第189話 おっさん、喧嘩を売る
「この国の魔導士は何でこうも弱腰なんでしょうね」
久しぶりに出た秘密結社の会合。
憤懣やるかたないという様子で、リオンがそう愚痴を漏らす。
「それでも意識改革は進んでいるんだろ」
「ええ、国の重要ポストはダイヤモンド魔導が占めていますが、それに疑問を持つ人間が増えています。それに魔導士でない人間も、なぜ出世できないのか疑問を持ち始めています」
「ビラを貼るだけじゃ限界があるって事だな」
「ですが、デモ行進なんかしたら、せん滅されるのは必至です」
「ダイヤモンド魔導士が強いのは分かる。だが、他の魔導士で勝てるはずだ。それを証明すればダイヤモンド魔導士の優位も揺らぐんじゃないだろうか」
「そんな事ができますかね」
「結局、問題はそこだ。勝てないと諦めている。俺に言わせれば、負け犬根性が染みついている」
「そんな馬鹿な」
「よし、これからそれを払拭しに出かけるぞ。みんな! これから装備を渡すから後について来い!」
秘密結社の人間を引き連れて白昼堂々と、俺はダイヤモンド魔導士会の支部にやってきた。
白昼堂々とはいえ覆面はしているがな。
「決闘だ! ダイヤモンド魔導士の糞やろう出て来い」
バラバラと支部から人が出て来る。
20人はいるだろうか。
「おらおら、口上なんか要らない。決闘だ」
俺はそう言うと近くにいたダイヤモンド魔導士を殴り倒した。
「
ダイヤモンド魔導士が口々に魔導を唱え、火の玉を撃ってくる。
「耐火球防御」
「
秘密結社の魔導士達が二酸化炭素で壁を作った。
火の玉は見えない壁に当たると、かき消された。
「火球妨害」
マグネシウムの粉が入ったカプセルを秘密結社の魔導士達が投げた。
「
ダイヤモンド魔導士の周りで爆発が起こる。
「くそう。
マグネシウムの粉が吹き飛ばされた。
「接近戦だ。
ダイヤモンド魔導士達が電撃を纏う。
「今までの憂さ晴らしだ。殴ってやれ」
「
秘密結社の魔導士達は加速の魔導を掛け突っ込んでいく。
もちろん耐電グローブを装備してだ。
「ぐがっ、こいつら電撃が効かない。立て直すぞ。
「今だ。ダイヤモンドカッターだ」
「
秘密結社の魔導士達がダイヤモンドカッターの刃を高速回転させて放った。
刃は土壁にめり込むと回転しながら進む。
焦げ臭い匂いが辺りに充満した。
「ぐわー」
「くそ、俺の手が」
「おい、しっかりしろ」
「駄目だ。傷が深すぎる」
刃が貫通して、ダイヤモンド魔導士達を切り刻んだ。
「
まだ生き残りがいたか。
「耐念動攻撃」
秘密結社の人間が液体を土壁を越して上から掛ける。
液体の正体はなんの事はないあの痒くなる糊だ。
「くそう、卑怯な。かゆくて集中できない」
「
止めのダイヤモンドカッターの刃が放たれた。
「ぐぎゃ」
「やめてくれ。頼む。お願いだ」
「増援を呼べ」
そして、声が聞こえなくなった。
「どうだ。勝てるだろう」
「ええ、驚きました。工夫が大事なのですね。帰ったらこの事件をビラに書かないといけないですね。忙しくなるな」
「原稿が上がったら、持ってこい。複製してやる」
俺は宝石魔導士会の一室で発電機とパソコンとスキャナー付きのプリンターを出した。
これらはビラをコピーする為の道具だ。
「何やってるの」
アニータが俺の作業を覗きに来た。
「複製してるんだ。そうだゲームもあるぞ」
プリントアウトする合間にアニータをゲームで遊ばせる。
「ゲーム面白い。もっとないの」
「あるけど、ゲームは一時間まで」
「ええー、けち」
「けちでも何でも駄目だ」
ゲーム画面を見ると、対戦格闘のプレイヤーが必殺技を食らって倒された所だった。
ダイヤモンド魔導士会に反撃される予感がした。
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