無傷だがな。


 生き残った護衛とスキル原理主義者が戦闘を始める。

 俺はフレッドと睨み合った。


「やってくれたな。許さん」

「御託は良い。とっとと掛かって来い」


属性魔導アトリビュートマジック、竜巻よ切り刻め」


 俺はダンベルがぎっしり入った背負い鞄を装備した。

 竜巻を突っ切りフレッドにメイスを叩き込んだ。


属性魔導アトリビュートマジック、土壁よ隆起せよ」

「ふん、分解ディサセムブル


 俺は土壁を砂に変えた。


属性魔導アトリビュートマジック、空気よ抜けろ」


 窒息攻撃できたか。

 でも人間は窒息するまでに時間がある。

 俺はフレッドにメイスを叩き込んだ。


属性魔導アトリビュートマジック、念動よ防げ」


 俺のパワーと念動の押し合いになった。


属性魔導アトリビュートマジック、刃よ回転して切り刻め。かひゅう」


 俺は腰につけた、ダイヤモンドカッターの刃を放った。

 ダイヤモンドカッターの刃がフレッドの首を切り裂く。

 息苦しい。

 俺は喉をかきむしった。


 刃の回転が鈍る。

 あと少し、刃よもっと回転しろ。

 唐突に空気が戻ってきた。


「はぁはぁ、危なかった。三途の川が見えたぜ」


 フレッドは首を切り裂かれ死んでいた。

 これで、この世界でのやる事は終わったな。


 生贄に係わったダイヤモンド魔導士の処罰はレベッカ達に任せよう。

 俺が街に帰ると死んだ議員の選挙が始まっていた。

 手回しの良い事で。

 金属魔導士会と万物魔導士会が裏で手を引いているに違いない。


 アニータに別れを告げる為に宝石魔導士会を訪ねる。

 宝石魔導士会に入った時に魔力回路が作動した。

 ダイヤモンド魔導士会の残党の仕業か。

 俺は恨みを買っているから、こうなる事も覚悟していた。


 風景が切り替わり、石壁に囲まれた部屋にいた。

 見た事のない人間達に囲まれる。

 あの魔力回路は転移だったのだな。

 ここで始めようってのか。

 良いだろう付き合ってやるよ。


「この国をお助け下さい、勇者様」


 身分の高そうなお姫様がそう言った。

 俺が勇者なんの冗談だ。


「この地を凶悪なモンスターが徘徊しています。退治してほしいのです」


 とりあえず従ってみるか。

 ここがどこだか分からないしな。

 連れていかれたのは村でそこには無残に食い荒らされた村人の死体があった。

 子供の死体をみた時に敵を討ってやろうという気になった。


 モンスターはフェンリルだった。

 俺が退治しても良いが、この国の人間に手柄を譲った方が良いだろう。

 勇者としてこの国に縛られるのは御免だ。

 俺はチョコレートとキシリトール飴を出してやり、討伐の指揮を執った。


 フェンリルは無事退治され、祝勝会で。


「頭が高い。ひれ伏せ」


 王様らしき人がそう言い。

 俺はいつの間にか平伏していた。

 何だ。

 何が起こった。


「ダイヤモンド魔導士会を潰したと聞いたから用心していたが、あっさりと行ったな」

「お前ら俺に何をした」

「発言を許可した覚えはない」


 俺は口をつぐまされた。


「お前の属性は何だ。答えろ」

「チタンだ」

「聞いた事のない属性だ。強いのか」

「ダイヤモンド魔導士の半分だ」


「何だ雑魚か。どうやら陰謀でダイヤモンド魔導士会を潰したようだな。フェンリルも罠に掛けたと聞いた。この男に価値はないが、必要になる時もあるだろう。属性魔導を封じて、奴隷小屋に入れておけ」


 奴隷と言ったか今。

 俺は奴隷にさせられたのだな。

 今まで気づかなかったが、床には魔力回路がある。

 これが、奴隷化の魔力回路なのだろう。

 繋がれた魔石の大きさから推測するに、これを作動させるには1万人分ぐらいの魔力が必要だ。

 どうやって魔力を集めたのか想像がつく。

 生贄を使ったんだな。


 俺のやった事は無意味だったのか。

 俺は汚い部屋に移動させられてしばらくの間ほうけていた。

 こんな事をしている場合じゃない。

 隷属をなんとか解かないと。

 属性魔導は使えなくなっていたが、魔力通販とアイテムボックスのスキルは相変わらず使える。


 幸い体内の魔力を調べる魔力回路は覚えていた。

 それを作って作動させる。

 呪いと同じ仕組みだな。

 これなら解除できる。


 俺は逃げ出す機をうかがった。

 何度かモンスター討伐の指揮を執り、ある日。


 俺は体内の魔力回路を破壊した。


「おい、仕事だ。何だこの魔法陣は。何をした、答えろ」

「隷属を解いただけだ」

「第1級異常事態発生」


 別の男が何やら虹色に輝く杭のような物を持って現れた。

 そして加速の魔導を使うと杭を俺に打ち込んだ。

 灼熱の痛みが走り、次の瞬間に暗転していた。

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