第168話 おっさん、人工宝石を作る
人工宝石を作ろうと思い立った。
まずは下準備。
「
これで酸化アルミニウムが出来た。
「
うんともすんとも言わない。
何が不味いのか。
イメージだな。
化学合成が自由にできても、元素の結びつきには手が出せないという訳か。
衝撃を与えて粉には出来るのだが、結晶化は出来ない。
「
熱す事は出来たが結晶化には至らない。
こういう時は百科事典だ。
宝石の結晶を細かい粉から大きな結晶にするのはベルヌーイ法などが使われるとな。
百科事典にそう書いてあった。
その時使われる温度2000℃以上。
属性魔導でこれを再現しようと思ったら物凄く触媒がいる。
しかも、触媒が持つ威力の限界があるので、その温度に到達するかどうか。
しかし、神は見捨てない。
ベルヌーイという科学者は酸水素炎を使ったらしい。
酸水素炎というのは酸素と水素の気体を燃やすのだ。
俺もそれにならう。
まずは下準備だ。
「
これで酸化アルミニウムが出来た。
そしてそれを粉にして。
「
これで熱くないはずだ。
地面に耐熱煉瓦を敷いてその上に材料を置いて準備完了。
耐熱煉瓦はガラス工房で仕入れた。
結界があるので耐熱煉瓦は要らないが、念のためだ。
よし、サクッと行くぞ。
「
結界の内側は炎で彩られた。
そして、色がついてない宝石が出来上がった。
これに別の元素が混じると色がついてサファイヤやルビーなどになる。
触媒として使うのなら、色とか形とかはどうでも良い。
一塊になっているかが重要だ。
魔法もだけど魔導もイメージが大事なんだな。
「ジャスミン、これを触媒として使ってみてくれ」
「裏庭でさっきこそこそやっていたのはそれね。宝石の原石みたいだけど、ダイヤではないのよね」
「ああ、触媒として使えるはずだ」
「
「どうだ感想は」
「凄いわ。サファイヤとルビーより、ほんの少し性能が良いわね」
やったぞ、後は二酸化チタンを作って、チタニアダイヤを作るぞ。
チタニアダイヤは魔力通販でも買えるけど、作った方が安上がりだ。
チタニアダイヤは問題なく作れたと言っておこう。
だが、チタニアダイヤの硬さがそれほどではなく、触媒として使った場合に威力が少し上がっただけだった。
ちなみに俺が普段使っているチタンは本によれば硬度4ぐらい。
鉄が4.5だから鉄に負ける。
銅、アルミ、ニッケルとかには勝っているし、金属では硬い方だ。
ちなみにチタニアダイヤは硬度6。
5割り増しになったと喜んでおこう。
チタニアダイヤは酸素が混じるから、実際は魔導の威力が2割アップぐらいだろう。
異世界はなんとなく落ち着いているので、俺は地球の事を考えた。
地球で起きている魔力発電所の爆発をどうにかする算段はついたのだが。
その方法は地球に戻った時に属性魔導を使って、魔力発電所の魔力を吸い取るのだ。
それにはこの世界でチタンを買わないといけない。
そろそろ、この世界でチタン探しをしないといけないか。
本によればチタンの鉱石は鉄鉱石に含まれるのが一般的らしい。
砂浜にも含まれるらしいけど、どっちが手っ取り早いかな。
同時進行で行くか。
問題は鉄鉱石だな。
鉱石の値段は安いはずだが、横流しはしてくれないだろう。
サンプルがちょっとほしいだけなんだがな。
そんな情報を集めるとスパイ扱いされそうだ。
戦略物資だものな。
やっぱり砂浜に期待か。
砂浜って事は川砂にも含まれるって事だよな。
色々な砂は商人に持って来てもらえば良い。
名目も考えた。
俺は塩を扱う商人を訪ねた。
「邪魔するよ」
「はい、いらっしゃい」
「今日、来たのは砂が欲しいんだ」
「店をお間違えでは」
「まあ聞いてくれ、ガラス作りをしたくてな、そういったのに適した砂は分かっている。だがそれでは面白くない。変わった砂で変わったガラスを作りたい。なるべく種類を多く集めたいんだ」
この言い訳は耐熱煉瓦を分けてもらったのを思い出して考え付いた。
これなら目を付けられる事もないだろう。
「確かに仕入れで海まで行きますけれど、塩屋が砂というと外聞がはばかられるというか」
「そこを頼むよ」
俺は金貨を握らせた。
「よろしいですとも。各地の砂を集めて参りましょう」
「お礼は弾むよ」
これで砂はなんとかなった。
あー、鉄鉱石はなぁ。
リオンが採掘の改革なんか考えているはずだから、そっちの線からやってみよう。
まあ、追々だな。
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