第155話 おっさん、再試験を終える
昼間は度々、ゴブリンの襲撃がある。
この世界のゴブリンは夜目が利かないらしい。
それとも闇を恐れているのか。
「アニータ、次にゴブリンが出たらやってみるか」
「うん、やる」
しばらく進むとまたゴブリンの群れに当たったようだった。
「絶対に前に出るなよ」
「うん」
馬車から降りるとゴブリンはなんと吹き矢を持っていた。
やばい、毒を塗っている可能性がある。
「
ゴブリンが盛んに吹き矢で攻撃してくるが、風の結界で狙いをそらされた。
「
アニータが撃った火の玉は風の結界に阻まれた。
「風の結界を突破するんだったら、石のつぶてとかが良いはずだ」
「うん、分かった。
地面から石が飛び出して、ゴブリン達を襲う。
ゴブリンは敵わないと思ったのか逃げ出した。
「どうだ。実戦は」
「思っていたより難しい。1匹も仕留められなかった」
「しょげるなよ。勝つ事より生き延びる事のほうが大事だ」
旅は再開され、昼過ぎに目的地についた。
ここからは歩きだ。
「一度しか言わん。オークを仕留めて来い。兵士の手助けは借りるなよ」
見届け役がそう言った。
「
「うん」
俺達が先頭になり後ろに兵士と見届け役が続く。
山歩きはしんどい。
樹の枝が邪魔してくるからだ。
人の後ろなんか歩いていると樹の枝が鞭のように飛んでくる。
地面もでこぼこで足を取られて転びそうになる。
不快指数がうなぎ登りだ。
鉈を用意しておくべきだったか。
だが、700円分の魔力では鉈は買えない。
待てよ。
「
チタン板が変形して鉈になる。
これで枝を掃いながら進めるぞ。
ふと、辺りが静まり返っている事に気づいた。
いるな。
足音を立てないように慎重に歩を進める。
すると突然こん棒で樹が倒され、その向こうにオークが見えた。
この世界のオークはでかいんだな。
「ひっ、ハイオーク。わしは逃げるぞ」
「まあまあ、こんなの訳ないって」
「何を落ち着いている」
「
塩と水と炭でクロロホルムを合成。
属性魔導はなんでもありだな。
化学式なんて無視して物質の合成が出来る。
ハイオークはクロロホルムを吸い込んで倒れた。
「アニータ、止めを刺してみろ」
「うん。
アニータの魔法でハイオークの首がはねられた。
「これって試験合格かな」
「わしは認めん。どうせ、いかさまだろう」
「じゃ、あんた。俺と戦ってみるか」
「わしが水魔導士だと思って舐めおって」
「俺は自称土魔導士なんだけど、どっちが強いのかな」
「ぐぬぬ。試験は終わりだ。帰るぞ」
「助かりました。兵士一同、感謝します。ハイオークと我々が交戦したら全滅だったでしょう」
「礼には及ばないさ。試験だからな」
「今回の事はしっかり報告させてもらいます」
兵士はまともそうだな。
帰路はどうって事はなかった。
ゴブリンはアニータが蹴散らしたし、野営の準備は兵士がしてくれる。
俺はある事実に気がついた。
この世界滅びるんじゃないかな。
滅びるは言い過ぎだが、革命は起きそうだ。
魔導士が資源を食いつぶす未来が見える。
ダイヤモンド魔導士なんかは真っ先に資源枯渇で倒されそう。
炭を触媒に使うと土魔導士ぐらいの実力しか出せないだろう。
水魔導士なんかは無限に触媒が使える。
空気魔導士や土魔導士も同様だ。
これらの魔導士は不遇だが、資源の枯渇により立場が逆転しそうだ。
特に土魔導士が強い。
それと金属魔導士の鉄とかは強いな。
ダイヤモンド魔導士を倒す手段のヒントはそこにある気がする。
とにかくダイヤモンドの触媒で無駄に魔法を撃たせたら勝ちだ。
よし、そこらを念頭に頑張ってみるか。
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